フレンチ・アメリカン日和

アメリカ在住、フランス人の夫を持つ日本人(女・30代)です。日々のことを綴っていきたいと思います。

旅もそろそろ終盤です

2005-10-25 17:18:27 | フランス便り
うちのフランス人の実家のあるフランス南西部の村を日曜日に発ち、パリに二泊しながらアメリカへの帰路に着いています。出発日は、いつも少し哀しい。村に滞在している間、ほとんど毎日顔を合わせ、頻繁に招いたり招かれたりしていた近所の人々に、「さようなら、また来年ね」と挨拶しに行かなければならないからです。特に家族のように本当に親しくしているお向かいの家のご夫婦は、旦那様が今年82歳、奥様もあと少しで80歳に手が届く年齢です。「また来年ね」と言う時、「体にはくれぐれも気をつけて。無理をしないで、とにかく健康が第一だよ」と言う時のうちのフランス人は、いつも少し目を赤くしています。両親が年を取ってから生まれた末っ子で、もう既に両方の親を亡くしているうちのフランス人にとっては、今では彼らが親のようなものかもしれません。来年、また笑って会いましょうね。美味しいレストランに一緒に食べに行きましょうね。私の手料理を食べてくださいね。心からそう願わずにはいられません。

後ろ髪をひかれながら到着した日曜日のパリは快晴、気温は17度。とても気持ちのいい日で、ホテルにチェック・インして部屋に荷物を置くや否や、うちのフランス人と連れ立ってあてもなく散歩に出かけました。今回宿泊したホテルは、大好きなレストラン、ピエ・ド・コッションの所在地でもあるLes Hallesにあります。大きな教会や綺麗な公園がすぐ近くにあるので、その近辺をぶらぶら。夜は無論そのピエ・ド・コッションでうちのフランス人の大学時代の友人、ベルナールと食事の約束があるので、楽しみにしながらも「ちょっと小腹が空いたね」と言い合ったのが夕方の4時。夕食は8時過ぎからですから、軽く何か食べておこうということになり、近所で評判がいいというビストロへ入りました。
カラフ(500CCの水差し)入りの赤ワインと、うちのフランス人はムール貝のガーリック・バター焼き、私はエスカルゴのキャセロール焼きを注文。両方とも前菜なので、おつまみにちょうどいい分量です。私のエスカルゴは、パセリ・バターではなく、ビーフシチューのようなドミグラス・ソースがかかって、ベーコンと炒め合わせて出てきたのでびっくり。お味の方は、ソースの濃厚さにエスカルゴの淡白さが負けてしまって少し残念でしたが、パンと赤ワインとの相性は抜群。うちのフランス人のムール貝は、殻ごと柔らかくオーブンで焼いてあって、申し分なし。ビストロを出て、さらに1時間くらい散歩をして6時過ぎに一度ホテルへ戻りました。

ハイライトはやはりピエ・ド・コッションでの夕食。ベルナールとは1年ぶりの再会で話に花が咲きつつ、食事のとにかく美味しいこと。前菜にうちのフランス人は、牛の骨髄のオーブン焼き、私とベルナールは名物のオニオン・グラタン・スープ。牛の骨髄というのは、大きな牛の骨を半分に切ってオーブンでパセリをかけて焼いたもので、中身をスプーンですくって食べる料理です。かなり濃厚なので、私はそれほど好きではありませんが、うちのフランス人は骨髄に目がありません。狂牛病の心配も何のその、ほとんど1年前からこの骨髄を食べるのを楽しみにしていた彼です。味は、ミルクのような感じで、ほんのり甘味があり、柔らかいゼリーのようにふるふるした食感。大きな骨が大皿に載って3本も来るので、たっぷりと堪能していました。そして待望のメインは、ベルナールとうちのフランス人がやはりここの名物の豚足のオーブン焼き、私が子牛の腎臓のマスタード・ソース。子牛の腎臓というのは、実は私の好物なんです。腎臓というとぎょっとされる方もいらっしゃるかもしれませんが、新鮮なものは癖がなく、少し歯ごたえがあり、レバーが食べられる人ならきっと好きな味だと思います。ピエ・ド・コッションでは、柔らかく茹でたジャガイモと大量のマッシュルームと一緒にたっぷりのソースで和えた、火を通しすぎないほんのりピンクの腎臓が出てきて、大感激。最後まで名物の豚足料理にするか、たまには別のものを試すかで迷っていた私ですが、違うものにしてよかった!ベルナールやうちのフランス人に味見をさせたりして、あっという間に食べてしまいました。勿論、彼らにも豚足を分けてもらって。。。

過去に私自身も旅行や出張で何度か訪れているパリでは、うちのフランス人がパリ生まれ、パリ育ちということもあって、今更二人で連れ立って観光や買い物をすることはありませんが、やはりお気に入りのレストランや友人に会うために年に一度は立ち寄りたいところ。来て見ると2泊では物足りない気もしますが、やはりフランス滞在のメインはあくまでも例の村というのが、我々らしくていいプランなのではないかと思っています。

村での生活

2005-10-19 16:17:18 | フランス便り
きゃー、失礼しました!すっかり更新が間遠になってしまった。うちのフランス人の実家のある村に再び帰って来て、腰を落ち着けたあたりから仕事が立て込んできたせいもあるんですが、それに加えて、こちらではご近所の家に昼食に呼ばれると、昼の12時半始まりで終わりが夕方の5時。「食後のコーヒーを飲みにいらっしゃい!」と誘われて、昼食後の1時半頃に出かけても、終わりはやはり夕方の5時。「夕食前の食前酒を一緒にどうぞ!」と呼ばれて6時半にお邪魔すると終わりは10時、という有様で、い、い、い、忙しいんですよ!!!(と顰蹙を買いそうな発言)。でも真面目に仕事や家事も含め、色々とおつきあい以外にすることもありますから、こんなペースでは就寝は連日夜中の1時、2時を回ってしまいます。それでも翌朝は日本が7時間の時差で既に夕方なので、少なくとも日本の午後3時くらいからはメールで連絡を取れる体制になっていなければならないし。。。寝不足気味でふらふらしています。

昨日は、お隣の家で、旦那様が狩ってきた「Becasse」という野鳥をご馳走になりに、昼食に招かれました。スタートはやはり12時半。メニューは以下の通りです。
1つめの前菜:旦那様が皮で釣ってきて自家製で燻製にした自家製スモーク・サーモン、スペイン風ヒイカ(小さなイカです)のインク煮込み、自家製サラミ、ハムのペーストを詰めたビスケットの大量の盛り合わせ。
2つめの前菜:自家製フォアグラとプルーンのバター詰めの大量の盛り合わせ。
第一の主菜:旦那様が釣ってきたブラック・バスのオーブン焼き、溶かしバターとエシャロットのソース。
第二の主菜:ベッカスのロースト、アルマニャック風味。
デザート:フォーレ・ノワール(「黒い森」という名前の、ブラックチェリーの洋酒漬けと生クリームをたっぷり挟んだチョコレート・ケーキ)。

とまあ、これだけのものがお腹に収まるには、やはり4時間以上はかかる、という具合で、終わったらやはり5時でした。しかもレストランならともかく、田舎の家のことですから、残しては失礼にあたってしまいます。ましてや外国人の私は、残したりしたら「口に合わないのね、どうしましょう、何か別のものを用意しようかしら、何がいい?」なんてことになりかねませんので、それはものすごいプレッシャーです(と言いながら、嬉々として食べる)。

でも今日招かれた家は、村の自給自足を絵に描いたような家庭で、鶏を飼い、鴨や豚を育て、野菜畑を作り、引退した旦那様は連日狩りや釣りに出かけるという具合で、その食材の豊かなこと、新鮮なことと言ったら!!そして肝心のお味の方ですが。。。この続きは明日Upしますね。

熱海からです!

2005-10-09 03:45:51 | フランス便り
と、1年ぶりの冗談ですね。モナコからです。こちらには、とても親しく年齢も近い親戚がいるので、フランスに来ると必ず寄ることにしています。モナコの本日の気温は、日中が19度。青い空、青い地中海の組み合わせがとても綺麗です。

もっとも今泊まっている親戚の家には、1歳になる赤ちゃんがいるので、観光や散歩などそっちのけで、飽きもせずに赤ちゃんを眺めたり一緒に遊んだり。公園にも行きました。モナコで公園デビュー(?!)、なんちゃって。それにしてもこちらはまだまだ子供の育て方がおおらかですね。地面を舐めようが一度落としたお菓子をもう一度口に入れようが、どのお母さんもゆったり構えていて、「きゃー!!」などと言いながら取り上げたりしません。お腹がすいてぐずぐず言うと、昼食用にパン屋で買ったフランスパンをぼきっと折って、歯が生えていなくてもお構いなしにしゃぶらせる。そして、抱き癖がつくとか、そんなことは全く気にする様子もなく、好きなだけ抱っこしてキスして。。。ぎゃあぎゃあ泣き出せば、容赦なく抱えあげてお尻をぱんぱん。散々泣かせて、疲れていい子になったらまた抱っこしてキスして。。。誰も育児書に書いてあるしつけのことなんて気にしている様子もありませんが、とても自然でいい感じです。最近は日本にあまり長くいないのでよくわからないですが、日本もこんな育て方をするお母さんが主流だといいな、なんて。赤ちゃん、どこの国でも可愛くて、お母さんと一緒にいられさえすれば幸せそうで、本当にいいものですね。それにしても、うちのフランス人、半分本気で赤ちゃんと哺乳瓶やおもちゃを取りっこして、取られた途端に誰よりも大声で泣いてみせたりして、周囲の赤ちゃんはひいていた。でも普通にしていても何となく赤ちゃんが彼の周りに集まってきて、いつの間にかよその子まで一緒になって追いかけっこしたりしているんですよ。遊んであげているというふうでもなく、逆に遊んでもらっているような感じがあるんです。不思議な才能だなぁ。もしかして、仕事の選択を間違ったんじゃない???

4日目です!

2005-10-04 06:22:58 | フランス便り
今日は午前中の気温が5度、日中の最低気温が14度という、冬の気配の色濃い一日でした。一年に1-2回しか訪れないために普段はほとんど空き家になっているうちのフランス人の実家では、ヒーターが壊れていて、今朝になって修理を依頼したような次第。従って午前中はセーターを着込み、コートまで羽織って家の中を歩き回るような状態でした。でも午後になってだいぶ日が射してきたので、陰鬱な感じはありません。

体調はまずまずといったところで外をそろそろと歩いていたら、次々と村の近所の人たちに(この村やうちのフランス人の家のことについては、昨年の「フランス便り」を是非ご参照ください!)「zonaの具合はどうだ?」と声をかけられました。フランス語で帯状疱疹のことをzonaというらしいのですが、うちのフランス人が昨日お隣さんにしゃべったら、翌日は村人全員が知っていた、というのはこの辺ではよくあるパターン。ちなみにこの辺で伝わる帯状疱疹の民間療法は、何と、「既に帯状疱疹をやったことがある人におんぶしてもらって、食卓の周りを10回回ること」だそう!!思わずうちのフランス人とお腹を抱えて笑ったら、「本当に効くんだぞう!!」とのこと。「もう治りかけだからいいですよ」と言うと、お隣のおばさまは「見せなさい」と言う。仕方がないのでセーターをめくって背中の腰のあたりを見せると、「あら、本当ね。もうかさぶたになっているからこれなら大丈夫そうね」とちょっと残念そう。そんな、残念がっていただかなくても。もっとも親身になって頂けるのでありがたいことですが。

午後から車で40分近く行ったところに(というか行かないとない)Carrefourで日用品や食材の買い物を少し。1キロ5ユーロ弱の活きたカニを売っていたので、今夜はそれをうちのフランス人が茹でてくれて夕食。まだ食欲が今いち戻りませんが、何とか快復はしてきているようです。疲れたので早く寝ようと思いますが、だらだらと暖炉の前で食後酒を飲んだりして、遅くなりがちなフランスの夜。今、夜の11時20分過ぎですが、お気に入りの本もあるし、もう少し起きていようかと思います。

今年もフランスからです!!

2005-10-03 00:54:00 | フランス便り
29日からフランスに来ています!しばらく前から決まっていたことですが、びっくりさせたかったので、このblog上では黙っていました。1年前のちょうど今頃もフランスに来ていました。よろしければカテゴリー分けしてある過去logの「フランス便り」を覗いて下さいませ。早いものであれから一年。。。

それにしても、今回は遅れてはならないフライトが全て遅れ、遅れてもよいフライトが全て定刻に出たという不運な巡り合わせが続き、2回で済む筈のトランジットが3回になり、結局全行程で48時間近くもかかってしまったという悪夢のような旅でした。おかげで帯状疱疹でそれでなくても病み上がり(というかまだ快復途上ですね)の身は、悲鳴を上げたのか、金曜日にフランス南西部のうちのフランス人の実家に到着するなり、いきなり熱を出して寝込む有様。熱は一晩寝たら下がりましたが、土曜日は丸一日寝たり起きたりし、ようやく今日の日曜日になってそろそろと家の中を片付けたり簡単な食事を料理をしたりしています。明日からはまた日本やアメリカと連絡を取りながら仕事を開始しますが、こちらは空気もいいし、両方と時差があるので電話がじゃんじゃんかかってきたり、ミーティングに出席したりしないだけでも、かなり楽な筈。今回は約4週間の予定でこちらに滞在しますので、せいぜい養生させていただきます。

こちらのお天気は、思ったほど寒くはなく、日によっては日中20度近くまで上がります。でもやはりヨーロッパですから、朝8時頃は霧が深く、まだ薄暗いですね。朝晩はかなり冷え込んで、朝起きると庭は夜露でしっとりしています。冬がもうそこまで来ている感じ。今日はちょっとした寒気が流れてきているとのことで、現在、うちのフランス人は、暖炉にくべる薪を探しに庭に出ています。こちらでは狩猟の季節が始まっているので、時々猟銃の音が遠くから聞こえてきます。今の時期は、我が家の近くでは山鳩、鶉などが取れるそう。たまに猪なども出るそうです。日本でも「秋の味覚」などと言いますが、こちらでもジビエという野生動物や、セップ、モリーユなどのキノコが美味しい季節ですので、食材の買い物に出かけるのもとても楽しいものです。

それではこちらでの生活をまた少しずつアップしていきますので、是非時々覗いてくださいね!

最終日、パリにて

2004-10-18 12:04:46 | フランス便り
南仏経由で帰途につき始めるや否や、悪天候に見舞われ始めました。フランスを離れるのが嫌で鬱に入りつつあるうちのフランス人が、レンタカーを運転しながら「見てご覧。我々が帰りつつあるのを知って、フランスが泣いているよ。おおフランスよ、我々も悲しいのだよ」などと言っていたら、プロバンス近辺に差し掛かるあたりで、それこそ叩きつけるような滝のごとくの大雨となり、数メートル先も見えないような視界の悪さに大音響の雷まで加わって、さすがのうちのフランス人も、「いっやー、ここまで泣かれるとちょっと怖いなー、みたいな。別にさ、適当に遊んで満足したからもうこれで永遠に帰って来ないとか、そういうわけじゃないんだし」などと、気弱につぶやきながらへっぴり腰で運転していました。思わず「それって、まるで女を捨てる時の男の言い訳みたいじゃない?」と突っ込んだら、「えっ?!」とかなりぎょっとしたような顔になったうちのフランス人。猫なで声で、「モグラちゃーん、人が真剣に運転している時に、そういう訳のわからないことを言うんじゃないよ。ちゃんと後で遊んであげるから、ねッ?ねッ?」などとおかしことを言いまくり、訳のわからないのはアンタだっちゅーの。全くハイなんだかローなんだか。フランスを離れるということで混乱している、というのは確かなようです。

南仏でレンタカーを捨てて乗車したTGVも、悪天候によるものか電力障害で30分以上も遅れ、2週間以上ぶりで戻ったパリも雨模様。気温は12-3度といったところで、人々はすっかり冬支度で灰色の空の下、濡れた石畳の上を足早に歩いていました。パリで一泊して翌日午後の飛行機で北カリフォルニア行きのフライトに乗る、というスケジュールだったため、パリでの夕食は、最後の晩餐!というわけで、我々の大のお気に入りのレストラン、「ピエ・ド・コッション(Au Pied de Cochon)」へ繰り出すことに!このレストランは、ご存知の方も多いと思いますが、豚足のオーブン焼きが名物のとても気さくなレストランです。うちのフランス人は、ここの豚足料理が大好き!特に添えられてくるべアルネーズ・ソースの美味しさときたら、香りが高くてリッチでクリーミーで、それは忘れられないほどです。それに、ここはシーフードの美味しさにも定評があるお店。ということで、うちのフランス人は、前菜には生牡蠣を一ダース、メインにはこの豚足のオーブン焼き、という組み合わせを数日前から夢に見ていた、という次第。予約を午後8時に入れたのですが、結局お腹も空いて7時半前にはレストランに入ってしまいました。

食前酒は事前にパリの街を歩きながら目に付いたカフェで済ませていたため(既に出来上がっていた、とも言う)、レストランに到着するなり辛口のロゼワインを一本頼み、うちのフランス人は生牡蠣を、私はオニオン・グラタン・スープを注文。フランス人は、ここでも4種類の牡蠣を3個づつ食べられる「プラ・ド・デギュスタシオン(試食の一皿)」を選び、涙を流さんばかりに感激して食べていました。私のオニオン・グラタン・スープはとても上品な美味しさで、感心。フランスのオニオン・グラタン・スープというのは、ガムのようにやたら伸びるチーズがたくさん載っていてとてもヘビーなものになりがちですが、ここのチーズは多すぎない量で、外側はかりっと中はとろりという感じで焼いてあり、よく茶色になるまで炒めたたまねぎの旨みに、ナツメグを中心としたスパイスの効いたスープも、あっさりしているのに何とも深みのある複雑なお味。特に玉ねぎからにじみ出たカラメルのような風味がとても印象的で、茶色に炒めた玉ねぎをフランス語で「オニオン・キャラメリゼー」と呼ぶのもなるほどなーと改めて思ったことでした。

それからお待ちかね、メインの豚足のパン粉焼き!ここの豚足は、多分焼く前に蒸してあるのだと思うのですが、こんがり焼けたパン粉の下に、とろりと柔らかくて、余計な油が落ちたゼラチン質の肉が隠れています。大皿一杯に豚の足がどーんと一本載ってくるので、最初はその大きさに圧倒されますが、大小あわせて無数の(レストランのテーブルに置かれたコースターには、可愛い豚のイラストと共に、32個と書かれていました)骨があるので、食べ始めると殺人的な量、という感じではありません。もっとも軽いお料理ではないので、私は少し残してしまうのですが、うちのフランス人など、本当にぺろっと食べてしまう。そして、ここのシェフのお得意、ベアルネーズ・ソースときたら!!このソースは、卵黄に、エストラゴンやセージなどの香りを移したバターの上澄み液を少しづつ注いでマヨネーズ状にしたもので、きっとそのカロリーたるやすごいものだと思いますが、年に一度くらいしか食べられないし、フランスでの最後の夜だし、カロリーとか体重とかダイエットとか、そういう野暮なことは言いッこなし!!添えられたフリット(フレンチ・フライ)も、切ったじゃがいもをラードでじっくり揚げてあるので、しっとりこんがり、日本やアメリカのフレンチ・フライとは似ても似つかない香ばしさと美味しさで、もう止まらない。そして、この豚足というのは、やはりコラーゲンの塊だからか、翌日は心なしかお肌もしっとりつやつやで、グルメのみならず美容に関心のある女性の皆様には、超お勧めのお料理です!!お値段も、ふかひれやすっぽんなどと比べたらお手ごろで、一皿18ユーロでした。ちなみに、このレストランは、ウェイターやウェイトレスなどのスタッフもとても気さくで感じがよい。フランスでは、どんなに素敵なレストランやカフェでも、不機嫌なウェイターにあたることも珍しくなく、そうなると気分も台無しですが、ここは「美味しいものを食べにきた人たちの喜び」と、「美味しいものを出す人たちの喜び」がきちんとハーモニーを奏でている、本当に気持ちのよい空間。お手洗いに行く途中、一抱え以上もありそうな大皿に、オマールエビ、カニ、牡蠣、ムール貝などの載ったとても豪勢な冷製シーフードの前菜を運ぶウェイターさんと狭い階段ですれ違ったので、思わず「うわー、美味しそう!!」と言ったら、ウェイターさん、「お料理?それとも僕?」ですって!!よく見ると、とてもハンサムでチャーミングな若者ではないですか!「勿論両方よ!!」と言いましたが、これで私が独身だったら、「勿論アナタよ!」と言って、そこから何か始まる。。。訳はありませんね。失礼致しました。

というわけで、かれこれ3週間強のフランス滞在も終わり、飛行機の長旅も終えてカリフォルニアに無事に帰ってきました。寂しいけれど、こちらに帰ってきて、ほっとしているのも確か。どんなにフランスが好きで、滞在が楽しくても、やはりあくまでも「我が家」はこちらだからなんでしょうね。でも、うちのフランス人と一緒に、いつかフランスに住む日も来るかもしれない。それはそれで大歓迎だと思っています。

フランス旅行記は旅程や仕事の関係で途切れがちでしたが、皆様おつきあいありがとうございました。明日からまた日常生活のことに戻りますので、どうぞ時々また覗いてくださいね!それではよい一週間を!!

フランス滞在もそろそろ終盤です

2004-10-14 15:20:51 | フランス便り
早いもので、丸9日間あった筈の村での滞在も今日で最終日を迎えました。パリから北カリフォルニアへ帰るフライトを数日後に控えているため、南仏経由でゆっくりと帰途につきます。親戚で赤ちゃんが先週生まれたばかりというカップルが南仏にいるので、赤ちゃんの顔を見てお祝いを言いがてらそちらに寄ります。

この村には既にうちのフランス人と何度か訪れており、数週間単位でも滞在しているのですが、帰る日が近づく度に、ホームシックのようなとても寂しく憂鬱な気分に襲われます。うちのフランス人と出会うまでは、こんなフランスの片田舎とは、縁もゆかりもありませんでしたし、私の出身地も東京近郊でこそありませんが、それなりに都会の部類に入る場所ですので、この村にまるで自分の故郷のような愛着を持ってしまうなんて、とても不思議な感じです。田舎での生活というのは、ちょっと考える分には何だか理想郷のような印象を持たれる方も多いのではないかと思いますが、現実にはこれほど向き不向きのあるものはない、と私は個人的に思っています。周囲は恐ろしく静かで、来る日も来る日も聞こえるのは、木々のざわめきと、鳥や羊、牛などの様々な動物の鳴き声、そして教会の鐘の音。窓から見えるのは、遠方に連なる山々と、秋の深まりと共に紅葉していく木々。少々車で遠出をしても劇場も映画館も美術館もありませんし、最新のブランド品のおいてあるデパートで買い物ができるわけでもありません。無論コンビ二などはありませんし、スーパーの規模も品揃えも限られていますので、何かちょっとしたものが仕事や家事をする上で必要になった時に、なかなか手に入れることができない不便さやもどかしさ。そして、虫の問題や、苦手な人にはわずらわしさしか感じられないであろう親密なご近所づきあいなどもあります。さらにここは外国ですから、無論言葉の問題もあります。ですから、このような外国の片田舎での休暇や中長期滞在を、やみくもに皆様にお勧めしたりはしません。オシャレなリゾート滞在や、大都市での美術館やレストラン巡り、ショッピング三昧が合っているという方は、それで大いに結構!!ただ私自身には、この村の生活が今のところとても合っているようだ、というだけのことです。実はこれには、私をよく知る両親や友人達も少々驚いています。どうやら私は、そういった田舎生活の対極にあるようなタイプだと思われているようなのです。実際、もっと以前の私だったら、こういった田舎の生活にどう反応していたか。今と同じような感覚は、あるいは持てなかったかもしれません。仕事や様々な人間関係の変遷、そしてそれに伴う価値観や人生観の変遷というものが、田舎生活を楽しめるような自分に変えてくれた、ということなのだろうと思っています。

フランス滞在もあと僅かになりましたが、残りを精一杯楽しみたいと思います。まだパリで一晩ありますので、最後にフランスらしいオシャレな街を堪能してから帰ります。皆様もあと少しで週末ですね。もうひとふんばりして、よい週末をお迎えください!

*この写真は、お隣の猫のショコラをお腹に乗せて昼食後に爆睡するうちのフランス人。ショコラはまだ生後6ヶ月の可愛いさかりの子猫で、この村では悪い人や車に出くわす心配もほとんどないので、我が物顔に外を歩き回っています。我が家には食事時になると顔を出すちゃっかりぶり。"Gonflee, toi!(勝手なやっちゃなー!)"と言いながら、うちのフランス人は自分の鴨やハムを分けてやっていました。

スペインで晩御飯

2004-10-11 20:51:12 | フランス便り
フランスのスペイン国境近くの村々からは、ほとんどパスポートも見せることなしにあっという間にスペインへ入国することができるので、物価の安いスペインでお酒やシーフードなどの買い物をする家庭も多いようです。うちのフランス人の実家があるこの村も例外ではなく、スペインの最寄の街までは車で40分前後で行けてしまうので、幸運にも「今日はスペインで晩御飯を食べましょう!」というようなことが出来てしまうわけです。

スペインでの晩御飯の醍醐味と言えば、やはりタパスです!!バーのカウンター上にスペインならではの様々な前菜がところ狭しと載っており、好きなものを好きなだけお皿に取って、立ったまま安い地酒やサングリアなどと一緒にほとんど手づかみで食べます。刺さっている楊枝や使った紙ナプキンは、どんどんバーの下の床に放り投げて棄てて行くのが地元式なので、最初は床の汚さにちょっとひるみますが、地酒も入っていい気持ちになってくると、そんなことも気にならなくなり、食べて飲んで棄て、飲んで食べて棄て、というリズムも板についてくるというもの。フランスの田舎風の食事はどうしても肉が多くてヘビーなので胃が疲れてきがちですが、スペインのタパスの嬉しいところは、何と言っても魚介類の多いところ。酢漬けのアンチョビーなんて、日本のシメサバのようで幾つでも食べられてしまうし、口の中でとろけるくらいまで柔らかくトマトソースで煮込んだタコ、にんにくの効いたイカの墨煮、そしてこれはギリシャ風だと思うのですが、燻製タラコの風味たっぷりのタラモサラダなど、大概の日本人の口にも合うのではないかと思います。生ハムにオリーブオイルを塗ってグリルしたナス、トマト、そしてマッシュルームを重ねたカナッペなども病み付きになりそう。これにうちのフランス人は、地酒の赤ワイン、私は白ワインを合わせました。うちのフランス人の赤ワインを味見させてもらうと、多少気がきつい若い味ですが、なかなかタンニンのパンチが効いた男性的な味で、シンプルですが、食事との相性はぴったり。私の白ワインは典型的な地酒で、見た目は日本酒のにごりのような感じ。でもかなり辛口で、口に含むとかすかな発泡感があります。うちのフランス人の赤ワインも、私の濁り白ワインも、まさしく日本で言うところのコップ酒で、ワイングラスについでくれるものではありません。コップはそれこそ学園祭でコカコーラかファンタでも飲むようなプラスチックのぺらぺらした大きな透明なコップで、私の白ワインは、発泡感とにごり具合を引き立てるためか、ウェイターさんが1メートルくらい上から、一滴も零さずに滝のように注ぐ、という具合。ちなみにワインのお値段はコップ一杯1.5ユーロです。そして、我々が外人根性丸出しで写真を取ったり大声ではしゃいだりしていると、必ず現地の人に話し掛けられる。私たちは、東洋人と白人という、この近辺ではほとんど見慣れない組み合わせである上に、英語とフランス語の混じる不思議な会話をしているので、周囲の人々の興味をとても惹くらしい。そして、私はスペイン語はちんぷんかんぷんなのだけれど、フランス人とスペイン人というのは、もとがラテン系で何かあい通じるものがあるものか、(あるいは単に酔っ払いというのが世界共通ということなのかもしれないけれど)うちのフランス人と地元のスペイン人は、お互いに好き勝手に自分の言葉でしゃべりながら、何となく意思疎通がはかれているようなんです、これが。そして、お互いに自分の食べているものを推薦しあって、「次はあれだ、これだ」と議論した挙句に、どちらかが何かを注文すると、「ウノ!」「ウノマス、ポル・ファヴォール!」などと同調し合い、すっかりアミーゴな奴らになっている。

そして惜しまれつつ一定時間が過ぎると我々はタパスを後にするわけですが、実は一軒のタパスで食事を終えるというのは野暮なものなので、一軒でちょっと食べて飲んでは次のタパスへ、とはしごするのです。行く先々で飲み物を地酒やらサングリアやらに変え、行く先々でできるアミーゴと飲んだり飲ませたり飲まされたりするので、はしごも3軒目ともなると、私はへろへろ。うちのフランス人もへろへろとは行かないまでもウルトラ・ハイパー・ハイになり、結局4軒はしごして夜半過ぎに家路につきました。高速道路はガラスキですが、時折長距離運送トラックに出くわすのが怖いところ。ほとんどがフランスやスペインなどの地元のトラックではなく、ブルガリアやリトアニアなどの遠方から来ているトラックなので、運転手さんも疲れているし、こういったトラックの居眠り運転事故に巻き込まれるケースがとても多いのがこの高速道路の特徴。でも私はへろへろになった挙句に助手席で爆睡し、うちのフランス人はかなりきこしめしたお陰で、大胆不敵な運転にさらに粗暴さも加わっていたと思われ、並み居る長距離トラックを追い越し蹴散らし、通常なら40分程度の道のりを、30分前後で帰ってきたことでした。命があって、ラッキーかしら。でもスペインで晩御飯、美味しくて楽しくて安くて辞められない!!!ちなみにこの夕食で4軒はしごして使った金額は、二人あわせても50ユーロにもならなかったということです。

フォアグラが来た!!!

2004-10-10 18:51:37 | フランス便り
こんにちは!インターネットの接続トラブルで、少し間が空いてしまいました。DSL環境に慣れていると、旅先でのダイヤル・アップが本当にもどかしく感じられますが、私がDSLを使い始めたのは去年の11月からでまだ1年経っていないし、今は当然のように仕事やプライベートで使っているE―mailですら、私が社会人になったばかりの頃は、まだ日本の企業では使われていなかった(せ、世代がばれる)。。。人間というのは、つくづく便利さにすぐに慣れて、当たり前のように思ってしまうものですね。もっと周囲のものに日々感謝の気持ちを持たねば。

ところで、ここ2日間の大イベントと言えば、何と言ってもフォアグラが届いたことです!!後日写真でもご紹介しますが、両手一杯にずっしりと乗る大きさの、それこそお刺身にして食べられるくらいのフレッシュ・フォアグラが、右隣の家の息子さんを通して買うと、何と1キロあたり18ユーロ!!18ユーロですよ、約2500円弱。信じられますか?我が家でお願いした固まりは1キロ弱なので、15ユーロちょっとでした。右隣の家の息子さんは、地元のフォアグラ工場で働いているので、勿論これは中間マージンが一切省かれた工場卸価格で、しかもきっと家族レートも効いているに違いないので、ウルトラ・スペシャルな品質及び価格というわけですが、それにしても、こんなものを手に入れてしまうと、レストランでの価格設定がばかばかしくなってしまって、もう外ではフォアグラを食べられない。実際、去年フランスに帰省してこのフォアグラを堪能して以来、外のレストランでフォアグラを食べたことなんて、あったかしら???この大きさのフォアグラを1センチか1.5センチ幅に切った一切れが、例えば日本のフレンチ・レストランでは3,000円がところふんだくられるわけですから、そんな一切れが10人から12人前は取れてしまうこの塊が15ユーロときては、もうレストランの値段は、ほとんど冗談としか思えません。そして、このフォアグラを、きちんと正しく調理してあるレストランの少ないこと!!フレッシュ・フォアグラと言えば、中はクリーミーな半生に仕上がるよう、両面を煙が出るほどのフライパンで本当にさっさっという感じで焼くのが正しい調理法なのに、大抵のレストランは焼きすぎです。焼き過ぎると、あの何とも言えない口の中でとろけるような食感が損なわれてしまって、味も素っ気もなくなって台無しです。日本のフレンチは、それほどでもありませんが、アメリカのレストランでフォアグラを頼むと絶対にがっかりしてしまう。もっとも鮮度の問題などもあるのかもしれません。

このフォアグラを、届いたその日は、私とうちのフランス人二人だけで、3種類の違った調理法で食べました。1皿目は、シンプルに塩と胡椒だけふって、両面を強火で30秒づつ程度焼いたもの。これは、新鮮な品質ならではの食べ方で、くせのない、それでいてとろけるような風味のフォアグラの味が堪能できます。2皿目は、それにポートワインと葡萄の缶詰を加えて作ったソースをかけたもの。この調理法は、別ナベでポートワインと葡萄の缶詰(シロップは使わずに葡萄の実だけ)を火にかけ、煮詰まったところで焼きあがったフォアグラの上にじゃっとかけて、間髪入れずに取り出すというもので、フォアグラを買ってくださった右隣の家から習ったレシピです。さすが、フォアグラ工場に勤める息子さんを持つご家庭のレシピだけあって、そのままレストランに出して、それこそ一皿25ユーロくらいふんだくれそうなお味!!そして、最後の1皿は、私が最高のレシピと信じる照り焼き風です。焼きあがったフォアグラに、近くのスーパーで手に入れたお醤油をじゃーっという感じで回しかけ、何でもよいので甘味(我が家には砂糖の買い置きがないので、私は少しだけジャムを入れます。去年はアンズのジャム、今年はさくらんぼのジャムを使いましたが、大成功でした。その他、ブルーベリー、カシス、葡萄のジャムでも美味しいと思います。個人的にイチゴやマーマレードはちょっと。。。と思いますが、結局のところはお好みで!三温糖のような砂糖やみりんがあればそれにこしたことはないですし、ミュスカやソーテルヌなどの甘い白ワインを入れてもよいと思います)を加え、やはり間髪入れずに取り出します。私は、フォアグラを取り出した後、さらに数十秒お醤油をちょっと焦がすような感じにして、ソースにしました。これは、白いご飯が欲しくなる味で、私もフランス人もこのレシピが一番好き!ちなみに去年、初めて私がこの照り焼き風のレシピを試した時に惚れ込んだうちのフランス人が、そのことをご近所に吹聴しまくり、ご近所の皆さんが興味深々だったので、翌日はフォアグラを買ってくださった右隣の家のご夫婦と、お向かいのご夫婦をアペリティフ(食前酒と前菜だけのパーティーで、フランスではとても一般的)にご招待し、照り焼き風フォアグラを6人前作って試食してもらいました。何とお向かいのご夫婦は手みやげに新鮮な生牡蠣を持ってきて下さり、生牡蠣一人半ダース、フォアグラ、そして最後は私のサーモン・パテ(レシピはこのBlogで8月にご紹介しています)という、アペリティフとしてはとても豪勢な催しになりました。ワインは牡蠣には地元の無名の辛口のロゼと白、フォアグラにはソーテルヌ又は少し離れたところの名品、カオールの赤!皆さん、少し焦げたお醤油の味とフォアグラの相性にとても感心して下さり、このレシピがスペイン国境沿いの村一体に広まる日もそう遠くない?!!なーんて。おかげさまでサーモンのパテも大好評で、奥様方からは、レシピを是非紙に書いて渡して欲しい、と頼まれました。とても簡単なのに、改めてこのレシピの偉大さを認識した次第。これを教えてくれた友人に大感謝!!です。

ちなみに日本でこのようなフォアグラが手に入らないことを嘆かれる方がいらしたら、それは早計ですよ!日本にもあるではないですか、フォアグラに匹敵する偉大なものが!!そう、アンキモです。これから冬にかけて、新鮮な生のアンキモをスーパーなどで見かけることがあったら、是非この照り焼きレシピをお試しください!アンキモは、酒蒸しや鍋物にポン酢という食べ方も勿論美味しいですが、たまには目先を変えてフォアグラ風の照り焼き・スタイルも美味しいもの。アンキモは油が足りないので、テフロン加工のフライパンを使うか、ごま油をちょっと足して、焼いてみてください。甘味はみりんでもいいですが、私自身は、ブルーベリージャムをちょっとだけ入れるのが好き。アンキモを焼きすぎないようにフライパンで焼いたら、フライパンの中の少し魚くさい余分な油は菜ばしでつまんだペーパータオルに吸い取らせてしまい、そのままお醤油と臭み消しの日本酒少々、甘味を入れてじゃーっ!!この照り焼き風アンキモを前菜にしたら、メインは、アンコウの身のガーリック・ハーブ・バター(ハーブは乾燥バジルやタイムなどをお好みで)炒めで、真冬のフレンチもどきが完成!タラの白子に軽く小麦粉をまぶしてバターで焼いて、レモンをぎゅっとしぼったムニエルなども美味しいですよ。付け合せは、粉ふき芋でもいいですし、じゃがいも2-3個を皮を剥いて乱切りにしたものと、にんにくを3-4かけ皮をむいただけのものを、ひたひたの牛乳で柔らかくなるまで煮て、パセリのみじん切りをまぶしたものなんて、いかがでしょう?牛乳は焦げやすいので、それだけ気をつけて!!これから冬に向けていろいろなものが美味しくなっていくこの時期、是非身近な材料で、ご家庭でなんちゃって・フレンチをご堪能ください!!!ちなみにこれらの日本ならではのなんちゃって・フレンチには、無理やりワインを合わせる必要もなく、焼酎や日本酒が絶妙の相性だと思うのですが、いかがですか???

バスク名物、「ピペラード」に挑戦!

2004-10-08 05:16:23 | フランス便り
鳥のさえずりと、木々の間を渡る風の音以外はしない、静かな静かな10月7日の朝。その静寂を破るのは、やはり私の悲鳴であります。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!」今日は、朝のコーヒーを飲みつつくつろぐ私の椅子のひじかけに、ふと気付くと、人差し指大の青虫が這っていた。寝起きの頭もぐしゃぐしゃのうちのフランス人が、おもむろにカフェオレ・ボールをテーブルに起き、ため息をつきながら、青虫を窓の外につまみ出して言いました。「いい加減、慣れてくれよ。ほとんど毎朝じゃないか。」そんなことを言われましてもですね、こう突如として、ところかまわず標準サイズよりかなり大きめの足が多すぎるものとかほとんどないものとかにお出まし頂くとですね、こちらにも心の準備というものが必要なものですから。何度も言うように、私は丸ごとの魚もそれなりに料理するし、ロースト用のトリの丸ごとなども家で扱うし(但し内臓は処理済みのものですが)、たいがいの害虫は自分で殺せるし、トカゲだってカエルだってバッタだってカマキリだって掴めるし、日本の標準のそこらのお嬢さんよりは、よほどそういうものには免疫があるつもりだと、言っているではないですか。でも、私もそれなりに胆が据わってきて、市場やスーパーで買ってきた野菜や果物に、何かついていてもあまり気にしないようになってきた。というか、例えば流しで野菜を洗っていて、何かがぽとっと落ちるとします。すると、それをなるべく見ないように、水を流しっぱなしにして、さっさと排水溝の中へやり過ごしてしまうとか、サラダの中に異物が入っていると、やはりそれをあまり見ないようにして脇にどけてさりげなーく紙ナプキンで取ってしまうとか、そういう「見なかったことにする」対処法を編み出した、というわけなんですが。思うに、何か異物を意識した時に、目をこらして正体を確認しようとするから、墓穴を掘るんですね。そもそもこちらでは、買ってきた野菜やサラダに虫がついているなんてことは、日常茶飯事で、そんなことに大騒ぎしていては食事もできません。第一、虫がついているくらい新鮮で害のない野菜や果物ということで、それはそれは驚くほど美味しいのです。何か大きな黒いものが家の外壁や網戸に留まっていても、サッシの窓を開けて庭に出たとたんに何かがさささーっと目の前を横切っていっても、見ないふり、見ないふり。これで今のところかなり上手く行っています。

今日はお向かいのおばさまから、家庭菜園で取れたというトマトとピーマンを頂きました。トマトは、木からほとんど落ちるか落ちないか、というぎりぎりのところまで完熟させたトマトで、まるで果物かと思うほどに甘くて柔らかくて美味しい!ピーマンも自然の甘味がたっぷりです。これをおばさまのレシピで、バスク名物のピペラードにすることに。たっぷり目の二人分として、まずにんにく2かけと玉ねぎ半個の薄切りを弱火で炒め、そこへピーマン6-7個分くらいの半月切りを加えます。5-6分ほどでしんなりと炒まってきたところで完熟トマトのざく切りにしたものを2個分加え、ロゼワインを50CC程度注いで、さらに10分ほど蒸し煮にします。おばさまいわく、シーズン・オフの野菜で作る時には、砂糖を少し加えて野菜の甘味の足りなさを補完するとのことですが、今日頂いたトマトやピーマンには甘味がたっぷりで、その必要はなさそうです。全てに完全に火が通って柔らかくなり、トマトが潰れ、ピーマンにトマトソースのように絡みつくようになったら、塩コショウを強めにふり、火を止め、卵黄2個を入れて、余熱で半熟になるようにさっとかきませて出来上がり!この卵黄だけ、というのはどうやらおばさまのテクニックのようです。私は全卵を使ったこのピーマンのオムレツも大好きですが、卵黄だけというのもぜいたくでコクがあって美味しい!!オムレツというよりは、とろりと甘く仕上がったピーマンとトマトをゆるーくまとめてさらに甘味を出す、という役割のみの卵の使い方で、これなら前菜として独立してお客様にもお出しできそうなお味です。今日は何と右隣のお隣さんから生み立ての卵をわけてもらったので、大きなオレンジ味を帯びた卵黄で作った、本当にぜいたくな一品に仕上がりました。写真も取りましたので、後日アップさせて頂きますね!

虫にしても、目の前の畑で取れた美味しい野菜や果物にしても、鶏の鳴き声と教会の鐘の音しかしない静かな朝にしても、本来は普通にそういったものと一緒に暮らしていたのが、人間なんですよね。こういうところに来ると、思考が本当にシンプルになっていって、仕事の悩みとか人間関係とか、将来のこととか、様々な生活上の瑣末なことが、嘘のようにどうでもよくなってきてしまう。カリフォルニアも、実家のある神奈川県近郊も、住めば都でそれなりに楽しめるところですが、いつかこの村で、うちのフランス人と一緒に、余計なものを殺ぎ落とした本当に単純な日々の生活を楽しめる日が来ればいいな、と思っています。