Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

オーダーメイド - ギター史を交えて5

2008-05-27 11:37:40 | 音楽・楽器
しかし作業は、なかなかうまい具合には進まなかった。まず、スワンプアッシュの
良い材料がなかなか入ってこなかったのだ。アッシュやアルダーなどの、いわゆる
フェンダー系ギターに使用される木材というのは、天然資源保護の目的で、欧米
諸国で計画栽培が行われているため、マホガニーなどと比較するとどちらかと
いえば安定供給が可能だそうなのだが、しかし良い素材も安定供給可能かと
いうと、そうではないらしい。最近は体力不足のプレイヤーが増えたために、
やたらと軽いスワンプアッシュばかりが珍重されすぎている。本来、スワンプ
アッシュというのはアルダーくらいの重量があってそれなりに重いはずなのだが、
いまやバスウッドより軽いようなものに人気が集中し、しっかりとした重量の
あるものは素材としてのランクが下げられている。そのため、せっかくの良材
であっても、加工時の貼りあわせがいい加減になっているものが多く、素材として
使えないものが多いのだそうだ。結局、作り手のかたが納得のいく素材が入荷
したのは、実にオーダー開始から半年後のことだった。

cx


さらに、作り手の方がおすすめの VooDoo が入荷しなかった。どうも VooDoo の
本社としては、もう海外向けの製作をほぼやめてしまったようなのだ。決して
いい加減なメーカーではないようなのだが、生真面目すぎるがゆえに、大量生産を
すると品質が保てない、ということでの決断だったと推察される。あるいは、単に
もう歳なので体力的にきつくなっただけなのかもしれないが(笑)。とにかく、
ピックアップについては変更を余儀なくされてしまった。メールであれこれ相談
しながら、作り手の方が以前に P-90 を試して好印象を持ったという、Vintage
Vibe Guitars というメーカーのピックアップにすることにした。しかし VooDoo に
しろ、Vintage Vibe Guitars にしろ、今回のオーダー以前はほとんど知らない
メーカーだっただけに、やはりスペックオタクになるのは危険なことだ、と
思い知った。

cx


さて、オーダーをしてから7か月目、ついに荒加工状態のネックが届いた。
シェイプの確認をするためだ。厚みのあるUシェイプということでお願い
していたので、角材そのもののようなゴツいネックがくるのかと覚悟していた
のだが、実に握りやすくて、手にすっとフィットするものになっていた。
軽く指で叩いてみると、いかにも目の詰まったような「キンキン!」
という硬質で鋭い音がする。「エレキギターの音の7~8割りはネックで
決まる」と、そのかたはコミュで再三書いていたが、確かにこんな音のする
ネックは初めて握った。これなら、期待できそうだと思い、興奮しながら
そのネックを返送したのだった。

cx


もうあとは完成の報告を待つばかりか、と思っていたら、今度は金属パーツが
入ってこない・・・・・。昨今の金属需要高騰のあおりを受けて、スイッチ
などの金属パーツがなかなか入荷してこなかったのだ。他にも、ピックガードの
素材やスイッチのハット、etc。あぁ、ギターのオーダーというのは、かくも
忍耐力が試されることなのだな、と思い知ったことだよ。