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『芳華』『空海』中国版『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を凌駕するダークホース・ハンギョン主演映画『前任3』

2018年01月11日 | エンタメの日記
年末年始は新作映画が目白押しです。クリスマスや元旦連休のあるこの時期は、中国でも映画館は活況です。
中国ではショッピングモール付帯型のシネコンがすごい勢いで増えています。
スクリーン総数は北米を抜いて世界トップになり、2017年10月時点で中国全土のスクリーン数は4.9万を超えています。そして、郊外型モールの建設ラッシュにより、いまも毎日スクリーンが増え続けています。

映画チケットアプリを開くとGPSで近くの映画館が表示されますが、市街地を歩いていると、だいたい1km圏内にある映画館が3つくらい表示されます。それくらい映画館が多いです。
映画アプリではチケット購入機能や作品情報のほかに、興業収入がリアルタイムに表示されます
人々の映画興業収入に対する関心は高く、具体的な数字を頻繁に話題にします。

2017年12月に公開された馮小剛(フォン・シャオガン)監督の新作『芳華』は、文革終焉期の軍属の舞踊団の若者たちの人生を描いた作品で、非常に話題になっています。

『芳華』(Youth)2017年12月15日中国公開
監督:馮小剛。中国を代表する映画監督でヒットメーカー。
主演:黄軒、苗苗、鍾楚曦


1970年代後半、文革終焉期に軍属の舞踊団の団員として生きた若者たちを描いた作品です。
文革の終焉、毛沢東の死、中越戦争、改革開放といった時代の波にのまれながら、それぞれの人生を生きた男女の姿を、鮮烈な映像とカメラワークで淡々と語った映画です。
時間的には短いながらも中越戦争のシーンは強烈で、戦場での6分間のロングショットを撮るために7000万元(約10億円)が投じられたと言われています。
中国の映画やドラマ、小説などの作品には、政府を直接批判する表現はほぼみられません。
しかし、『芳華』のように、国や同胞のために大切なものを捧げた人間が、まったく報われなかったという現実を描いた作品はときどきあります。
一種の社会的なプロテストで、馮小剛監督が支持される理由でもあります。

興業収入ですが、1月8日時点で13.6億元。日本円換算で約217億円。中国では「10億元超え」がヒットの目安なので、『芳華』は興業的に成功といえます。
アプリユーザー評価:8.8点(10点満点)

グラフを見ると、公開直後の週末に最初の山ができ、翌週末にも前週に匹敵するほどの収入を上げています。口コミにより観客が動員されたと考えられます。
ただしピークの山が形成されるのが12月31日の週末までとなっています。

チェン・カイコー監督の日中合作映画『妖猫伝』(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』)が中国で先に公開されました。

『妖猫伝』2017年12月22日中国公開
(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』2018年2月24日 日本公開)
原作:夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』
監督:チェン・カイコー
主演:染谷将太、黄軒、張雨綺、阿部寛

唐の時代の繁栄と奔放さを、魔術的な美しさで描いた点が好評を博しています。
白楽天が李白の残した詩を通じて楊貴妃を敬慕し「長恨歌」を創作したというエピソードが主線になっています。
空海と白楽天がバディとして楊貴妃の死の謎を追っていくのですが、チェン・カイコー監督は唐代の文化・芸術・創作の美しさに対する賛美を表現したかったのではと思います。

宣伝では「総制作費150億円」とのふれこみですが、どういう計算で150億円(約10億元)なのかは疑問が持たれています。

中国興業成績は1月8日時点で5.17億元(約82億円)。制作費が本当に150億円だとすると、もう少し伸びてほしいところです。

12月22日の公開初日には高い数値を出しており、話題性・期待度が高かったことが伺えます。しかし公開の翌週は3連休ながら、落ち込みの幅がやや大きいです。ユーザー評価は7.9点。

12月29日には東野圭吾のヒット小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版映画が公開されました。

『解憂雑貨店』(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版)2017年12月29日公開
原作:東野圭吾
監督:韓杰
主演:王俊凱(TFBOYS)、迪麗熱巴、董子健、ジャッキー・チェン

2018年1月8日時点の興業収入は2.16億元です(約35億円)。
俳優の演技もよく、破綻なくまとまっているのですが、思ったより興業成績が伸びなかったようです。ユーザー評価:8.2。


公開日12月29日(金)とその後に続く3連休の動員が期待されましたが、3連休の最終日である1月1日から下降がみられます。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』中国版と同じ日に公開された中国映画『前任3』が思いのほか好成績を記録しています。

『前任3:再見前任』(元カノ3:さよなら元カノ)2017年12月29日公開
監督:田羽生
脚本:田羽生ほか3名
主演:ハンギョン(韓庚)、鄭愷、于文文

『前任3』は公開から2週間足らずで13.26億元(約210億円)を記録しています。最終的には20億元までいくのではとの予想もあります。
俳優はともかく女優は有名な人は一人も起用されていません。現代ものでセットにお金がかかっていないことは一目で分かります。
制作費は3000万元といわれており、中国では「低予算映画」の部類に入ります。
まさにダークホースです。
前半は割とベタなコメディなのですが、後半の脚本が素晴らしく、脚本の力で勝利した珍しいケースです。
監督の田羽生は1983年生まれで脚本家出身です。
映画「前任」シリーズの第3作で最終作です。
ストーリーはシンプルで誰にでもありえる現実味のあるものです。
主役の男性2人(ハンギョンと鄭愷)は会社を興し、事業は成功したけれど恋人とはうまくいかなくなり、ちょっとした喧嘩をきっかけに二人とも彼女と別れてしまいます。
前半は恋人の干渉から開放され、派手に遊びまわる日々を謳歌する男2人の生活がコメディタッチで描かれます。
後半は一転し、ハンギョンと彼女の心理が巧みな脚本によって深く描かれます。隙間を埋めるように入り込んできた新しい人物の位置付けが独特です。
ハンギョンは中国人男性ならではの素朴さと狡さを両方表現できるよい俳優だと思います。


グラフを見ると、公開直後の週末と比べて翌週の週末に大きく上昇しています。また、1月2日から1月5日は中国では普通の平日ですが、平日でも高い動員数を示しています。これも口コミによるものと思われます。ユーザー評価は9.0をつけています。

中国では新作映画は基本的に金曜日に公開されます。
次々と新しい作品が公開されるので、公開直後の週末が勝負です。そこで客足を集め、好評を得られると口コミで動員が伸びます。
しかし、動員が続くのはよくて4週間です。なぜかというと、新しい作品がびっしりとスケジュールされているので、人々の目はより新しいものに奪われてしまうからです。淘汰のスピードは非常に速いです。
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4 コメント

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ハンギョン (nijina)
2018-01-16 10:23:58
元気そうでなにより^ ^

空海 日本でも宣伝が始まりました
こんにちは^^ (ゆう)
2018-01-16 16:38:24
この映画アプリ面白いですね!
未だに携帯がガラケーなもので、アプリにはあまり縁がないんですが
こういうのを見ると便利だよなぁと思います。
空海は久しぶりに映画館で観ようと思っている作品です。

前任3は、前2作品と話は繋がっていないのでしょうか。
3だけ爆発的ヒットっていうのも珍しいですね。
nijinaさん~ (上海阿姐)
2018-01-17 00:08:27
こんにちは!ハンギョン元気そうです。
「前任3」予想外の大ヒットです。元EXOのルハンとかクリスと違って、いかにもイケメン役ではなく普通の男性の役ができるのが強みですね。
ゆうさん (上海阿姐)
2018-01-17 00:21:46
こんにちは!
「前任3」は1と2とも繋がりはあって、登場人物(キャスト)も続投しています。1も2も評価されていましたが、3がここまでヒットするとは予想外だったのでは。
「空海」はすごくきれいな映画でした。
ストーリー的には楊貴妃の死の謎と死に関わる人物たちの秘密を解いていくのですが、監督は李白や白居易の詩の世界そのものを幻想的な映像で表現したかったのかな・・と思います。
唐の時代は中国人にとって誇りであり永遠の憧れですね。

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