ようこそ西千葉へ アミーゴ.

ゴールは88歳。誰も教えてくれない12年。主役は自分だ。昨日はもう来ない今日を明日をどう生きる。わはははーアミーゴ

五行歌  暗い森      南三陸町 工藤真弓

2011年07月26日 | 地域通貨ピーナッツクラブ

ひとり 買い物途中の 大地震 道にしゃがんで子の名を叫ぶ      急いで帰って 子を抱いて 高台へ走る 何も持たない 子を抱いて

小雪降る 高台に逃げて あっという間に 波が一気に 押し狂ってきた    広報で警報を呼びかけていた 女性の声が 途切れる

茶色い波の手が 町を壊していく 家が そのまま 流されていく     やめて やめて 津波に 叫びながら 逃げる 

なぎ倒されて来る  電信柱を よけて 電線を くぐって       逃げて 逃げて もっと高いところ もっと もっと 高いところ

神社の裏山まで 逃げる 町の悲鳴が 足元に響いてる 泣いているのに       雪降る中を 家族で逃げる 暗い森も いのちを守る 灯の中と思う

辿り着いた 小学校の体育館の 片隅ですくむ 余震のたび 子を抱きしめる    わずかな毛布を かけあって 眠る 砂だらけの足を 重ねて

津波が去って 夜が明ければ 無惨 ひよどりが 慌てて飛んでゆく    町は消えていた あまりに非情で 声が出ない 涙も出ない

高台にあった 家は 終着駅 知らない家が 突っ込んでいる     窓が破れて カーテンが しずかにゆれている  風も 泣いている 

波は 鳥居の下まで そこから上は別世界 紅梅が咲いて 福寿草が咲いて   海は 無情に 春の海 かがやいている 嘘だと言ってるの!

子を亡くした人 旦那さんに会えない人 何も 言わない 空白の町    避難所で 迎えた 誕生日の夜 マスクをずらして 子がキスしてくれる

次は いつ 戻れるか判らないんです 神さまに謝って謝って 町を離れる   装束と しゃくと 宮司の印は 無事だった 頑張りなさいということ

子が 家族みんなの名を呼んで言う よんでみただけ 呼んで答える人が いる   被災して 十日目の夜に 夫が泣いていた じっと 静かに

    もう  私だけの命ではない  空に還った  無数の夢を   叶えるように

                  後藤一磨さん朗読の五行歌です。             海保まこと