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アニメ「進撃の巨人」中国でランキングトップに。中国動画サイトにおける日本アニメ正式配信の状況

2013年09月26日 | エンタメの日記
中国ではアニメ「進撃の巨人」がものすごく流行っています。検索エンジン百度の動画検索ランキングのアニメ部門で1位になりました。コナン、OnePiece、ナルトを破って新作アニメがトップに立つのは、久しくなかったことです。
■百度の動画検索ランキングのアニメ部門 2013年9月25日現在。1位:進撃、2位:中国のフラッシュアニメ「十万個の寒いジョーク」3位:名探偵コナン


■百度バイドゥ動画検索「おすすめ人気アニメトップ10(全体)」進撃の巨人、AngryBird、熊が出た(中国の幼児向けアニメ)、OnePiece、コナンなど。


■百度バイドゥ動画検索「おすすめ人気アニメトップ10(日本)」進撃の巨人、OnePiece、ドラゴンボール、コナンなど。


「進撃の巨人」と「半沢直樹」は本当に流行っており、普段全くアニメや日本ドラマを見ない層の間でも話題になりました。

「中国では○○はテレビでやっているんですか?」と尋ねられることがありますが、この質問はもう成立しません。何故かというと、インターネットとテレビの融合が非常に進んでいるからです。テレビで放送されなくても動画で配信されれば、テレビと遜色のない、或いはテレビを上回る影響力を発揮することが可能です。中国国内のテレビドラマやバラエティ番組はほとんどすべてネットで同時配信され、放送が終了した後も永久無料視聴できます。映画と動画サイトの融合も進んでおり、テレビ・映画・動画サイトは共存関係にあります。例えば、映画館で映画が始まる前に動画サイトのコマーシャルが流れたり、テレビ番組のテロップには協賛動画サイトとして、土豆、Youku、捜狐など多数の動画サイトのロゴが表示されます。

「進撃の巨人」を配信したのは、「愛奇芸」(QIY)という比較的新しく立ち上げられた動画サイトです。「愛奇芸」は検索エンジンの百度(バイドゥ)の投資により2010年に設立され、2013年に百度がPPSを買収したこともあり「愛奇芸」のメジャー化が進んでいます。
■「愛奇芸」(QIY)の「進撃の巨人」トップページ。「講談社からの独占配信許可獲得」と書かれています。


■「愛奇芸」とアニメイトが提携しグッズ「兵団証」を発売。アニメイトはタオバオ配下の大手ネットモール「Tmall(天猫)」に出店しており、主にネット販売で展開しています。


アニメ「進撃の巨人」がここまで流行るとは思われていなかったのに、よく「愛奇芸」は配信許可を取ったな・・・と思います。

中国で「日本アニメの独占同時配信」が増えてきたのは2011年頃からです。テレビ東京が版権問題に向けて動いたことがきっかけの一つになっていると思います。ニコニコ動画などでも海外同時配信も増えてきていますが、中国からは海外動画サイトへのアクセスがブロックされているので、中国国内のサイトで展開されています。

「進撃の巨人」以外の2013年夏季人気アニメの配信状況をみてみます。

■「Free!」(京都アニメーションの男子水泳部オリジナルアニメ)。始まってみたら、男性が観ても面白いという声が続出。Youku+土豆が配信。京アニのコピーライトが表記されています。


「Free!」は、基本的にはYouku+土豆でしか見ることができません。字幕もYouku+土豆翻訳チームが作成したものを使用しています。

【Youkuと土豆について】動画サイト大手Youkuと土豆は2012年に合併しました。会社名称は优酷土豆股份有限公司になりましたが、「Youku」と「土豆」のブランドはこれまでどおりに残っています。
【bilibili動画について】アニメ配信サイトとしてbilibili動画が有名ですが、bilibili動画自体はコンテンツのアップロード機能がなく、他の動画サイトにリンクする形で配信しています。

人気PSPゲームのアニメ化作品「ダンガンロンパ」は、ポータルサイトを母体とする「捜狐視頻」(tv.sohu)が正式同時配信権を取得したとされています。しかし「ダンガンロンパ」は現時点で「捜狐」だけではなく「楽視網」(Le.TV)でも視聴できます。「楽視網」が許可を得ているのかどうかは表面上は分りません。

■ダンガンロンパ 「捜狐視頻」(tv.sohu)「7月新番ダンガンロンパ 独占正式配信」とバナーに書かれています。


■ダンガンロンパは「楽視網」(Le.TV)でも配信中。


「正式同時配信」を銘打つ「捜狐」は、サイト側が手配した翻訳字幕作成者が作っていると思われます。一方、「楽視網」はファン有志による翻訳字幕作成グループ、「字幕組」(ファンサブ)が作成した字幕を使用しています。この2つを比べると「楽視網」(Le.TV)の方が字幕翻訳の質が良いです。「捜狐」の字幕よりも、「楽視網」の方が、翻訳の質、字幕表示のタイミング、フォント、いずれをとってもクオリティが上です。もし「捜狐」でしか視聴できなかったら「捜狐」で見ますが、今の状態だと「楽視網」の方が字幕翻訳が上手いので「楽視網」版を選ぶ人も多いと思います。

今注目されているのは、秋から始まる「黒子のバスケ」第二期をどのサイトが配信するかということです。恐らくYoukuに決まると思いますが、楽視網(Le.TV)など他に手を挙げているサイトもあり、複数サイトによる配信もありえるのでしょうか。

■2013年夏季アニメの配信サイトリスト「2013年7月新番組 中国国内動画サイト版権購入一覧表」。


この表記によると、2013年夏季新番アニメに関しては、海賊版配信がほぼなくなったことなります。
しかも、視聴者にとっては永久無料視聴なので、日本よりも便利な環境にあるともいえます。

但し、キャラクターグッズのコピー製品、コピーDVD、漫画の無許可JPG配信などは依然として多いです。作品配信はともかく、二次製品の版権管理が整うためには果てしない時間がかかると思います。例えば最近では、「進撃の巨人」の調査兵団のロゴを使ったTシャツやパーカーがよく売られていますが、作る側も着る側も著作権意識はほとんどないです。

また「正式配信」といいますが、版権料がいくらなのかということは、あまり明かされていません。
中国テレビドラマを動画サイトで配信する場合、1話あたりの版権料はピンキリなのですが、人気作の場合「1話あたり100万元(1500万円)を超えた」などとよく報道されます。しかし、日本のアニメの版権料がいくらかということは、ほとんど話題になりません。日中関係が悪化したときに攻撃対象になる可能性があるので、金額は明かされない方がいいかもしれません。

中国動画サイトで公式配信することのメリットとデメリットについて考えてみました。

メリット
1.「海賊版」撲滅対策になり、版権料を獲得できる。
2.動画サイトと提携して宣伝活動を展開することができる。

リスク・デメリット
1.本格的に日中関係が悪化したときに、完全に視聴できなくなる可能性がある。
現存する動画サイトはすべて許可制経営なので、当局の管轄下に置かれています。そのため、当局が配信禁止令を出した場合、従わざるを得ません。但し、中国政府はイデオロギーよりも商業活動を優先させる面もあるので、企業保護のために禁止令はよほどのことがない限り出さないと思います。

2.“公式”であるが故に、過激な内容を翻訳字幕の際に表現を濁すなど、面白みが失われる可能性がある。
3.基本的に永久無料配信なので、二次売上げが望みにくい。
4.動画サイトが倒産した場合どうなるのか。

1.のリスクは考えても仕方がないと思います。個人的に懸念しているのは2.の問題です。公式化することによって、字幕の質が下がるのではと思っています。これまでファンサブ集団「字幕組」が無料で作ってきた字幕は神字幕でした・・・。字幕の質低下によりファンが離れることが心配です。

4.のリスクについてですが、中国の動画サイトは9割以上広告収入に依存しています。個人ユーザーに課金するというモデルは試行されたものの成功していません。もっとも、個人課金に成功している動画サイトは、ポルノ専門サイトを除くと、世界でニコニコ動画だけなのではという説もあります。ニコニコ動画のようにユーザーから課金できる状況は、海外の動画サイトからすると「死ぬほど羨ましく理想的」のようです。中国の動画サイトの場合、広告収入への依存度が高く、多数の動画サイトが並立し差別化されていないので、不況になったときに共倒れになるリスクがあると思います。

なお、各動画サイトは日本のアニメよりも、中国アニメ、アメリカアニメをプッシュしているようにみえます。特に日本は幼児向けアニメが比較的少ないこともあり、就学年齢以下の子供に見せるアニメは中国国産アニメとアメリカアニメが強いです。

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4 コメント

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親戚の巨人 ()
2013-09-26 18:03:22
 こんにちは。「進撃の巨人」と「半沢直樹」は東方神起が今年のツアーでネタにしていました。「半沢直樹」はいいとして、「進撃の巨人」はみんな???でした。ただいま進撃ペン of トンペン増殖中です。(グロ過ぎてだという人も多いですが)
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玲さん (上海阿姐)
2013-09-27 00:10:26
こんにちは~進撃はアニメはお目目キラキラなので、見やすいですね分りやすいし・・・。漫画の方はちょっと読みずらいかもしれませんが、漫画も面白いです

東方神起(ユノ、チャンミン)が「進撃」ネタにしてたんですか・・・。見てるのかな?あの二人は「進撃」の世界観にすごく合うと思います。調査兵団のコスプレやってほしいです。神コスになること間違いなしかと。ユノ=ジャン、チャンミン=ベルトルトとかどうでしょう・・・。
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Unknown (らら)
2013-09-29 02:16:07
阿姐さんのアニメネタ、お待ちしてました!
日本のコンテンツ産業の人は阿姐さんの記事を読んで中国ビジネスの参考にしてほしいわ…!といつも思います。

東方神起の進撃ネタ、
ユノが「進撃の巨人」を「親戚が巨人」言い間違え、大爆笑でした。
あとはユノが奇行種の動きのマネをしました。
http://www.youtube.com/watch?v=yedG0kZrz8c
なかなか上手に真似てましたよ!(笑)

といいつつ、実は進撃アニメを見ていないわたしでした。
この半年毎日楽しみに見ていた「あまちゃん」最終回で燃え尽きてます…。
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ららさん~ (上海阿姐)
2013-09-29 11:46:23
こんにちは~!日本の生ものは相変わらず中国にほぼ来ないので、日系のPRはいよいよ二次元に任されてて、何ともいえないことになってます。。
日本のショップが多く入居しているデパートではOne Piece仕様のデコレーションが作られ、ローソンはコナン、ナルトキャンペーン、11月から上海のショッピングセンターで「EVA博覧会」、10月からは海洋堂フィギュア博やります。EVA博、海洋堂博は有料イベントです。
コンビニは日本本国でもあれだけアニメ・ボカロキャンペーンが多いので、海外でやっても当たり前といえば当たり前かもですが・・・・

親戚が巨人~~!やはりユノとチャンミンでライナーとベルトルト・・・?ユノには奇行種じゃなくて調査兵団になって立体起動装置操ってほしいですね。
あの二人以上に似合う人はいないと思いますよ~~いま妄想が止まらなくなってます・・・・。
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