銀座のうぐいすから

幸せに暮らす為には、何をどうしたら良い?を追求するのがここの目的です。それも具体的な事実を通じ下世話な言葉を使って表し、

親友は時として、大敵となる(元参謀の苦悩)(連載小説の12)

2010-07-09 16:25:17 | Weblog
小説『ジョーイの出立』
  第一部、タイムズスクエアーの家、
     第12章『親友は時として、大敵となる』

・・・[前号までのあらすじ]、NYで1999年に不動産を探している百合子は、15年前に日本で経験した詐欺事件を思い出す。そのとき危うく殺されそうになったが・・・


 盗聴の結果は、当然のこと、山崎氏宅に届くシステムになっていただろう。で、もしかしたら、弁護士事務所さえ盗聴の対象になっていたかもしれない。鹿島泰三と、それと連動している組織のやり方を、後年熟知してきた百合子から見ると、この事件の際には、すでに、そこまでの高度な盗聴は、あったとも思われる。

 で、山崎氏は、二重に、おくさんの狂人ぶりを聞かせられることとなった。
~~~~~~~~~~

 ここから先の解釈は、非常に難しいのだが、お人よしの百合子が願っている解釈をまず一番のものとして、先に述べよう、あの殺意が、奥様の出来心だったという案で、ご主人がその事実を知って驚愕をしたという案だ。

 ご主人が、『ああ。そこまで、愛する家内を追い詰めてしまったのか。自分の人生は失敗だった』と考えて、用意の短刀で割腹自殺をしたという案だ。もし、武家の出なら、この程度の結末はありえる。特に奥様が外出中に、簡単な遺書を書いて、事を行った。

 もし、懐剣を戦後の、苦しい時期に売ってしまったとしたら、首吊り自殺だったかもしれない。特に次の日に、葬儀屋が来ていて、社員たちは、平服だったが、ぴんと来た百合子は彼らをとらえて、「山崎さんで、誰か亡くなった」と聞いたら、「ええ、」と答えたので、割腹自殺ではないと思われる。

 山崎邸はあまり大きくなく、百合子の家のインテリアを模していた。そちらのほうが6か月後で着工だから、建築途中で内部を見て、まねをしたのだろう。この件は割と重要だ。百合子は美術に造詣が深く、かつ、父も建築がすきなので、神奈川県下随一と思われる大工さんにお願いして、装坪数としては小さいものの、内部は、質もデザインもよいうちを建てていた。それと、庭というか、敷地が近所の二倍あったのも影響して『若いのに、どうしてあんなに恵まれているのかしら?』とは思われていた。

 だから、ご近所から情報を集めた、山崎氏は、勘が狂ったのだ。嫉妬しているご近所は、百合子をけなす情報しか言わないから。

 内部が百合子宅に似ていて、坪数はさらに小さかったあの、老後の夫婦二人だけが、静かに住むための20坪ていどの平屋で、割腹自殺があったら、その後始末は大変だろう。家族としては奥様だけだから特に。でも、葬儀屋の社員たちが、こんなにゆったりとかつのんびりと、構えているから、割腹自殺ではなかったのだと、百合子はひとまず、安心した。

 後年、『おくりびと』という映画ができて、評判になった。あの中では遺体を棺におさめる前に、さまざまな死に化粧をほどこす。だから、葬儀屋が何の防衛心も示さないことから見ると、不審なところがないのだろうと、百合子は判断をした。と、いうことは自殺ではなくて、急病死か? それにしては前夜救急車等の出入りがなかった。このご近所は大変静かなところで、救急車がサイレンを鳴らさないで、来ても、その雰囲気はわかる。

 あらゆる意味で百合子は、なぞを感じたが、死亡原因などは、鹿島泰三が、どうにでも処置できるのだから、一晩、奥様は騒がないようにと、彼から、忠告を受けていたのは、間違いないと考えた。
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 しかし、あれから、30年を過ぎて、二度ほど、『これは、暗殺だな』と感じる危険な目にあった後では、解釈がまったく異なってきた。30年前のあの山崎夫人の急発進も、計画された暗殺だったと、考え直すようになった。つまり、夫もその親友鹿島泰三も、了承の上の、計画だったのだ。

 「結果が怪我ていどなら、それでもOKだし、たとえ、相手が死んでも、奥様が、罪にならないように手配してあげます」と鹿島泰三が山崎氏に請合っていたと、今では考え直している。
 しかし、奥様は見事にはずしてしまった。しかも百合子はすぐ、その運転の不自然さを感じ取り、殺意があったと弁護士さんに告げた。しかも弁護士さんの事務所が盗聴をされていたら、二度違った形でそれを知らせた百合子の頭のよさが、よりいっそう、相手方に、わかったはずなのだ。

 山崎氏は、初めて、自分が容易ならざる巨魁を相手にしていることを感じ取ったであろう。そして、百合子が将来どのように動くかをも心配したはずだ。また、二人の弁護士がこの事実を知ってしまったことも、不安であったろう。特に殺意まで抱いたことを知ってしまったのも、大きな不安だったと思われる
 その二人とも弁護士としては、最上級のレベルの人でもあった。

 だから、山崎氏は妻の寝入った真夜中に起きて(または前夜から寝ないでいて)遺書を書き、鹿島泰三氏に後を託して、軍人用の自殺薬を飲んだと、考える。終戦時、ある程度以上のランクの将校は、みんな砒素を手に入れていたはずだ。甘粕大尉の自殺が有名だが、山崎氏にも、『ここが、死に時だ。それによって、自分の名誉も守られるし、親友の鹿島君にも迷惑をかけることはない』との判断があったと思われる。
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 さて、その当時は、百合子は当然のごとく悩んだ。そして、その二十年後にそれを、『元参謀の陰謀』という未発表の小説にまとめて、一回文学界の新人賞に応募した。のに、そのころはライターとしての覚悟がまだ定まっておらず、引き上げてしまった。文芸春秋社に対するその「どうか、返してください」という電話連絡も、盗聴をされていたとすれば、鹿島泰三は、『あいつは、脅かせば、どうにでもなる』と思い込んだはずだ。で、百合子には、引き続いて、あらゆる意味で、嫌がらせとか、脅迫が行われている。

 だけど、百合子側に損ばかりあるかというと、そうでもないのだ。百合子はある意味でぐいぐいというほど、強くなっている。それは、この攻撃を浴びていることもひとつの原因だ。そして、その個人的な攻撃を分析すればするほど、社会の諸相も連動して分析できるようになる。そして、今では、日本と、それを支配しようとする国際的軍産共同体との関係は、瞬間的といってよいほど、分析できる。

 そして、『人間とは何だ』という設問に対しても深い分析ができるようになった。

 ここで、この上の地籍変更届に関する詐欺の件で、はっきりわかっていることは、盗聴とは、ある意味で勝つための手段であるのだけれど、それによって自らの首をも絞めるということだ。山崎氏の死は、百合子が弁護士に、二つの電話で、おくさんの殺意を告げたことで起因したのは疑いがない。その前にも、大騒ぎはなんどもあって、百合子は彼にものすごい勢いで怒鳴られたりしていた。だけど、まったく、恐ろしくないので、堂々としていた日もあった。そういう日とか、内容証明が法務局に届いた日の方が、客観的にみれば、より意味の深い決定的なポイントでもあるのだ。

 だけど、彼が自死、もしくはショック死に至ったのは、*1人を殺そうとして、しかも*2それが失敗して、*3相手に、その事実を握られたということを、*4彼が知った日だったという順序を踏んでいる。そして、*4が決定的な引き金だったと思われる。ということは、盗聴というものの、悪魔的な作業の悪魔的な結果に他ならない。

 山崎氏は、ひそかにおとなしく生活していた、夫婦でもあった。あの二人だけの力では、盗聴までは、できないし、手をそめなかったであろう。それなりに、品があり、道徳観もあったはずである。だけど、鹿島泰三という、現在も情報活動の最先端にいる、人物が親友だったということがこういう結果を引き起こした。
 今日の文章はここで、終わりたい。最後の結論を、解説する必要もないと思うから。
    

本日は、午前1,00、午後、15時、に一本ずつアップしてあり、これは三本目です。ちょっと、送りすぎるようですが、それはどうかご容赦いただきたいと思っております。

 主人公が殺されるか、どうかという瀬戸際で、それを、計画した方が死んだというある意味で劇的なエピソードだったので、最後まで書き抜くほかはなかったのです。
   では、2010年7月9日                雨宮 舜
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追い詰められた女性が、狂うとき(+大相撲、問題・#11)

2010-07-09 11:55:41 | Weblog
小説『ジョーイの出立』
  第一部、タイムズスクエアーの家、
     第11章『追い詰められた女性が、狂うとき。』

・・・[前号までのあらすじ]、NYで住まいを探す百合子は、その15年前日本で、不動産・詐欺に出あった過去を持つ。相手の親友として、日本の・大・黒幕がいて、百合子の家を盗聴する・・・

 法務局と財務局(後注10)、そして、その上級の役所へ、内容証明を出し、自分を守った百合子は、その後、自分の土地の安全性確認のために訪れた法務局で、全体の雰囲気ががらりと変わり、民主主義国家、日本の役所がもつべき本来の建前を、取り戻しているのを知り、やや安心をした。

 その直前など、敵側からの饗応があるのか、または、鹿島泰三が乗り出して、法務省のトップあたりを動かして、そこから下流へと命令が流れているのか、『江戸時代でも、ここまでの悪代官はいなかったでしょうね』と、おもうほど、所全体が、百合子に対して、意地悪だったのだ。謄本(コピー)など、順番を遅らせて、出てきたりして。待たされるので当然のこと、こちらはいらいらする。それを、楽しむかのように窓口おばさんは、じろじろこちらを眺めていた。

 だけど、あの窓口おばさんは、それによって大失敗をしたのである。内容証明を書きおろすきっかけは、あのおばさん吏員の、生意気さにあったのだから。彼女の下品きわまりない顔つきこそ、私の心が、『ここで、もう、ゴー発信ですよ。誰に遠慮をすることもない』と決意したダイナモだったのだから。教養のない下っ端人間が、小さな脳みそで工夫をした忠誠心を発揮しても、大きな損失を上司に与える結果になることの、典型だった。そして、これは今でも繰り返されている敵方の(幼稚)な発想のひとつではある。

 だけど、粘着気質的な鹿島退蔵は、復讐を、忘れてはいなかった。2009年母のもつ、地所のことで、法務局を訪ねた百合子は仰天する。土地台帳の原簿閲覧ができなくなっているとのことを知った。

 その決定がいつ、どういう法律(または、条例)のもとに行われ、どういう形で新聞社がそれを伝えたかは調べる必要がある。百合子自身は、こんな改悪が行われていることは寡聞にして知らなかった。そして、法曹界、特に弁護士団体は、これに対してどういう判断を示しているのかは、絶対に調査する必要はある。

 このブログを読んで、誰かがアイデアを盗んで、先に調査し、発表してくれるのは歓迎だ。オリジナリティは私にあるが、私も全能の神ではないし、スタッフを20人も抱えている松岡正剛でも、立花隆でもないのだから、時間がない。この件は、週刊誌を三週間にぎわわすことができるほどのネタとなるであろう。

 少し、地味だと考えられるのなら、月刊誌で取り上げてほしい。ところが、ここで、鹿島泰三、(もしくは彼という記号で代表される、国際的軍産共同体の意思を呈する団体)の関与で、雑誌類が廃刊されることが続いた。これも、日本の文化を破壊する動きなのだ。そういう前段を経て、今回の大相撲騒ぎに至る。横綱白鵬が、「大相撲をつぶす気か?」とうめているが、そのとおり、国際的、軍産共同体の意思は、そこへあるのだ。
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 さて、余談が過ぎた。地籍変更届で、莫大な利益をあげる相手と、戦っていた時期に戻ろう。ある夕方、百合子が三鷹にある母校から戻ってきた日だった。

 曲がったとたん目の前、40メートル先に、不自然な場所として、山崎夫人の車が停まっていた。その時点では、それだけだったが、相手が百合子を確認したとたんに急発進して、しかも急角度で、ターンしたので『轢き殺そうとしている』ということがわかった。

 で、百合子は、くの字型に曲がっている、道路を横っ飛びに逃げた。天が味方してくださったと思うのは、その引っ込みがあったことだ。その引っ込みがなかったら、防げなかったと思う。そのくの字の角度がまた、適宜だった。120度ぐらいの緩やかさだったが、そこに、引っ込んだ百合子を轢くためには、自分が石垣にぶつからないと不可能で、それでは、殺意があったことが、明瞭に、証明されてしまう。
~~~~~~~~~

 こんな恐ろしい目にあっても、百合子はやや、冷静であった。すぐ家に入り、子供たちが無事でいることを確かめた後、電話番号を持って、公衆電話へ走った。夕方五時を過ぎていたので、男性弁護士はつかまらないことを知っていた、ご自宅は知っていたが、彼は自宅で、これらの案件が出ることは好まない人だった。それは、既知のことだった。しかも話題が女性固有の問題でもあった。

 百合子は直感として、山崎夫人が強度のヒステリーを前から隠し持っていて、この瞬間は、その強烈な発作がおき、瞬間だけだろうが、狂人になってしまったと感じたのだ。で、この手の問題を相談するのは相手が女性のほうがよい。

 女性弁護士は、声もなく、聞いていてくれた。で、続けて「一番心配なのは、こどもなの。子供を守るためなら、大学へ通うのは、あきらめてもいいわ。新しい資格を取って再就職へ挑戦したかったけれど、ともかく、今はこどもの方が大切です。

 でもね。これは瞬間的な発作かもしれないの。ずっと以前平和だったころに話し合ったことがあるのですが、彼女は、戦時中男性が払底したので、男性の代わりに、工学部建築学科に通ったのね。その際に、かかとのやけどの跡が、人に見られて悲しかったわなどと、いう思い出を語ったひとだから、根は純真なの。今日のことは、瞬間的な出来心だと思うわ。

 それにご主人は、もと海軍参謀です。今は落ちぶれて、だれも尊敬しないといっても、その当時ではエリートだったのだから、70過ぎた今でも、ほかの同年齢の人間に比べれば、ノブレス・オブリッジの観点はわかる人だと思うの。だから、ご主人にこれを聞かせる必要はあるわ。

 もちろん、今、玄関を訪ねていったとしても、内容証明を法務局に出してしまった後だから、門を開けないでしょう。それに、対面としていうのも、非常にいいにくいことです。彼は途中でさえぎって、終わりまで聞こうとはしないでしょう。

 だから、盗聴システムを利用します。もう一回我が家の電話から、同じことを話します。で、どうか、あら、さっき、それは、聞いたでしょうとは、おっしゃらないでください」と頼んで、我が家へ帰り、自宅の電話で、委細を、違う言い方で告げた。

 つまり、・・・・・どんなに、ハイ・スピードだったか、(普段は幼児も遊んでいる場所なので、超スローで流していく下り坂なのだ)、走る方向角度のこと、それらを勘案すると、これは、偶然ではなくて、明瞭に殺意があったということを、中心に・・・・・

  さあ、その後はどうなったか。それは、続くとさせていただきたい。これは小説なのだ。新聞連載や、週刊誌の連載の様式を継ごう。ただ、書ければ、一日一回以上の更新をしたい。読者は、紙の本に比べれば、簡単に読める字数であるとお感じになるでもあろうから。  
(後注10)、この詐欺事件の最大の特徴は青地と言う江戸時代には、無所属の土地であり、今は、国有地と言うものを利用したところにあった。その技術語が入っているので、あたかも、権威があり、正しいことのように見えるのだった。この件に関しても、詳細を述べることはできるが、そうすると、小説としての、前後の脈絡が相当に断たれるので、ここでは、そのテクニカルワードと、それを利用した敵との攻防については触れない。当時の新聞一面に青地が何とか、という記事が出た。が、それについても、ゆりこは、は、はーん、鹿島泰三が、この記事を作らせたのですねと思っただけであり、その1982年以降、新聞の記事がまったく信頼性がないことに気がついてしまった。
 右顧左眄の典型で、真実を報道するより、強者の意のままに動く。そうなってきている。
ただ、青地が国有地と現在はなっているので、法務局だけでなく、財務局も相手にしなくてはならなかったというわけだ。
 まあ、青地というのを簡単に説明をすると、農民と、森林所有者がけんかをしないようにと、設定されたベルト地帯で、野菜が日陰にならないように、農民を守るシステムである。昔は山林地主はお金持ちが多かったと見える。または、お殿様のものだったのだ。で、農民の側の実情に合わせた温情ある措置というわけだ。

 ただ、山崎氏の書類では、角、角と曲がっていて、本当の青地で花井ことが明瞭だった。彼がこの、テクニカルワードを使って、自分の悪巧みをあたかも正当なものであるかのごとき、演出をしたのは明瞭だった。そんなことが読めない百合子でもない。また、昔から、山崎氏とけんかをしていた人々は、この山の旧来の地主たちだった。農民側でもあるが、山崎氏が、うそをついていることを直感として、知っていたグループである)       2010年7月9日   雨宮 舜
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土地台帳が閲覧できないと、庶民は自分を守れなくなる(小説#10)

2010-07-09 01:06:21 | Weblog
小説『ジョーイの出立』
  第一部、タイムズスクエアーの家、
     第10章『土地台帳が閲覧できないと、庶民は自分を守れなくなる』

・・・・・[前号までのあらすじ]、1999年、NYで家さがしをする百合子は、そういえば、私は1982年に、土地をめぐる詐欺事件に出会ったのだと思い出す・・・・


 盗聴は、この事件が起きる前に始まっていたと思う。その第一の理由は、その書類が来た日が、夫と子供たちが、広島へ夏休みの帰省をしていて、百合子が一人だけで、家に残っていた夜だったからだ。あまり、ご近所づきあいをしない山崎夫人は、昼間だって車だけ使って、ご近所を歩くなんていうことはしない。それなのに、そんな夜に他人の家にくるのが、第一おかしい。

 そのころ、百合子宅の居間では、「あのね、私、秋から母校へ再び、通学するつもりなの。その準備で超がつくほど、忙しいの。それに、お姑さんって、なんとなく、私を毛嫌いしていらっしゃるみたいだから、煙ったいしね。だから、今年はあなたと子供たちだけで帰省してくださる」といって頼み、夫が、「じゃあ、そうしよう」といってくれたのだ。それを知って「あそこのご主人は頭がよいから、彼がいないうちに、奥さんを丸め込んでしまおう」と、山崎夫妻は、言いあっていたと考えられる。そんなところまで、家庭の秘密を、聞かれていたと思うと、本当に悔しい。

 実際のところ、お人よしの百合子は、すでに、夫の実印を彼らに貸してあげて、その書類上に、押してしまっていたのである。その一回目の理由が何だったかは、今では何も覚えていない。だけど、彼ら夫妻が、もう一回来宅したのは、別の理由があったからだ。実は、母の実印も必要だった。と、いうことに、後から、彼らは気がついたのだった。土地の一部分が、母の名義だったからだった。購入資金を援助してもらっていたからそうなる。

 母の実印は、百合子の家には置いていない。それでそれを押してもらうために、彼らは、、今までは、見せなかった、地籍変更届の正本を、百合子に手渡さなければならなくなり、その内容に目を通してもらいたくないからこそ、『私道を市に寄付するなど』という、いかにもおいしい口実を持ってきたのだった。

 この、ある意味では、こっけいなる話の最終的な局面では、結局のところ、彼らは、道路の、三十センチ幅だけは、実際に市の名義としたのである。最後には、百合子から実印をもらえないと判断をして、百合子の家をそっくり囲む形で、私有地を公有地にしたのだった。だが、それは、長さ二十三メートル・幅三十センチというミミズにも似た奇妙奇天烈な形のもので、公図にも描き切れない形であったが、自分の土地を実際に、市に寄贈することはやった。(これは、1982年時の話)

 さあて、時制や、事の成り行きを元に戻そう。百合子は彼らの想像通り、実家に電話をかけて、「おかあさん、こんど実家に行くから、実印を頂戴ね」といった。すると、母が「変ね。普通は、寄付ぐらいでは、実印なんか押さないものよ。実印を押す場合は、こちらが損をする可能性を考えないとだめよ」という。あとで考えると、母の方が一日の長があった。百合子は、最初は「まさか、あの人たちは、夫婦ともインテリで、しかもご主人は元参謀なのよ」と答えたが、母が「どうしても、その話はおかしいわ」というので初めて書類をめくって眺めたのだ。

 まず、もともと、2.73平米しかない土地がどうして、4270平米になるのかが不思議極まりなかった。その上、どこにも寄付の文字がなかった。で、その日から謎解きを始める。すると、最初は、500平米買った土地を、次々に建売住宅として売り払い、残りが一坪にも満たなくなったのだけれど、公有地を開拓して、それを自分のものであると主張すれば、簡単に土地は、自分のものになるのであった。単に、書類上だけでも、法務局に認めてもらえば、それで、自分の土地が格段に増えるのだった。

 ただし、その際、重要な条件があって、地境を接する地主、すべての承諾を得なくてはならず、その承諾のしるしが、実印を押すことなのだった。

 もちろん、百合子よりも前に、この疑惑の書類に異議を唱えた人はあって、そういうお宅では、百合子の家に後日施されたのと同じ措置を施した。さらに意地悪なことは、そのお宅が、旧来使用していた、門から出入りできない形にしたりしたのだった。だから、百合子だけが被害者でもなかった。別に被害者同士の、連帯はしなかったが、被害者が一人だけではないのも事実だった。ある程度以上に、頭のよくて、かつ旧来の地形を覚えていた人たちは、みんなこの悪だくみに、すでに、気がついていた。

 当時は土地が高い時代で、一平米、10万円はした。だから、四億円を濡れ手で粟でつかめることとなる。

 それで、これは、法的な種類のものだから、弁護士さんに相談すべきだと考えた。二人心当たりの弁護士さんがいたが、親友に当たると思っていた人は、女性で、しかもこういう件を扱ったことがないといわれるので、皆目方針が立たず、失礼だったが、もうひとりベテランの領域に達しておられる。経済問題専門の男性の弁護士に相談をした。ただ、女性弁護士にも調査の際、やってよいことといけないことについては丁寧に教えを乞うた。そして、その二人の弁護士は、ぽっとオフィスを訪ねたわけではなくて、すべて、友人関係を通しての依頼だった。だが、ふたりとも「お金を取らない」とおっしゃるので、調査、それから、内容証明の発送等も、全部、自分でやった。

 男性の方の弁護士さんは、「これは、簡単です。相手方が、嘘をついているので、その嘘を、欺罔という法律用語(専門語)を使って、委細を説明した、内容証明を、一本、法務局へ送っておけばよいのですよ」といわれる。

 これらの相談をかねる電話は、アポも含めてすべて盗聴をされていたのだった。
 でも、百合子だって、素人だし、それ以前は、単なる善意の人たちに囲まれて生きてきたわけだから、実行には迷いに迷った。そのうち、盗聴をしていることをわざと誇示するがごとく、百合子が昼間の時間を、ほとんどそこですごす居間の、まん前の電柱で、電話線をあれこれ、工事をし始めた。いかにもそれらしく大げさに。

 この===電話局に盗聴を命令する===などということは現在の山崎氏には、できることではなくて、鹿島泰三氏の命令であったと思う。しかし、この盗聴こそ、山崎氏、本人の命を縮めたのだった。それはあとで語ろう。今は内容証明の発送に限る。
 百合子は内容証明を送ることには、本当に、迷いに迷ったが、法務局の受付のおばさんの態度がおかしくなって、非常に不親切だと感じて帰ってきた夜に、明け方までかかって、とうとう、五通の内容証明書を書き上げた。それは、まだ、パソコンが普及していないときで、赤の原稿用紙型、罫線が入った美濃紙に、手書きである。

 普通は三通でよいが、握りつぶされることを恐れて、上級のお役所にも送るべく、あて先同列で、五通作った。このことと、内容、を、弁護士さんは、大変にほめてくださった。「あなたは、とてもか弱そうで、いわゆる、被害者像(すぐ、人から脅迫されたり、だまされたりするタイプをさす)かと、思っていたが、実際は、しっかりしていて頭がよいんですね」といわれた。文章は、普通の会話体で、どこにも角ばったところも、どこにも理論的なところは見えないが、やわらかいなりに、理路整然としていたのである。

 それが法務局に届いたことは、決定的な、メルクマールとなった。それ以前の横柄な受付のおばさんの態度も、そのほかも、何もかもが、変わった。しかも、百合子が、法務局内で、原本を閲覧をしている最中にこの件の相手方の、測量士が呼ばれていて、所長から、たっぷりと、油を絞られていた。『うわあ、くさい田舎芝居をやっている。もう間に合わないわよ。内容証明を出しちゃったのですし』と思ったが、そういう手配をとることで、法務局は『自分たちが、一方(特にこの件では、山崎氏側は悪人である)に、肩入れをしているのではない』と言う姿勢を示したかったのだろう。

 しかし、2010年現在、法務局では土地台帳の原本の閲覧ができなくなっている。これは、鹿島泰三が手を打って、悪人たち、頭脳犯たちの証拠を調べられないようにしているのだ。
 こういうことは本当に困る。お金があって、どんな場合にも大金を積んで、弁護士を依頼して、自分を守ることのできる人は大丈夫だが、百合子のように、晴天の霹靂と言った類で、被害を与えられる人間が、自分の力で、自分を守ることができなくなるのだ。

 この一時から類推しても、百合子は、規制強化の動きには、神経質なほど、目配りを忘れないこととなった。禁煙を過剰に訴える運動。こういうものも、明日の、別の規制を招き、庶民は、がんじがらめになるであろう。唯一得をしてぬくぬくと生き抜くのは、鹿島泰三一派、もしくは、彼と連動している、国際的軍産共同体などの、意向を呈した、人物たち、つまり、今の社会で羽振りのきく、セレブ、特にマスコミ・セレブといわれている人々たちだ・・・・・彼らを除いて、ぐんぐんと被害が重なるであろう。百合子は、盗聴ハッキング以外にも、さまざまな被害に、すでに、あっているが、ただ、自分を強化する以外には、防ぎようがないと思っている。だから、ぐんぐんと強くなる。し、今の社会にみなぎる悪弊については、引き続いて、心を注ぎたいと思っている。

 今、まさしく、この国では、人権にもとる蹂躙行為が、頻繁に行われているのだ。
               2010年7月9日   雨宮舜
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