2時間9分の演算処理。
今年は秋から冬にかけて時代劇映画の公開が相次いだが、中でも本作は刀剣がほとんど登場しないという変わり種であった。
侍とそろばんというミスマッチに、物静かなたたずまいの堺雅人。まさにこの人以外あり得ないキャスティングで、いわゆるつかみとしては文句のつけようがなかった。
しかし当たり前の話だが、問題は中身だ。
意外性の中に何を描くのか。本作はその点で物足りなかった。
幕末の激動の時代をそろばんで生き抜いた侍がいた。
一芸を極めることで足りないものを補って余りある結果を生んだことを美談として綴りたいのだろうと推測するのだが、どうにも、特に主人公の猪山直之が一定の地位に上り詰めるまでの前半は、ただでさえ大きくなく動きがないエピソードを丁寧に、かつ淡々と描いているから、どうしても冗長に感じてしまう。
一方で、後半は一気にスピードアップして、動きがありそうな息子との決別、幕末の騒乱といった事象があっという間に流されてしまう。
数行上で「推測」と書いた理由はそれで、結局全体として、江戸時代の家庭のリストラ話が中心に見えてしまっているのだ。
もちろんそうした話を軸にコミカルな味わいに仕立てることも有りなのだが、結果としてそうもなっていないわけで、どうにも立ち位置が不明確なのである。
せっかく特色のある題材と、ぜいたくな役者陣が揃っただけに、もったいないというのが正直な感想だ。
(60点)
今年は秋から冬にかけて時代劇映画の公開が相次いだが、中でも本作は刀剣がほとんど登場しないという変わり種であった。
侍とそろばんというミスマッチに、物静かなたたずまいの堺雅人。まさにこの人以外あり得ないキャスティングで、いわゆるつかみとしては文句のつけようがなかった。
しかし当たり前の話だが、問題は中身だ。
意外性の中に何を描くのか。本作はその点で物足りなかった。
幕末の激動の時代をそろばんで生き抜いた侍がいた。
一芸を極めることで足りないものを補って余りある結果を生んだことを美談として綴りたいのだろうと推測するのだが、どうにも、特に主人公の猪山直之が一定の地位に上り詰めるまでの前半は、ただでさえ大きくなく動きがないエピソードを丁寧に、かつ淡々と描いているから、どうしても冗長に感じてしまう。
一方で、後半は一気にスピードアップして、動きがありそうな息子との決別、幕末の騒乱といった事象があっという間に流されてしまう。
数行上で「推測」と書いた理由はそれで、結局全体として、江戸時代の家庭のリストラ話が中心に見えてしまっているのだ。
もちろんそうした話を軸にコミカルな味わいに仕立てることも有りなのだが、結果としてそうもなっていないわけで、どうにも立ち位置が不明確なのである。
せっかく特色のある題材と、ぜいたくな役者陣が揃っただけに、もったいないというのが正直な感想だ。
(60点)