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中国アイドルグループの現状~KPOPグループOnlyOneOfの表現力

2021年05月30日 | エンタメの日記
この数年、中国では毎年「PRODUCE 101」系のオーディション番組が放送され、2018年から現在までに7つのグループがデビューしました。
【中国プデュからデビューした歴代のグループ】
2018年デビュー(活動期間終了)
iQiyi「偶像練習生」→9人組男子グループ「NINE PERCENT」デビュー。センター:蔡徐坤。
テンセントビデオ「創造営101」→11人組女子グループ「火箭少女」(ロケットガールズ)デビュー。センター:孟美岐。

2019年デビュー(活動期間終了)
iQiyi「青春有你1」→9人組男子グループ「UNINE」デビュー。センター:李汶翰。
テンセントビデオ「創造営2019」→11人組男子グループ「R1SE」デビュー。センター:周震南。

2020年デビュー(活動中)
iQIYI「青春有你2」→9人組ガールズグループ「THE9」デビュー。センター;劉雨昕。
テンセントビデオ「創造営2020」→7人組女子グループ「硬糖少女303」(BonBon Girls 303)センター:希林娜依・高

2021年デビュー(活動中)
テンセントビデオ「創造営2021」→11人組男子グループ「INTO1」デビュー。活動中。
iQiyi「青春有你3」 決勝直前に番組終了となり、デビューグループはなし。

歴代の“中国プデュ”(101系オーディション)の中で最も成功したのは2018年の「偶像練習生」と「創造営101」です。
「偶像練習生」からは、圧倒的な人気でセンターデビューした蔡徐坤(ツァイ・シュークン)をはじめ、黄明昊(ジャスティン)、范丞丞(ファン・ビンビンの弟)、RAPの小鬼(王琳凱)などを出しています。
「創造営101」は楊超越(ヤン・チャオユエ)、呉宣儀(宇宙少女のソニ)らが女優・タレントとして活躍しています。
中国に「101系」が上陸した2018年にいきなり大成功したため、その後もコンスタントに開催されることになりました。

しかしながら、101系からデビューしたグループが何らかの代表作を残せているかというと微妙です。ロケットガールズは「カロリー」という曲を大ヒットさせましたがコミックソングに近く、POPミュージックとしては評価しがたいです。
これらの期間限定グループは、曲が良くても悪くても一定の活動の場が確保されているので、グループとしての作品づくりよりも広告がらみの商業活動に重点が置かれていると感じます。

現在活動中の7人組女子グループ「硬糖少女303」(BonBon Girls 303)SEPHORA(セフォラ)の広告。人数が7名のため全員揃う機会が比較的多いです。


なぜグループとしての作品づくりに重心を置かないかというと、まず、中国のグループアイドルは他にめぼしい競争相手がいないので、楽曲で戦う必要がありません。
男子はTF家族の第二世代「時代少年団」(TNT)、女子はSNH48、AKB48 Team-SHなどがいるものの、コア客層が異なり直接的なライバルにはなりません。
一方、経済成長を続ける中国では、広告界での芸能人のニーズは高く、ブランド広告やイメージキャラクターの活動で十分な収益を上げることができます。

また、現在中国芸能界では韓国人タレントが活動することができないため、中国国内のステージにおいて、韓国アイドルグループとの競争にさらされることがありません
2016年夏頃から「限韓令」の影響で、韓国人タレントやグループは実質的に中国芸能界から締め出されました。
「限韓令」は韓国のTHAAD設置に対する中国当局の反発に起因するものと言われています。これによって、あれだけ人気があった韓国ドラマは中国のテレビや動画サイトで配信されなくなり、KPOPグループのアリーナクラスでのコンサートも開催されなくなりました。
世代的にいうと、まだ中国人メンバーが在籍していた頃のEXO、兵役前で5人が揃っていた時代のBIGBANGは中国でアリーナコンサートを開催していますが、それ以降に出てきたグループ、例えばBTS、BLACK PINK、SEVENTEEN、NCTなどは中国でコンサートを開いていません。NCTには「威神V」という中国人メンバーを中心としたグループがありますが、「威神V」も基本的には中国で活動できていません。個々の中国人メンバーがバラエティに出演するのがやっとだと思います。

このような背景のもと、オーディション番組が進行している間は100名近くの練習生同士が激しい競争を繰り広げるものの、デビューした途端、周りにはライバルとなるグループが特にいないという状態となり、成長が鈍化する現象がみられます。

いまの中国アイドルがKPOPグループの影響を強く受けていることは一目瞭然です。というか、KPOPの影響を受けるのは日本を含めたアジア共通の傾向なのではと思います。「創造営2021」には中国のほか、日本、タイ、ロシア、アメリカなどから練習生が参加しましたが、国籍の異なる彼らの共通言語になっているのがKPOPでした。言葉は通じなくてもともにアイドルを目指し、ともにBLACK PINKのファンである彼らが好きなKPOPのダンスの振り付けを真似てコミュニケーションする姿がたびたび見られました。

そう思うと「KPOPはすごいんだ」と改めて認識しました。
何がすごいかというと、毎年大量のグループがデビューし、客観的に見ると似たり寄ったりではあっても、グループ独自のビジュアルコンセプトを創り出そうと努力し、グループの根幹となる楽曲をリリースし続けているところです。

最近上海阿姐が注目しているKPOPグループは「OnlyOneOf」(オンリー・ワン・オフ)です。



OnlyOneOf(オンリー・ワン・オフ/온리원오브)2019年5月28日デビュー  
所属事務所:RSVP→8D Creative→8D Entertainment 「IZ*ONE 姜恵元(カン・ヒョウォン)の弟グループ」というふれこみでデビュー。
メンバー:Love(リーダー)、KB、Rie、Yoojung、Junji、Mill、Nineの7名
プロフィール:日本語オフィシャルサイト https://onlyoneofofficial.jp/profiles
2019年5月28日にミニアルバム「dot point jump」をリリースしてデビュー。
これまでに、約8枚のミニアルバム/EPをリリース。

デビューミニアルバムの「dot point jump」に収録されている「Savanna」(サヴァナ)を活動曲として、2019年5月末から各種の音楽番組に出演しました。
ところが、この「Savanna」というデビュー曲が「これがボーイズアイドルグループの曲なの?」と戸惑うほどアーティスティックな楽曲です。
ミディアムテンポの曲調は、派手なダンスパフォーマンスにはどう考えても向いていません。
その後も、「sage」「dOra maar」「angel」「a sOng Of ice& fire」(韓国のカリスマユニットGroovyRoomが楽曲提供)などハイクオリティな楽曲をリリースし、音楽番組にもひととおり出演し、彼らのコンセプトである“アートなPOPS”、“コールドセクシー”を表現してきました。
ダンスも上手いし、すべての楽曲のクオリティが高く、ルックス、パフォーマンスも十分なレベルにあります。
しかしながら、コロナの影響もあり、いまいひとつ売れていませんでした。
中国では「全然売れてないけど、ものすごく楽曲がいいKPOPグループ」としてOnlyOneOfは密かにファンに見守られていましたが、今年の4月になって風向きが変わりました。
2021年4月にリリースした「libidO」(リビドー)でOnlyOneOfが売れてきたのです。
「libidO」はこれまでよりも衣装、ダンスの振付がよりアーティスティックというか前衛的に尖ったものになっています。
MVとステージパフォーマンスは同性に向けられたリビドー(性的衝動)を表現しており、BLテイストでにわかに注目を集めました。
[MV] OnlyOneOf 「libidO」


[OnlyOneOf - libidO] カムバックステージ M COUNTDOWN 2020年4月8日


煽情的なパフォーマンスでやや度肝を抜かれますが、リビドー(性的衝動)というものは、詰まるところ自分自身に向けられるものと解釈し、それを同性に対する欲求に置き換えて表現するという哲学的な含みがあります。
「libidO」をきっかけに、「BLパフォーマンスをするコンセプトアイドル」としてにわかに注目を集めましたが、OnlyOneOfは「libidO」をリリースする前から、しっかりした楽曲を発表しています。決して色ものグループではありません。
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