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公開待ちの中国“2020年正月映画”~東京が舞台の『僕はチャイナタウンの名探偵3』(唐人街探案3)、TikTok(抖音)で公開された『囧妈』

2020年06月04日 | エンタメの日記
中国では1月下旬から2月末まで、大半の地域で外出規制措置が取られていましたが、3月半ばからは通常の生活に戻りつつあります。
4月に入ってからは、閉鎖されていた公園、美術館、動物園、博物館なども実名予約制を導入して順次再開されました。
ただし、6月に入っても映画館は再開されていません。
中国全土の映画館が休業状態に入ったのは、1月24日頃です。
1月23日に武漢が都市封鎖され、旧正月連休に入ると同時に、全国の映画館が休業になりました。それから4か月以上、映画館の休業が続いています。

飲食店やショッピングモールはすでに本来の営業時間に戻り、スポーツジム、プール等の公共施設も実名予約制で再開しており、5月上旬にはカラオケ店も再開しました。
ところが、映画館は再開の噂が何度も流れながら、なかなか再開しません。
チケットの実名制販売、検温などは簡単に対応できるはずです。しかし、あまりにも長い間休業していたので、どこからやり直したらいいのかよく分からない状態になっています。

4か月以上に及ぶ休業期間中に、お正月(旧正月)、バレンタイン、ゴールデンウィークといういくつもの「劇場映画の稼ぎどき」が過ぎ去っていきました。
特に正月(旧正月)は長期連休となるため、大作アクション映画、賑やかなコメディなど様々な新作がラインナップされます。
大作揃いの正月映画のラインナップの中でも、特に注目度の高い作品は『唐人街探案3』です。

『唐人街探案3』(DETECTIVE CHINATOWN)日本語タイトル『僕はチャイナタウンの名探偵3』
監督:陳思誠 主演:王宝強(Wang Baoqiang/ワン・バオチャン)と劉昊然(Liu Haoran/リウ・ハオラン)
  

人気俳優の王宝強(Wang Baoqiang)と劉昊然(Liu Haoran)がコンビを組むシリーズもの第3作です。
異国のチャイナタウンを舞台に、王宝強と劉昊然が事件の謎を追う推理アクションコメディです。第3作の舞台は東京です
第1作は2015年に公開され、当時まだ高校生だった劉昊然が大ブレイクしました
劉昊然(Liu Haoran/リウ・ハオラン)1997年生まれ。身長185cm。高校生のときに出演した映画『北京愛情故事』や『唐人街探案』で多くの新人賞を受賞。その後、映画を中心に活躍。ドラマ『琅琊榜2』にも出演。


『唐人街探案』シリーズには、第2作より妻夫木聡もメインキャストで出演しています。『唐人街探案3』は舞台が東京ということもあり、妻夫木聡の他に、長澤まさみ、浅野忠信なども配役されています。
左から:妻夫木聡、劉昊然、王宝強、長澤まさみ


『唐人街探案3』は2019年の夏から秋にかけて、賑やかな東京都内で撮影された作品です。この映画を見て「東京に行ってみたい」と思う人もいるはずです。映画の世界と現実のギャップがもう少し縮まってからでなければ、公開に踏み切れないのではと思います。

他にもお正月には様々なジャンルの大作映画がラインナップされていました。

『奪冠』(別名:中国女排)監督:ピーター・チャン(陳可辛)主演:巩俐(コン・リー)、黄渤、呉剛


中国女子バレーボールの名選手、後にコーチとなる郎平(ランピン)を中心に、中国女子バレーの隆盛と低迷、復活を描いた作品。
懐古的なテーマの作品ですが、最先端撮影器材を導入した美しいカメラワークが期待できます。

『緊急救援』(The Rescue)監督:林超賢(ダンテ・ラム)主演:彭于晏(エディ・ポン)

クライシスもの、警察・軍事アクション系のヒット作を立て続けに出している監督の作品です。2年前に公開された同監督作品の『紅海行動』(レッド・シー・オペレーション)はその年の正月映画のダークホースとなりました。

なお、劇場公開を取りやめて、アプリ配信公開に切り替えた作品もあります

『囧妈』(Lost in Russia) 監督:徐峥、主演:徐峥、黄梅莹、袁泉


囧シリーズの第3作です。どこかを旅をして家に帰ってくるというのが毎回のパターンで、今回の行き先はモスクワです。ロードムービー、コメディ、家族の絆と葛藤の人間ドラマをベースとする作品です。

本来、他の正月映画と同様に、旧正月である2020年1月25日に全国劇場公開されるはずでした。しかし、コロナウィルス流行など諸々の事情を考慮して、劇場公開を取りやめて、TikTok (ティックトック)などのアプリを運営するバイトダンス社(中国名:字節跳動)に公開権利を授権許諾しました。
劇場公開されるはずだった1月25日に、「抖音」(中国TikTok)などのアプリで無料配信されました。

映画『囧妈』の制作側は、旧正月の公開を逃すと収益回収が難しいと判断したため、急遽TikTokに公開権利を許諾したのではと言われています。
TikTok側(バイトダンス社)は、版権購入費として6.3億元(約100億円)を支払ったと公表されています。これと同時に、映画制作側は、映画配給会社との契約を終止しました。
参考:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1656588707335614677&wfr=spider&for=pc

視聴者は、話題の新作映画を無料で視聴できるという恩恵を受けました。
映画『囧妈』制作側は、ミニマム・ギャランティとして6.3億元(約100億円)を獲得し、投資回収することができました。
TikTok(バイトダンス社)はというと、無料公開である以上、6.3億元(約100億円)もの金額を広告収入のみで回収できるとは思えません。
しかし、ユーザー囲い込み競争の攻防のためには、TikTokにとっても、こういった話題性とコンテンツを投入する意義はあったと考えられます。
TikTokは海外市場では相対的に高いシェアを確保していますが、中国本土では強力なライバルがいます。ライバルは「快手」(海外では「Kwai」)というアプリで、ショート動画アプリの巨頭二社としてシェアを争っています。
なお、TikTokは日本市場での普及に成功しましたが、「快手」(Kwai)はどちらかというと韓国市場に力を入れています。

その他にも、本来バレンタインに合わせて公開するはずだった恋愛ものや、中国国産3Dアニメ、ジャッキー・チェンの映画など、大量の作品が公開待ちになっています
また、海外映画の場合は、米国、日本など本国での公開が延期されているために公開できないケースもあります。
ディズニー実写版「ムーラン」は春季公開の予定でしたが延期となっています。


いずれも膨大な金額の制作費を投じて作られた映画です。
映画館が再開されても、座席の間隔を空けたり、使用スクリーンを制限するなど、政府の厳しい感染対策要求を満たすことを前提とすると、爆発的な興行成績は期待できません。莫大な制作費を投じた制作側は、この時期に公開することを躊躇すると思われます。
『唐人街探案3』(僕はチャイナタウンの名探偵3)などの有力作品は、10月の国慶節連休まで延期するか、もしくは来年の旧正月まで延期する可能性もあるのではと言われています。

前例のないことなので、どのような方法で劇場公開が再開されるのか、見当がつきません。
映画館は旧作を再上演する形でスタートするのが妥当なように思いますが、果たして旧作を上映してお客さんが入るのでしょうか?
多くの観客が集まることは感染対策上許されず、一方で、客が入らなければ再開しても映画館の採算が取れません。
劇場公開を早々に中止して、配信公開でライセンス料を回収した『囧妈』の例は、映画業界の伝統的なルールには反しますが、賢明な選択だったかもしれません。

【休業中の映画館】建物は古いですが中身はシネコンです。




コメント (6)
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