Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

デフレスパイラル脱出?

2006-04-10 16:40:56 | よしなしごと
Noblesse Oblige という言葉があります。平たく言うと、持つものは持たざる
ものに奉仕をする必要がある、ということです。ヨーロッパでは一般的な
道徳観ですが、日本ではまったくといっていいほど根付いていません。
日本は相変わらず『働かざるもの食うべからず』の意識が強く、弱肉強食に
誰も違和感を抱いていません。

トヨタ自動車が先日、2008年までに15%のコスト削減を実現する、と
発表しました。このニュースを聞いて、まだしばらく日本のデフレは続くの
だな、と確信しました。トヨタ自動車としては、日銀の金融緩和政策の
廃止に伴う金利上昇を見込んで、ローン金利上昇によるユーザーの車離れを
危惧し、よりいっそうのコスト削減を実現することで、より安い車を売り出そう、
と考えたのでしょう。

確かに、ローンの金利が上がればそれだけ支払額が増えるのですから、その分
安い車を提供しようというトヨタのやっていることは、理にかなっていると
いえそうですが、実際にはどうでしょう。今後、トヨタのような大企業が
コスト削減を継続することになったら、間違いなく他のメーカーも右ならえを
するはず。トヨタだけコスト削減を成功させたら、他のライバル企業や関連
企業もそれに従わなければ競争になりません。ジャンル違いの大企業だって、
世界のトヨタがコスト削減を継続するとなったら、やはり真似するでしょう。
ということで、コスト削減は引き続きビジネス界の趨勢となります。

そうすると、今以上に消費者の財布が苦しくなります、当然ですが。大企業が
コスト削減を発表すれば苦しむのはその下請けで、その下請けの下請け、さらに
下の下請けと、日本中の企業がそのあおりをくらって苦しくなります。その
ために、日本中のサラリーマンの給料はさらに削られていくことになります。
結果として、売り上げを伸ばそうというトヨタの意図とは逆に、金利は上がるは
給料は減るわで、ユーザーの車離れが加速する可能性があるのではないでしょうか。
今はただでさえ、車不要論が叫ばれるようになってきているのに。

以前、ホワイトバンドという活動がありました。貧困の解決が、世界を救う、
というような趣旨の活動だったと思います。当時の私はその考えに否定的
でしたけど、今は違う意味で確かに一理ある、と考えるようになりました。
やはり、お金は天下の回りもので、うまく使えば自分のところに回ってくる
のだな、ということが、昨今のデフレスパイラルでわかったのです。

トップにいる大企業が「コスト削減はやめます」と宣言して実行すれば、
その下請けの人たちは無理なコスト削減をする必要がなくなり、社員の
給料は増え、消費意欲もかき立てられ、物が売れるようになるはずです。
もちろん、無駄遣いばかりすればいい、というものではありませんが、
極端なコスト削減は結局自分を苦しめることになることに、大企業の
お偉いさんたちは気が付いてほしいです。

それどころか、このまま行ったら中国や韓国などのように、貧困問題が
発生して、暴力事件や破壊活動まで発生しかねません。フランスでの
先日の事件は、もはや対岸の火事ではありません。いくら求人倍率が上がって
いようと、日経平均株価が上がろうと、生活できないレベルの給料しか
もらえないのでは、意味がありません。

金勘定しかできない、奉仕の精神を忘れた守銭奴が企業のトップに就くと、
こういうことになる、という事実を、私たちは今見ています。みんなで
豊かになろう、という気持ちがあってこそ、企業は健全な発展をとげる
のではないのか。世界中の大企業が、早く Noblesse Oblige の精神を
身に付けることを祈ります。