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「桐島、部活やめるってよ」

2012年08月17日 23時45分55秒 | 映画(2012)
青春のいじわる。


大きな事件が起こるわけじゃない。校内暴力が潜んでいるわけでもない。言ってみれば平和で健全な学校である。

しかし、そんな学校にも確実に存在する大きく高い壁。言い換えれば生徒間格差とでも言おうか。

脚光を浴びる者と陽の当たらない陰で暮らす者。桐島という一人の生徒の噂を通して、その残酷なまでの世界の違いをまざまざと見せてくれる。

学校生活のスターは運動部。桐島はその最上位に君臨していたらしい。

「らしい」というのは、劇中に彼の姿はまったく登場しないからであり、それは平民には手の届かないほど上位の存在であるという一種の象徴でもある。

学校の世界にある、運動部>帰宅部>文化部という固定された格差の中で芽生えるそれぞれの感情。

文化部は劣等感を携えながら、より自分の世界へ深化していく。帰宅部は運動部を醒めた目で眺めつつ文化部に対しては優越感に浸る。運動部は言わずもがなだ。

もちろんすべての生徒が100%同じ感情に浸るわけではない。運動部にいながらも人間の弱さを理解できる者もいれば、帰宅部に身を置きながらも何かしっくりこないと感じる者もいる。

桐島の噂が引き金となって、分けられた集団が更に細分化されていく様がおもしろい。

特に象徴的なのは、桐島には及ばないものの、彼女がいてスポーツ万能ながら帰宅部として過ごしていた宏樹である。

日常何気なくつるんでいた彼女や友人の代わりに、懸命に練習を続ける野球部の先輩、自分に熱い視線を送る同級生、そしてまったく異次元の世界の住人である映画部・前田の姿が視野に入ってくる。

その一方で、宏樹の彼女・沙奈の心境に変化はない。周りの微妙な心の揺れを煩わしいくらいにしか感じない彼女の近い未来が見えるようだ。

映画の序盤は、たくさんの登場人物の個性を植え付けるため、同じ日の光景を別の視点から繰り返す「バンテージポイント」方式で進む。

これはかなり効果的だった。それなりに個性豊かな生徒たちの良い面悪い面が更に際立って、感情移入もしやすくなった。

どんなに平等や公平を図ろうとしても、いかんともしがたいのは個性があるから。学校とは、個性をこすり合いながら生き方を学んでいく場なのである。

残酷な世界を描くが故に安易なハッピーエンドは必要ない。

そんな制約がありながらも、観る側がカタルシスを得られる場面を入れてきたところは巧い。夢さえ想像できれば、明日を生きる活力は蓄えられるからね。

(95点)
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