トイレでは女性の2人組がメイクを一生懸命に直している。
1人はマスカラをさらに長く、もう1人は滴り落ちそうなくらいにグロスを重ねづけしていた。
それを横目で見ながら、個室へ向かおうとした時だった。
「めちゃくちゃラッキーだよね」
「まさかさ、ジヨン先輩が回してるなんて~。こんなことあるんだね~!」
「まだいるみたいだから、化粧直しておかないと」
マスカラを何度もつけては、まばたきをして長さをチェックしている。
「あんたなんか相手にしてくれないってぇ~!!」
2人はジヨンの後輩だろうか。
今日のシークレット出演を知らずに来たようで、とても興奮している様子だ。聞こうとしてるわけじゃないのに、あまりの声の大きさに嫌でも耳に入ってくる。
「だけどさぁ、ジェヒさんも来てたじゃん!帰って来てたんだね」
「あ、そうそう!いたいた~~~!わざとジヨン先輩の前で踊ってるみたいだったよね~」
「よくあんなことできるよね~」
この2人、ジェヒさんのことがあまり好きじゃないみたいだ。
「あの2人さ、また復活するのかな」
「さぁ・・どうだろう・・・。でも彼氏がいたジェヒさんを奪ってまで付き合いだしたんだから、ジヨン先輩だって帰って来て嬉しくないわけはないと思うけどなぁ~」
他の人とつきあってたジェヒさんを奪った???
「にしてもさぁ~。最強のカップルとまで言われてたぐらい仲が良かったのに、何も言わないでロンドン留学しちゃったんでしょ?」
「そうらしいよ。うちのオッパーが言ってたもん。その時のジヨン先輩の荒れようは見ていられなかったって」
「お兄ちゃん、ジヨン先輩と同じクラスだったんだ~」
2人が出て行き、私だけがその場に残った。
私は何度も何度も手を洗った。動揺した心は水の冷たささえ感じない。
蛇口をフルに開け、さらに勢いよく水を出す。
叩きつけるように出てくる水に、そのまま手を当て続けた。
ジヨンとジェヒさんの関係。
ジヨンが、奪ってまで愛した人。
過去のことだ、と思ってはいても冷静でいられない。
水にさらし続けている手の感覚がだんだんと麻痺していく。
私は、顔をあげ鏡を見た。
そこにはジェヒさんとは比べ物にならない平凡な、いや平凡すぎる人間が映っていた。
1人はマスカラをさらに長く、もう1人は滴り落ちそうなくらいにグロスを重ねづけしていた。
それを横目で見ながら、個室へ向かおうとした時だった。
「めちゃくちゃラッキーだよね」
「まさかさ、ジヨン先輩が回してるなんて~。こんなことあるんだね~!」
「まだいるみたいだから、化粧直しておかないと」
マスカラを何度もつけては、まばたきをして長さをチェックしている。
「あんたなんか相手にしてくれないってぇ~!!」
2人はジヨンの後輩だろうか。
今日のシークレット出演を知らずに来たようで、とても興奮している様子だ。聞こうとしてるわけじゃないのに、あまりの声の大きさに嫌でも耳に入ってくる。
「だけどさぁ、ジェヒさんも来てたじゃん!帰って来てたんだね」
「あ、そうそう!いたいた~~~!わざとジヨン先輩の前で踊ってるみたいだったよね~」
「よくあんなことできるよね~」
この2人、ジェヒさんのことがあまり好きじゃないみたいだ。
「あの2人さ、また復活するのかな」
「さぁ・・どうだろう・・・。でも彼氏がいたジェヒさんを奪ってまで付き合いだしたんだから、ジヨン先輩だって帰って来て嬉しくないわけはないと思うけどなぁ~」
他の人とつきあってたジェヒさんを奪った???
「にしてもさぁ~。最強のカップルとまで言われてたぐらい仲が良かったのに、何も言わないでロンドン留学しちゃったんでしょ?」
「そうらしいよ。うちのオッパーが言ってたもん。その時のジヨン先輩の荒れようは見ていられなかったって」
「お兄ちゃん、ジヨン先輩と同じクラスだったんだ~」
2人が出て行き、私だけがその場に残った。
私は何度も何度も手を洗った。動揺した心は水の冷たささえ感じない。
蛇口をフルに開け、さらに勢いよく水を出す。
叩きつけるように出てくる水に、そのまま手を当て続けた。
ジヨンとジェヒさんの関係。
ジヨンが、奪ってまで愛した人。
過去のことだ、と思ってはいても冷静でいられない。
水にさらし続けている手の感覚がだんだんと麻痺していく。
私は、顔をあげ鏡を見た。
そこにはジェヒさんとは比べ物にならない平凡な、いや平凡すぎる人間が映っていた。