ユン・チアンの『ワイルド・スワン』(土屋京子訳 講談社 1993) を読み終えた。
昨日から読み始めて、勉強はおろか寝食をも忘れて読み耽った。
運命、というより、毛沢東の意向に弄ばれる民衆の悲劇が、
ノンフィクションらしく抑制の効いた文体で次々と描き出され、つい先が気になって読む手を止められなかった。
文化大革命で、嫉妬や憎しみといった人間の負の部分をむき出しにするよう煽り立てられた人民が、
長い歴史の有る文化を自らの手で破壊し尽してしまったことに対する怒りと、
広大な国土のあちこちで展開する話にあわせて描かれる中国の豊かな自然へのまなざしから、
著者が祖国を深く愛しているのが感じられた。
中国では発禁処分になっているそうだけれど、確かにこの内容は都合が悪いだろう。
出版された30年前と今の中国は、また事情が違うのか。中国への興味がまた一段と深まった。
一日横になって読んでいたら、背中が熱くなった。
薬を飲んで寝よう。