産業用機械の電気技術者のための国際規格

海外へ輸出される産業機械は国際規格に適合することが求められますが、特に米国規格NFPA79は異なる部分があり注意が必要

NFPA79解説_絶縁監視モニター設置要求について(追加)

2023年11月27日 | NFPA79規格情報

NFPA79-2018版 8.3.2項により非接地回路にはClass2回路を除いて絶縁監視モニタを設置することが規定されていました。

すなわち、Class2*回路においては絶縁監視モニタの設置は必要がありませんでした。

 

NFPA 79 2021版では9.4.2.1項の追加の例外規定に従い原則はClass2回路でも絶縁監視モニタの使用が義務付けられました。

ただし、非接地回路の地絡事象(接点間の短絡等)が意図しない起動や危険な動きを生じさせず、あるいは機械の停止を妨げず機械の損傷や、

人的損傷を生じさせない限りにおいては絶縁監視モニタの設置は必要ないと追加規定されています。

 

9.4項 機械装置は全てリスクアセスメントを実施し、安全関連回路については9.4.1項に従いリスク低減を実施し、

要求されるパーフォーマンスレベルPLを備えた制御回路とすることが求められています。

従って、たとえClass2の非接地回路で絶縁監視モニタを設置しないと決定したとしてもリスクアセスメントの実施は必須であり、

特に非常停止機能等を含む安全関連回路に該当する制御回路であるならば絶縁監視モニタの設置は必要となります。

安全関連回路に該当しない制御回路には換気ファン回路、メンテナンス照明回路等の人的傷害や機械の損傷を起こす危険性の少ない制御回路が想定されています。

すなわち、この規格の目的は非接地回路であっても原則、絶縁監視モニタの設置を要求し、リスクアセスメントを行いPLに適合した設計をすることが求められています。

以上


NFPA 79-2018版によるClass 2回路での絶縁監視モニターの設置要求について

2020年02月03日 | NFPA79規格情報

NFPA 79-2018版で規定されている制御回路の非接地回路について、8.3.2項に於いては絶縁監視モニター(Insulation-monitoring device)を設置して回路の地絡事故時にそれを警告表示するか、又はその回路を遮断することが求められています。

 

ただし、例外規定としてClass 2 回路については絶縁監視モニターの設置は必要ないと規定されています。

 

現在、NFPA 79-2021版の改訂作業が進んでいますが、この8.3.2項が改訂され 例外規定に於いて非接地回路のClass 2回路であってもリスクアセスメントの実施結果によっては絶縁監視モニターの設置が要求されることになります。

 

この改訂の理由は実情より、Class 2回路であっても地絡事故によっては意図しない危険な起動や動作等、あるいは機械の停止機能が無効になるリスクがあると指摘されました。

 

この規格8.3.2項の例外規定はまだ改訂されていませんが、NFPA79で要求されている基本原則4.1項により、機械のリスクアセスメントの実施が優先されますので、Class 2回路に於いてもリスクアセスメントの実施によっては8.3.2項の如何にかかわらず絶縁監視モニターの設置が必要となる場合がありますので、ご注意下さい。 以上


北米向け産業用制御盤(ICP)のSCCR値の表示とその算出計算式の文書提出について(再確認)

2019年07月12日 | NFPA79規格情報

NFPA70(NEC)-2017版が適用される米国各州において、SCCR値の表示が要求されるICPについて、その算出計算式を記載した文書が要求されますのでご留意ください。

 

北米向けICPの現地での据付に際し、SCCR値の表示は定格銘板に記載されますが、NEC-2017版409.22(b)項に従い、その推定(available) SCCR値の算出計算式の実施日を記載した文書(document)の提示が、据付検査の際にAHJにより求められますので、準備しておくことをお勧めします。

なお、この計算式は一例としてUL508A-2017版  SB4.3.1に記載されていますのでご確認下さい。

以上


NFPA79-2018版で追加されたインバータやサーボのモーター電源回路に使用する電線ケーブルの規定

2018年07月13日 | NFPA79規格情報

NFPA 79ではListedされたインバータやサーボ・ドライブの電源側と負荷側の電線についてはメーカー指定の電線を使用することが優先されていますが、それ以外の電線ケーブルを使用する場合にはNFPA 79-2018版の4.4.2.8項の規格が追加されました。そのモーター電源回路にはListed品のフレキシブル電線(RHH, RHW, RHW-2, XHH, XHHW, XHHW-2)を使用することが規定されましたので、注意して下さい。

 

インバータ等の電源供給ケーブルに時々、PVCケーブルの使用を見かけますが、特に、モーター負荷に対して距離が離れている場合には問題が生じることになります。Listed品のインバータやサーボドライブ・メーカー指定品以外の電線ケーブルを使用する原因としては長い距離のケーブルが販売されていない場合があり、独自に選定することがあります。このような時にはPVC電線やTHHN(W)電線ケーブルを使用することができませんので注意して下さい。

 

これら電線の使用ができない主な理由として、熱可塑性(Thermoplastic)絶縁材は長尺になると高いケーブル・キャパシタンスの影響によって、放電や漏れ電流等の問題があるためです。この対応としては、従来より一般的に使用されていますが、今回、追加規定されたゴム絶縁材のUL44の熱硬化性(Thermoset)やXLPE(架橋ポリエチレン)等の電線ケーブルの使用による対応となります。

以上


NFPA79-2018版で追加規定された装置接地電線の色識別について

2018年06月20日 | NFPA79規格情報

装置接地導体の色識別についてEx 1が追加されました。

13.2.2.1

緑色又は

緑/黄色ストライプ(黄色ストライプが1本以上とし、緑が主たる色とする)

 

 

EX 1: 以下の全ての条件に合致するとき、この色は装置接地線以外の目的で使用が可能である。

1) 多芯ケーブルの一線であること

2) 多芯ケーブルの供給電源が50V未満に制限された回路であること

3)多芯ケーブルの供給電源がClass 2 回路レベル以下の電源であること

4)その電線はアクセス可能な全てのポイントで再色識別されるか、あるいは多芯ケーブルがListed組立品の一部であること。

 

EX 2:  アクセス可能な全てのポイントで適切に色識別する条件で電線絶縁被覆やカバー被覆は何れの電線色でも使用することが認められる。

 

EX 3: 接地される制御回路に於いて、トランス端子から装置接地端子への配線については緑色電線や緑色/黄色ストライプ(黄色ストライプが1本以上)電線、あるいはbare導体の使用が認められる。

 

13.2.2

装置接地導体が形状や状態、構造(例:編組み導体等)によって色識別できない場合、あるいは絶縁電線にアクセスできない場合、その導体は全長に渡って色識別する必要はない。その接続端末部あるいはアクセス可能な部分は図8.2.1.3.3のシンボルによって、緑色または緑/黄色ストライプ(黄色ストライプ1本以上)あるいは緑色/黄色の2色の組合せによって明瞭に識別すること。

以上