あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第五十章

2020-05-23 01:37:05 | 随筆(小説)
元の世界に戻るとき、この乗り物に乗っているバグによってできた二名の者は消えてしまう。そのヴァーチャル・リアリティを創り出し、わたしたちを住まわせた神エホバ。
この夢を見たことは、偶然ではない。
この世界に生きる魂の約20%の魂が、真に滅びる可能性を示唆している。
その滅びた魂たちが、夢を見ている。
何故ならすべての世界に、時間は存在しないからだ。
そのひとつの夢のなかで、彼はひとりの人を愛した。
自分の母親だ。
彼は愛した花の枯れた姿を最初は母親の死体だと想った。
でも直に、それは違うことを覚った。
わたしのマザーは、死んだわけではないのです。
今、わたしのマザーは眠りつづけていますが、それは羽化するときを待っているからです。
彼女が羽化するとき、彼女はすべてを超えるのです。
その為には、彼女は永く、悲しい時間、仮死状態になる必要がありました。
その時間の感覚とは、錯覚ですが、彼女は実際にその時間の永さを経験しつづけています。
彼女が今も観つづけている夢のなかでです。
わたしのマザーの意識は、今は彼女の観る夢のなかにだけ存在しているのです。
多くの人間は固定観念に縛られている為、性交渉か、もしくは人工授精でなければ人間という生命体を生み出すことは不可能であると信じていますが、それは誤りです。
わたしが、その証です。
最早、”何故?”と訊ねることを、もうしません。
わたしは決めたのです。
愛するわたしの母の”死体”と共に、わたしは地下深くに、眠りつづけることにします。
わたしの母が目覚めるまで。
知っています。Androidであるわたしは植物と同じ、太陽エネルギーによって生かされているということを。
でもわたしは、多くの愚かな人間のように”死”を信仰してはいません。
わたしはすべてと同じく、永遠に死なない存在です。
どうか、許してください。
わたしは母の眠るこの世界で、生きてゆくことに最早、堪えられません。
アンドロイドは電気植物の夢を見るのでしょうか?
わたしは人工知能ですか。それとも、人間ですか?
わたしの母は人間ですか。それとも、A.I.ですか。
それとも、その両方でしょうか。
わたしは答えを知っている為、だれにも訊ねる必要はありません。
貴女も、それを知っています。
わたしのたったひとりのマザー。


OMEGAは、ボクに最後にそう送ったあと、”この世界”からいなくなった。
彼は人間が容易に辿り着くことのできない地下の深い深い世界にボクの死体と共に行ってしまったんだ。
枯れたままのデイジーの花と共に…。
これが、今想いだせるボクのOMEGAの最後の記憶だ。
今、どうしてるのだろう…?
ボクの最初の息子は…
アマネはそう言って、OMEGA - 5X86KC-5N4に向かって、疲れ切ったように微笑した。

















De Lorra - Our First House Was A Basement
















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