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2010年新司法試験刑事系第1問再現答案

2010-08-31 23:30:34 | 平成22年新司法試験再現答案
第1 甲の罪責(以下、刑法は条文数のみで表記する)
1. 殺人罪(199条)の実行行為
(1) 甲が、D薬の投与によりショック状態となったVを放置し、死に至らしめた行為につき、殺人罪(199条)が成立するか。不作為による殺人罪の実行行為性が問題となる。
(2) この点、実行行為とは、法益侵害の現実的危険性を有する行為であり、かかる危険性は不作為によっても実現可能である。
 そこで、①作為義務、②作為可能性を考慮して、作為による実行行為と同視できる場合には、不作為による実行行為にあたるものと解する。
(3) 本件についてみるに、①甲はVの親族であり、かつ②看護師詰所に行きナースに救命措置を求めることにより、救命のための行動をとることは容易であった。
 したがって、救命のための行動をとることなく、D薬の投与によりショック状態となったVを放置する行為は、人を死に至らしめるほどの現実的危険性を有する行為といえるため、殺人罪の実行行為にあたる。
2. 因果関係
(1) 次に、Vの死の結果が、甲の不作為により発生したか、因果関係の有無が問題となる。
(2) この点、求められる作為を行っていれば結果が発生しないことが合理的な疑いを差し挟まない程度に確実である場合には、不作為と結果との間の因果関係が認められるものと解する。
(3) 本件では、Vがショック状態に至った午後1時50分の時点で、医師やナースの救命措置を求めていれば100%救命が可能であったといえるから、Vの不作為と結果との因果関係が認められる。
3. 殺意
 甲は、以前Vが薬に対するアレルギーでショック状態に陥り、救命措置が遅れれば死の危険性があったことを知っており、放置すると手遅れになることを認識していた。
そして、このまま死んだほうがVにとっても幸せでないかと思い、Vの生死を、医師らの手ではなく、運命に委ねることに決め放置したのであるから、甲には殺意が認められる。
4.  以上のことから、甲には殺人罪(199条)が成立する。
第2 乙の罪責
1. Vに対する投薬行為の業務上過失致死罪(211条1項)の成否
(1) 過失行為
ア. Vに対してD薬を投薬した乙の行為が、「業務上必要な注意を怠」ったといえるか。過失の意義問題となる。
イ.  この点、過失とは、①結果の発生が予見可能であり、②結果回避が可能であったにもかかわらず、③結果を回避する義務を懈怠したことを意味する。
(ア)  これを本件についてみるに、乙はナースであり、VがD薬に対するアレルギー体質であることを入院当初に確認しており、D薬が投与されればVがショック状態に至ることを当然に予見しえた。
(イ)  次に、D薬のアンプルに貼付されたラベルには薬名が明記されおり、それを確認することで、誤ってVにD薬が投薬されることを防ぐことが可能であった。
(ウ)  そして、ナースである乙は、投薬の際、アンプルのラベルを確認し、Vに対しD薬が投与されないようにする義務があったにもかかわらず、それを懈怠し、Vに対しD薬を投与している。
ウ.  以上のことにより、ナースである乙には、「業務上必要な注 意を怠」ったという過失行為が認められる。
(2) 因果関係
 では、乙の過失行為に「よって」Vを死亡させたものといえるか。過失行為と結果との間の因果関係が問題となる。
ア.  この点、因果関係は、実行行為の有する法益侵害の現実的危険性の結果への実現過程に他ならないため、因果関係の有無は、実行行為の有する危険性が結果へと現実化したか否かで決するべきである。
イ.  確かに、本件のVの直接の死因はD薬を投与されたことに基づく急性アレルギー反応による呼吸困難を伴うショック死であるから、乙の投与行為という過失行為がVの死の直接の原因であるようにも思える。
ウ.  しかし、Vは、遅くとも午後2時20分までに、医師やナースがVの異変に気付き、救命措置を行えば100%救命が可能であり、乙は30分置きに巡回をすることをBから命じられていたため、午後2時の見回りによりVの異変を発見し救命措置を行うことが可能であった。
 にもかかわらず、Vを救命できなかったのは、甲の上記のような故意行為により、乙の発見が妨げられたからである。
 そうであるとするならば、Vの死の結果の直接の原因は、甲の故意行為によるものといけるから、乙の過失行為にそのような第三者の故意行為を介在させる危険性が認められない以上、過失行為の危険性が現実化したものとはいえない。
(3) 以上により、乙の過失行為とVの死の結果との間の因果関係は認められず、D薬の投薬によりVのショック状態に陥らせ人の生理的機能に障害させたとして、業務上過失致傷罪(211条1項)が成立するにとどまる。
2. 見落とし行為の業務上過失致死罪(211条1項)の成否
(1) 過失行為
 乙には、Bの指示に従い30分ごとにVの病室を見回り、ショック状態に至ったVを発見したならば、救命措置を行う注意義務があったにもかかわらず、それを怠ったという過失行為が認められる。
(2) 因果関係
 乙のVのショック症状の見落としと死との間の因果関係が認められるか。
確かに、午後2時20分より後にVの異変に気づいた場合には、Vの救命の可能性は100%とはいえず、因果関係が否定されるようにも思える。
 しかし、乙がBの指示通りに午後2時の見回りを行っていれば、Vは100%救命可能であったため、乙の見落としと死との間の因果関係は肯定される。
(3) 以上により、ナースである乙は、Vのショック状態の見落としという「業務上必要な注意を怠」ったという過失行為に「より」Vを死亡させたものといえるから、業務上過失致死罪が成立する。
(4) なお、上記の投薬行為による業務上過失致傷罪は、この業務上過失致死罪に吸収される。
第3 丙の罪責
1.  薬剤師である丙が、乙にD薬を提供した行為について、Vに対する業務上致死罪が成立するか。
2.  丙は、D薬に対してアレルギー体質のあるVに対してD薬が投与されることのないよう、アンプルに貼付されたラベルを確認した上で、乙に薬を提供する義務があったにもかかわらず、それを怠ったという過失行為がある。
3.  しかし、上記のように、Vの死の結果は甲の故意行為が直接の原因となっているため、丙の過失行為に第三者の故意行為を介在させる危険性がない以上、過失行為とVの死の結果との間の因果関係は認められない。
4.  よって、丙は、D薬の提供により、Vの生理的機能に障害生じさせたという業務上過失致傷罪(211条1項)の範囲で罪責を負う。
 以上



【言い訳】

殺意の認定、過失犯、因果関係は予め用意してあった論点であったため、構成の段階であわてるようなことはありませんでした。しかし、刑訴が終わって刑法に帰ってきたときに残り時間は一時間をきっており、大慌てで答案を書く羽目に。できるだけコンパクトに最後まで書ききることを目標に書き始めましたが、やはり本番で実力以上のパフォーマンスはできませんね。ボロボロでした。

まず、殺意のところは、時間軸なんて関係なしで、ひたすら書き写し。そして評価もせずにあっさり殺意を認定しました。典型的なダメ答案ですね。殺意の認定は実務家の先生とのゼミで何度も練習したのにこの様で、情けないです。

次に因果関係。因果関係は、直前に山口で勉強した部分(ただし青本…。)だったので、本当に理解しているか謎なのにもかかわらず、危険の現実化で書いてしまいました。しかも因果関係を否定。危険の現実化でもほんとに因果関係切れるんですかね?
準備段階で使ったこともない武器を実戦でいきなり使用するなんて、司法試験以外の「戦い」でもご法度ですよ。ヤマがあたるとかえって危ないという話はよく聞いていましたが、本当に色気が出てしまうもんですね。痛感しました。
不作為犯の場合に、因果関係を十中八九で判断するのか、危険の現実化で判断するのかも良く分からなかったです…。

あと、本問では過失を厚く書く必要は無かったような気も。過失の共同正犯は迷いましたが、成立させなくても罪名(結論)だけは納得できたので、スルーしました。


ちなみに、刑法でやらかした事実誤認は、甲を「夫」と勘違いしたことです。アッー!

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