すべてのヤングケアラーに幸あれ。
毎朝、通勤時にはスマートフォンで音楽を聴いている。電車の揺れと相まって眠りへと誘われる、神経をすり減らす平日の中の束の間のリラックスタイムだ。
主人公のルビーに対し、パートナーのマイルズが尋ねる。
「ご家族は音楽を理解できるの?」
周りに常に音がある生活を送る者には想像ができない世界。父母と兄、自分以外のすべての家族がろう者という環境で育ったルビーは、小さい頃から家族と世間をつなぐ役割を求められてきた。
漁業を営む一家の手伝いは物理的にも多忙で、学校生活を楽しむこともできないでいたルビーは、選択制の課外活動として合唱を始める。
それは元々歌が好きだったことに加えて、少し気になる男子生徒のマイルズが合唱を選択したことを知ったからであった。しかし、この何気ない選択が彼女の運命を変えることになる。
この映画には、印象的な場面がいくつかある。その中でも出色だったのが学校の秋のコンサートの最中、音声が完全に無音になる場面である。
作品は全体を通してルビーの視点で描かれる。家族と世間をつなぐ役割の大変さや、初めて抱いた夢への希望と葛藤。そんなひたむきに生きる彼女の姿にエールを送り続けてきた中で突然訪れる静寂。そこで観る側は、初めて父たちの立場に自分を置き換えることになるのである。
歌っているルビーの表情。横に目を移すと彼女の歌に聴き入る観客の姿が。別の席を見ると涙を浮かべている人もいる。
彼らは手話の通訳を通して相手の言葉を聞き取る。そして、ルビーの歌の素晴らしさを周りの人たちの反応を見て確信するのである。
コンサートが終わった後、父はルビーに今日の歌をもう一度自分に歌ってくれと頼む。今度は周りに誰もいない。父は手をルビーの首筋にあてがい彼女の歌を感じる。
ここまでストレートに愛を語る作品って、最近あまりなかったのではないだろうか。観終わった後のすがすがしさが格別だ。
物語のキーとなる2つの曲、"You're All I Need To Get By"と"Both Sides Now"もいずれも大好きな曲、完璧である。ちなみに、元ネタとなった「エール!」は残念ながら観ていません。
(90点)
毎朝、通勤時にはスマートフォンで音楽を聴いている。電車の揺れと相まって眠りへと誘われる、神経をすり減らす平日の中の束の間のリラックスタイムだ。
主人公のルビーに対し、パートナーのマイルズが尋ねる。
「ご家族は音楽を理解できるの?」
周りに常に音がある生活を送る者には想像ができない世界。父母と兄、自分以外のすべての家族がろう者という環境で育ったルビーは、小さい頃から家族と世間をつなぐ役割を求められてきた。
漁業を営む一家の手伝いは物理的にも多忙で、学校生活を楽しむこともできないでいたルビーは、選択制の課外活動として合唱を始める。
それは元々歌が好きだったことに加えて、少し気になる男子生徒のマイルズが合唱を選択したことを知ったからであった。しかし、この何気ない選択が彼女の運命を変えることになる。
この映画には、印象的な場面がいくつかある。その中でも出色だったのが学校の秋のコンサートの最中、音声が完全に無音になる場面である。
作品は全体を通してルビーの視点で描かれる。家族と世間をつなぐ役割の大変さや、初めて抱いた夢への希望と葛藤。そんなひたむきに生きる彼女の姿にエールを送り続けてきた中で突然訪れる静寂。そこで観る側は、初めて父たちの立場に自分を置き換えることになるのである。
歌っているルビーの表情。横に目を移すと彼女の歌に聴き入る観客の姿が。別の席を見ると涙を浮かべている人もいる。
彼らは手話の通訳を通して相手の言葉を聞き取る。そして、ルビーの歌の素晴らしさを周りの人たちの反応を見て確信するのである。
コンサートが終わった後、父はルビーに今日の歌をもう一度自分に歌ってくれと頼む。今度は周りに誰もいない。父は手をルビーの首筋にあてがい彼女の歌を感じる。
ここまでストレートに愛を語る作品って、最近あまりなかったのではないだろうか。観終わった後のすがすがしさが格別だ。
物語のキーとなる2つの曲、"You're All I Need To Get By"と"Both Sides Now"もいずれも大好きな曲、完璧である。ちなみに、元ネタとなった「エール!」は残念ながら観ていません。
(90点)
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