上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

ダンス系リアリティショー「了不起!舞社」(Great Dance Crew)~威神Vのテンがナビゲーターとしてレギュラー出演

2022年06月24日 | エンタメの日記
中国動画サイトYoukuで配信中の「了不起!舞社」(Great Dance Crew)がまもなく決勝戦を迎えます。「了不起!舞社」は60人の女子ダンサーが参加するダンスリアリティショーです。NCT(WayV)のテンがナビゲーター(主理人)としてレギュラー参加としています。
「了不起!舞社」(Great Dance Crew)配信プラットフォーム:Youku独占配信  放送日:2022年4月16日(土)スタート
ナビゲーター(主理人):王菲菲(元Miss Aのフェイ)、程瀟(宇宙少女 ソンソ)、 李永欽(WayV テン)、賛多(INTO1 サンタ)
クルー長:蘇有朋(アレック・スー)※アレック・スーはダンスを直接指導することはなく、クルー長という立場。


2018年から2021年までの4年間、中国では「PRODUCE 101」フォーマットのアイドルサバイバル番組が毎年開催され大変盛り上がっていました。しかし、昨年2021年5月、投票にて順位を争うオーディション番組は社会に悪影響を及ぼすと当局から明文で批判され、特に課金を伴う視聴者投票によって順位を競い合うような番組は制作できなくなっています。
オーディション番組がなくなったことにより、露出する機会を失ってしまったアイドル候補の子がたくさんいます。「了不起!舞社」は、年齢やルックスにとらわれず、ダンサーとして成長することをテーマにした番組ですが、実際にはアイドル的な可愛いルックスの子が多く参加しています。SNH48からは李佳恩、唐莉佳(GNZ48)、由淼の3名が参加しています。

中国政府当局は芸能やメディアに対する規制を年々強めており、ネット世論も大きな圧力になっています。政府の規制に抵触せず、世論の反発も招くことなく、しかも面白い番組を作るのは容易なことではなく、様々な試行錯誤がなされています。「了不起!舞社」は60人の女子ダンサーがダンスパフォーマンスを競い合いますが、試行錯誤によりルールが途中で変更されたりしています。

この番組のナビゲーターとして、威神V(WayV)のテンがレギュラー出演しています。
テン(TEN)中国名:李永欽 1996年2月27日生まれ タイ人(華僑)、SMエンターテイメント NCT、威神V(WayV)のメンバー。


テンは「タイ華僑の男性歌手・TEN李永欽」として出演しており、番組の中ではNCTはもちろん威神V(WayV)についてもほとんど触れられません。そのため、NCTを知らない人にとっては、この人は誰なんだろう?と思うかもしれません。

威神Vの中国での扱われ方は微妙です。2019年のユニット結成時には、「威神V(WayV)」としてバラエティ番組に出たり、音楽イベントに出演したりもしていました。しかし、2021年以降は「威神V」としてではなく、個々に活動しています。
「了不起!舞社」は威神Vのことを積極的に取り上げることはありませんが、完全にスルーするわけでもなく、5月28日放送回で威神Vの「Take Off」がパフォーマンス曲に使われたときは、テンが飛び入り参加するという場面もありました。

テンは番組内では中国語でコメントしていますが、ときどき英語が混じります。英語は非常に流暢で、タイ語より英語の方が話し慣れているのかもしれません。番組でのファッション、メイクは中国向きにアレンジされており、韓国活動時とは違ったテンの姿を見ることができます。


6月18日放送回では同じくナビゲーターを務める宇宙少女のソンソ(程瀟/チェンシャオ)と裸足での中国民族舞踊を取り入れたパフォーマンスを披露。曲は映画「チャイニーズ・ゴースト・ストリー」の挿入歌。ソンソは「宇宙少女」の中国人メンバーですが、2018年以降活動の場を中国に移しており、今後韓国でのグループ活動に復帰する可能性は低いと思います。


この番組には、賛多(サンタ)という日本人ダンサーもナビゲーターとして参加しています。
賛多(サンタ)は2021年春に開催されたオーディション番組「創造営2021」(PRODUCE 101フォーマットの中国版)に参加し、最終順位2位グループデビューを果たしました。現在INTO1のメンバーとして中国で芸能活動をしています。
サンタ(SANTA)本名:宇野賛多 1998年生まれ 名古屋市出身 身長181cm ストリートダンスの世界大会で何度も優勝した経験を持つ。INTO1のメンバー。2021年から中国で芸能活動中。


6月18日放送回のナビゲーターパフォーマンスでは、賛多は王菲菲(元Miss Aのフェイ)と組んで「一生所愛」(映画「大話西遊」のテーマソング)をアレンジしたパフォーマンスを披露。賛多はストリートダンスという一種のソロ競技の世界で踊ってきたので、振付や即興のスキルも高く、創作性があります。


賛多もTENも、この種の中国バラエティ番組にナビゲーターという立場で出演するのは初めてです。4人のナビゲーターのうち外国人を2人も起用したのは、かなり冒険的な試みです。ナビゲーターの主な役割は参加者のパフォーマンスを審査し、ダンスに関するコメントをすることですが、すべて中国語で対応しなければなりません。
二人の中国語レベルは同じくらいですが、文法、発音はテンの方がナチュラルかもしれません。
ただし、賛多は多少無理をしてでも自分が言いたいことを伝えようとするタイプで、よくも悪くもそれが個性となっています。
テンは自分の語学力のキャパをオーバーすることなく、温厚なコメントをすることが多いです。爆弾発言をしたり、地雷を踏んだりすることはないので安心して見ていられますが、審査する立場としてはちょっと優しすぎるかなという気もします。
二人とも言葉の壁があり、コメンテーターを務めるのはやや荷が重いとはいえ、それを補うに十分なダンススキルがあります。
サンタは多様なダンステクニックを持ち、長身ながら柔軟性が高く、ステージを支配する度量の大きさと独創性があります。
テンはどんなジャンルのダンスでもテンが踊ると上品に見えて清潔感があります。

「了不起!舞社」(Great Dance Crew)は中国配信大手Youkuが新しく始めたWebバラエティ番組です。この番組とは別に、Youkuには「这!就是街舞」(Street Dance of China )というストリートダンス系の看板番組があり、まもなく「这就是街舞」のSeason5が始まります。
Season5のレギュラーゲストには、ハンギョン(韓庚)、王一博(ワン・イーボー)、劉雨昕(リウ・ユーシン)、李承鉉(イ・スンヒョン)が内定しています。同じ配信プラットフォームが制作する番組なので、テンやサンタも「这!就是街舞」Season5にゲスト出演することが期待されますが、テンの場合は韓国に戻ってしまうと、コロナ水際対策が続く中国に再度入国することは難しいかもしれません。
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メタバース化する中国エンタメ~SNH48の「META48」、3D VRアイドル「A-SOUL」

2022年06月19日 | エンタメの日記
上海はロックダウンが解除されましたが、エンタメの再開は目処が立っていません。
コロナ流行以来、厳しい規制を受けながらもどうにか継続してきたミュージカル、演劇、舞踊なども劇場自体が休業となっており、再開されるのは8月以降になるのではと言われています。夏の音楽フェスも今年は上海ではできないと思います。
また、毎年7月末には上海で中国最大のゲームショー「China Joy」が開催されていますが、2022年度はオフラインでの開催はないことを主催者がすでに発表しています。その代わり、オンラインにて「CJ Plus」を MetaJoy 元宇宙数字世界(メタバースデジタルワールド)にて開催するそうです(2022年8月27日~9月2日)。

オミクロン株の蔓延拡大により、深セン、上海、北京などの大都市が都市封鎖を行い、エンタメやイベントが次々と中止になり大きな打撃を受けています。これを打開する方策として、エンタメのバーチャル(VR)化やメタバース展開が流行っています

“中国最大のアイドルグループ”SNH48は今年10周年を迎えるにあたり、「今後はアイドルとファンとの交流をメタバースで展開していく」と宣言し、社名も「META48 HOLDINGS LTD」(「美踏控股」)に変更する と発表しました。


SNH48は「AKBの上海姉妹グループ」として2012年に発足しましたが、2016年にAKBから離脱し、それ以降は中国会社が独自運営しています。上海(SNH48)、広州(GNZ48)、北京(BEJ48)、重慶(CKG48)にグループを設置しています。
AKBのコンセプトに基づき、常設劇場での定期公演、握手会などを通じて「会いに行けるアイドル」として活動してきたSNH48ですが、ゼロコロナ政策のため常に劇場が閉鎖されるリスクがあり、従来のスタイルを貫くことは極めて難しくなっています。
さらに、中国当局は、ファンがアイドルを応援するために大量の金銭を投じることを厳しく取り締まっており、大きな声で「総選挙」を宣伝することもできなくなってきました。公演、握手会、総選挙というこれまでの枠組みが成立しなくなっています。
そのため、SNH48グループは、メンバーとファンとのバーチャル空間での交流を強化し、さらに新たなバーチャルアイドルをファンとともに育成していく・・・という事業プランを発表をしました。

「メタバース」(中国語:元宇宙)というキーワードが使われていますが、実質的には「オンライン」と大差ないのではと思います。
「オンライン」という言葉にはもう新鮮味がないので、「メタバース」といっているだけのような気もします。
一方、ファンがメタバース化やバーチャル化を望んでいるのかというと、なんとも言えません。物理的に現場に来ることができないファンにとっては楽になるのかもしれません。

もともとバーチャルとしてスタートするVtuber、VRアイドルもすでに大量に在します。
中国のサブカルに強い動画プラットフォーム「bilibili動画」では、Vtuber、VRアイドルのアカウントが3000以上あると言われています。
その中でも、短期間でファン獲得に成功し、高い技術力を誇るのが3DのVRアイドルA-SOUL」です。
「A-SOUL」は2020年11月に「芸能事務所楽華(YUEHUA)がプロデュースする初のバーチャルアイドルグループ」としてデビューしました


「A-SOUL」のメンバーはAva(向晩)、Bella(貝拉)、Carol(珈楽)、Diana(嘉然)、Eileen(乃琳)の5人で、それぞれに細かいキャラクター設定があります。一番左のDiana(嘉然)が圧倒的に人気があります。ビジュアル、キャラが特に可愛いです。一番動きがナチュラルなのはBella(貝拉)と言われています。

楽華娯楽(YUEHUA ENTERTAINMENT)は中国の大手芸能事務所で、ハンギョン(韓庚)、王一博(ワン・イーボー)、黄明昊(ジャスティン)など多数のアイドルが所属しています。韓国支社(ウィエファ)では宇宙少女、EVERGLOW等をプロデュースしています。

Vtuberは2Dと3Dでコストが大きく異なり、3D化すると器材やソフトウェアにかかるコストが桁違いに上がります。
A-SOULを手掛ける「杭州看潮信息諮詢有限公司」はバイトダンスの孫会社なので、A-SOULの実質的な出資者はバイトダンスと認識されています。バイトダンスはTikTokの親会社で、中国IT巨頭の一つです。

A-SOULはデビューしてから瞬く間に人気を獲得しました。
5人組のアイドルグループとして楽曲も定期的にリリースしていますが、曲がいいから売れたというわけでもないです。熱狂的なファンを短期間で獲得できたのは、A-SOULがファンとリアルに交流できるVRアイドルだったからです。

2021年7月に開催されたアニメ・ゲームイベント「BILIBILI WORLD」に「A-SOUL」のブースがあり、ファン交流イベントが開催されていました。
イベントを見たとき、「一体どんな技術を使えばこんなことができるのだ」と衝撃を受けました。
3DのVRアイドルがリアルタイムに動き、滑らかにファンにレスポンスを返しています。さらに、5人のメンバーが互いに人間と同じように触れ合っています。
指先に至るまで動きがリアルで、人間らしく振り付けを間違えたりしますが、そのビジュアルはバーチャルならではの可愛らしさです。






イベントのスクリーンに現れたA-SOULのメンバーは、ファンとリアルタイムに交流していますが、私たちが見えないどこかで、3D VR用の黒い全身装着型スーツを身にまとい、素顔を決して見せることのない「中の人」がA-SOULを演じているのです。
Vtuberには声を担当する「中の人」がいるものですが、A-SOULはグループアイドルという設定なので、ダンスや歌もこなさなくてはなりません。

飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきたA-SOULですが、公式は5月10日にメンバーの一人、CAROL(珈楽)が活動を休止すると発表しました。休止する原因は、CAROLの声や動作を担当する「中の人」の健康及び学業上の問題だと説明がありました。
つまり、CAROLの「中の人」との契約を続けられなくなったため、CAROLの「中の人」を交代するのではなく、CAROL自体を休止することにしたのです。突然の発表ではありましたが、公式はCAROLを円満に「卒業」させようとしていました。

ところが、これに対してファンが猛烈に反発しました。
反発を煽ったのは、ネット上に流布された「CAROLの「中の人」が辞めたのは、新卒社員よりも安い賃金で酷使されて体調を崩し、スタッフから十分なケアも受けられなかったから」という"暴露”情報でした。この情報の真偽は明らかではないものの、バイトダンスの関係者と名乗る人物が流布したこと、CAROLの中の人のアカウントとされるSNSが暴露され、そこに体調不良を訴える書き込みがあったことで火がつきました。

公式はもちろんこの暴露情報を否定しましたが、報酬に関して具体的な金額を公表することはできなかったため、ファンの怒りを鎮めることができませんでした。

3DのVRアイドルであるA-SOULを運営するために、立上げ時には300名のスタッフが稼働しており、立上げ後も裏方で支えるスタッフが200名いると言われています。
プロジェクト運営側にとっては、声や動作を担う「中の人」はプロジェクトメンバーの一人に過ぎません。プロジェクト全体をみれば、「中の人」よりももっと重要なタスクを担うエンジニアもいるはずです。
しかし、A-SOULをアイドルとして応援しているファンにとっては、感情移入する対象はエンジニアではなく、あくまで声や動作を演じる「中の人」である女の子だったのです。
「中の人」が代わりがきかない存在なのであれば、VRアイドルであれど、生身のアイドルと変わらないのではないでしょうか。
人間が感情移入するのは結局人間なのかもしれません。
ファンはA-SOULの高度な技術に魅了されましたが、技術を第一に考える人間は、VRアイドルを応援する側ではなく、作る側になるのかもしれません。
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2022年第25回上海国際映画祭、“来年に延期”~映画「花束みたいな恋をした」中国でヒット

2022年06月08日 | エンタメの日記
約2ヶ月間続いた上海のロックダウンは6月1日にほぼ解除されました。6月1日に再開したのは交通機関、病院、スーパー、飲食店(主にテイクアウト)、宅配便、理髪店、スポーツ施設などです。劇場や映画館は全面休業が続いており、いつ営業再開するのかまだ告知されていません。

上海では毎年6月に「上海国際映画祭」が開催されていますが、先日「2022年6月に予定されていた第25回上海国際映画祭を来年に延期する」と発表がありました。
毎年開催されるイベントなのに「来年に延期する」という不自然な表現が用いられたため、「要するに中止なのになぜ中止と言わないのか?」「来年2年分やるつもりなのか?」と波紋を呼んでいます。上海映画祭が中止されるのは、SARSが流行した2003年以来だそうです。


コロナが世界的に流行しはじめた2020年の上海映画祭は、観客数を30%に制限し、約1ヶ半月遅れで7月下旬に開幕しました(過去記事)。
翌年、2021年は海外ゲストは呼べなかったものの、客席100%使用に戻し、上映本数も本来の規模で開催されました。「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」「劇場版るろうに剣心最終章」などの新作が日本とほぼ同時に上映されました。
コロナをかいくぐってきた上海映画祭も、2022年になってついに中止となりました。世界的にはコロナ対策規制が解除される傾向にありますが、中国は逆行する状況にあります。

日本映画は昔から上海映画祭に力を入れており、日本映画は上海映画祭の目玉です。多くの新作日本映画が上海映画祭で先行上映され、日本国内でも滅多に上映されないような旧作も多く上映されます。2021年の第24回上海映画祭では「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」がDolbyシアターを使ってワールドプレミアムとして世界初上映されました。
中国で映画を劇場公開するためには中国当局のセンサーシップに通過する必要がありますが、「映画祭」の枠で申請するとセンサーシップに通りやすいと言われており、このことも日本側が上海映画祭を重視する一因と思われます。

中国映画市場は中国映画のシェアが圧倒的に高く、中国映画に対抗しうるのがハリウッド大作、MARVEL作品、ディズニー等の3Dアニメです。
日本映画の場合、やはりアニメが強く、名探偵コナン、ポケモン、ONE PIECE、ドラえもんなどのメジャータイトルの劇場版は、かなり中国にも入ってきています。
日本実写映画はアニメに比べて存在感が薄いと言わざるを得ませんが、2022年2月に菅田将暉、有村架純主演の「花束みたいな恋をした」が中国で公開され、日本映画としては大ヒットしました。

「花束みたいな恋をした」 日本公開2021年1月29日 主演:菅田将暉、有村架純
中国タイトル「花束般的恋爱」(花束般的恋愛) 中国公開2022年2月22日


“2”は中国語の語呂では「愛」を表し、“2”が並ぶ2022年2月22日にこの映画が公開されたのは特別な意味があります。
とはいえ、実際には、2月下旬は中国各地でコロナ感染者数が増加傾向にあり、2月22日だから何か特別なことをしようという雰囲気でもなかったのですが、「花束みたいな恋をした」は大きな反響がありました。
特に都市部に暮らす20代の若い女性社会人からの反響が大きく、レビューサイトで高い口コミ評価がつきました。恋愛のあり方について自身と重ね合わせた深いコメントが多く、主人公と同年代の男女が真正面からこの映画を受け止めていました。
「花束みたいな恋をした」に出てくる様々なサブカルネタが中国人に分かるのかな?と思ったのですが、押井守が本人役で登場するシーンで客席から「おお~」と唸り声が上がったので、観客の多くは日本カルチャーに対する見識が深く、ネタをかなり理解できているようです。

「花束みたいな恋をした」の中国興業収入は、2022年6月7日の時点で9545.8万元、現レートで換算すると約18.6億円になります。
この数字は当初の予測を大幅に上回っており、日本実写映画としては大成功です。




このポスターは、上映期間が6月21日まで延長されたことを宣伝するものですが、
「中国正規上映された日本実写映画ラブストーリー作品興業収入TOP1」
「中国正規上映された日本実写映画総合興業収入TOP2」
と書かれています。
「花束みたいな恋をした」は中国で正規劇場公開された日本実写映画として歴代2位の興業収入を記録したのです。
1位は2018年8月に公開された「万引き家族」の9674.6万元です。つまり、1位との差はごく僅かです。
もし「花束みたいな恋をした」の中国公開時期がオミクロン株の流行と重ならなければ、興業収入はもっと伸びたはずです。
とはいえ、上海、北京が本格的にロックダウンする前に公開できたので、ギリギリセーフだったとも思います。

この数年、中国の映画館では「貸切上映」が流行っています。
中国の映画館は基本的にすべてシネコンなのですが、個人でも割と簡単にスクリーンを貸切ることができます。映画チケットアプリに貸切上映を申請する機能もあります。
「花束みたいな恋をした」も貸切上映が多数行われていました。貸切上映を主宰するのは菅田将暉のファンサイトであったり、映画鑑賞サークルであったりと様々です。貸切上映の規模が大きくなると、企業がスポンサーにつくこともあります。

2022年4月以降、中国ではオミクロン株拡大の影響を受けて、ほとんどの新作映画が公開延期となっています。
5月のゴールディンウィーク、6月1日国際こどもの日、6月3日端午節連休などに合わせて多数の新作がラインナップされていたのですが、上海、北京などで映画館が全面休業となったため、多くの作品が公開を見合わせました。
中国映画は莫大な資金を投じて制作されるため、投資を回収するためには全国の映画館がマックスで稼働する時期に公開を合わせる必要があります。
そんな中、「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」が5月28日に中国で公開され、好成績を上げています。


「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」は北京と上海の映画館が完全休業する中、公開に踏み切りました。(北京は5月29日から一部の映画館で営業再開)
同じ時期に公開された作品が少なかったため、「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」は6月1日の子どもの日(国際こどもの日)の単日興行収入がトップとなりました。これは快挙です。映画レビューサイトでの評価スコアも高く、レビューサイトにコメントを書くのはもちろん大人の観客なのですが、非常に高い満足度を表すコメントが多く寄せられています。

昨年2021年10月29日には映画「おくりびと」が中国で再公開され、興業収入6622億元(現レートで約13億円)を記録しました。
「おくりびと」も、コロナの影響で他の中国映画が公開を渋り、映画館で流す作品が不足していた時期にちょうど上手く当てはまりました。
その少し前には岩井俊二の「ラブレター」も中国で再上映されており、「おくりびと」と同じ水準の興業収入を上げています。
「おくりびと」も「ラブレター」も大分前の作品ですが、豆瓣(ドウバン)など中国のレビューサイトでの口コミ評価が非常に高い作品です。
2021年夏以降、コロナがなかなか収束しない中国の映画館で、いくつかの日本映画が思いのほか好意的に迎えられ、興業的にも健闘したということができます。
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台湾オーディション番組「原子少年」(ATOM BOYZ)~先輩アイドルとのコラボパフォーマンス

2022年05月28日 | エンタメの日記
現在台湾ではボーイズグループオーディション番組「原子少年」(ATOM BOYZ)が放送されています。コロナ感染拡大により収録を継続できるか心配されていましたが、現時点では中断することなく放送されています。「原子少年」(ATOM BOYZ)にはアイドルを目指す男子総勢80名が参加していますが、いわゆる「PRODUCE 101」系のフォーマットとはルールがかなり異なります。80名の参加者はあらかじめ8つのグループ(太陽系の惑星)に分けられており、グループごとにパフォーマンスを競っています。
過去記事:台湾ボーイズアイドルオーディション番組「原子少年」(ATOM BOYZ)放送スタート

グループごとの初回公演を終え、2回目公演では台湾の先輩アイドルとのコラボパフォーマンスが行われました。
コラボパフォーマンスのゲストとして、2000年代の台湾芸能界で大活躍した先輩アイドルが続々と登場し、C-POPファンには懐かしいステージとなりました。

まず、火星(MARS)とコラボしたのは元Energyの坤達(謝坤達)です。
「Energy」は2002年にデビューした台湾HIP&HOPアイドルグループです。5人組としてデビューし、2009年に活動を休止するまでに通算8枚のアルバムをリリースしました。「原子少年」に審査員として出演している坤達(クンダー)はRAP・ダンス担当で、ソロになってからは俳優、司会者として活動しています。坤達は、40歳になったいまでもアイドルとして通用しそうなルックスです。

火星(MARS)と坤達のコラボパフォーマンス 曲「放手」(2004年発行のEnergy「4EVER」収録曲)


Energyがデビューしたのはかれこれ20年前の話になりますが、当時台湾では大変な人気がありました。
Energy 3rdアルバム「E3」2003年10月22日発売 このアルバムを最後にメンバーのToroがEnergyを脱退。Toroは当時一番人気でした


木星(JUPITER)とEllaのコラボパフォーマンス 曲「來個蹦蹦」玖壹壹(Nine One One)feat.Ella(陳嘉樺)



180cm以上の長身の参加者を集めたグループ「木星」は、番組のメイン司会兼審査員であるS.H.EのEllaとコラボしました。
Ella(陳嘉樺)は台湾ガールズグループ「S.H.E」のメンバーで、台湾ドラマ版「花ざかりの君たちへ~花様少年少女~ 」ではボーイッシュな容姿を活かして主役を演じたこともあります。グループ活動休止後はソロで幅広く芸能活動をしています。元々トークは上手かったですが、結婚・出産を経て大人の女性タレントとしての安定感が増し、司会やコメンテーターとしても活躍しています。

S.H.Eは台湾の3人組ガールズグループで、中華圏を席巻するスーパーアイドルでした。2001年にデビューしてから2010年に活動休止するまで、実質約8年の間に数々のヒット曲を生み出しました。セリーナ(Selina)、ヒビ(Hebe)、エラ(Ella)というタイプの異なる3人のメンバーは親近感のあるキャラクターでファンの共感を集めました。S.H.Eファンの多くが女の子で、S.H.Eのメンバー3人の友情に憧れたものでした。
また、所属レコード会社「華研国際音樂」からリリースされる楽曲は非常にクオリティが高く、ライブも華やかで見応えがあり、2000年代において「アジアで最も売れたガールズグループ」でした。
2007年リリースのアルバム「Play」


地球(EARTH)とJPMのコラボパフォーマンス 曲「那不是雪中紅」JPMアルバム「月球漫歩」収録曲(2011年リリース)



JPMは小傑、王子、毛弟の3名からなるグループで「原子少年」のコラボステージをきっかけに6年ぶりに再集合しました。
JPMの3人は、台湾Channel [V] で放送されていたスター養成バラエティ番組「模范棒棒堂」から出てきたタレントで、小傑(シャオジエ)と王子(プリンス)は「Lollipop棒棒堂」(ロリポップ)のメンバーでした。「模范棒棒堂」は2006年から2009年まで放送された人気番組で、ボーイズグループ「Lollipop棒棒堂」を生み出した「第一代」は特に人気がありました。Lollipop棒棒堂はバラエティアイドルでしたが、楽曲もなかなか良かったです。また、楽曲の制作に参加しているメンバーもいました。グループの中でも人気の高かった敖犬(荘濠全)、王子(邱勝翊)はドラマにも多数出演しています。

Lollipop棒棒堂(ロリポップ)1stアルバム「哪裡怕」 2007年12月28日リリース 番組人気に押されて一世を風靡しました。


水星(MERCURY)と鬼鬼(呉映潔)のコラボパフォーマンス 曲「SUGER RUSH」 鬼鬼(呉映潔)



鬼鬼(グイグイ/呉映潔/ウー・インジェ)は、台湾アイドルグループ「黒Girl」のメンバーでした。「黒Girl」は「Lollipop棒棒堂」の女子版で、台湾Channel [V] で放送されていたバラエティ「我愛黑澀會」から出てきたアイドルです。若い出演者たちの忌憚のないトークが炸裂する番組で非常に人気がありました。同じテレビ局の番組から生まれたグループとして「Lollipop棒棒堂」と「黒Girl」は兄妹グループのような存在でした。

鬼鬼は「黒Girl」の中でも人気メンバーで、ソロになった後は、本名の呉映潔(ウー・インジェ)で韓国でも活動しています。
2013年に放送された「私たち結婚しました 世界版」で2PMテギョンの仮想妻として番組に参加したこともあります。

EP「我愛黑澀會美眉」2006年リリース 9名で活動していた初期のEP。


金星(VENUS)と愛紗のコラボパフォーマンス 曲「喇舌」大嘴巴(Da Mouth) 2010年リリースのアルバム「万凸3」収録曲



愛紗(アイサ)は台湾HIPHOPグループ「大嘴巴」(Da Mouth)のボーカルです。大嘴巴は2007年にデビューし、女性ボーカル1名に男性3名(ボーカル、RAP、DJ)というユニークな構成のグループで、台湾で非常に成功したグループです。
愛紗(アイサ)は日本人ですが、大嘴巴(Da Mouth)の女性メインボーカルとして流暢な中国語で歌っています。

1stアルバム「大嘴巴」(Da Mouth)


オーディション番組「原子少年」で久しぶりに舞台に立った先輩アイドルたちのパフォーマンスは、いまでも十分に輝きがあると同時に切なくもあります。
S.H.E、Energy、ロリポップ、黒Girl、大嘴巴・・・当時の台湾芸能、C-POPに親しみのある人間にとっては、ただただ懐かしい存在です。勢いに溢れていた頃の台湾芸能のさまざまなシーンが思い起こされます。
台湾芸能界が最も華やかで勢いがあったのは2000年から2010年頃までなのではと思います。
「流星花園」のF4、ジョセフ・チェン、ジェイ・チョウ、ジョリーン(蔡依林)、ショウ・ルオ、五月天(メイデイ)、バービィー・スー(大S)、小S・・・。台湾の人口は約2300万人にもかかわらず、あらゆるジャンルのタレントがひしめいていました。
台湾はアジアの中でもオープンな気質だと思います。明るくオープンで、なおかつ細やかさや温かみを持ち合わせた台湾の気風が芸能にも反映されていたと思います。

「原子少年」は先輩アイドルとのコラボパフォーマンスを終え、各グループから人気最下位の1名が淘汰されました。
さらに1名辞退者が出たため、現在の参加人数は71名です。第5週目まで放送されていますが、個人順位は発表されておらず、グループごとに順位を発表するのみです。
ただし、次回から2グループ混合でパフォーマンスを競うことになっており、その結果によって、グループが二つ消えるとされています。ここへきて急に緊迫感が増してきました。
「原子少年」からは最終的に二つの5人組グループがデビューする予定ですが、現在のグループ構成が維持されるのか、それともミックスされるのかはまだ分かりません。
アイドルとしてのポテンシャルが高い林佳辰(リン・ジャーチェン/Summer)、パフォーマンススキルが高く個性もある小孩(何世華/ Kidz)などが注目されていますが、グループとして期待度が高いのは「金星」(VENUS)です。
美の象徴である「金星」は中性的な魅力をグループの特徴としています。台湾はアジア初の同性婚法制化を実現しており、ジェンダーにおいてオープンで改革的な気風があります。
「金星」がそのままデビューできるとは限りませんが、「金星」のようなグループを生み出せるのは台湾だけだろうと言われています。
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TFBOYS王俊凱(ワン・ジュンカイ)主演ドラマ「重生之門」(BE REBORN)~中国アイドルのエリート街道

2022年05月16日 | エンタメの日記
中国ボーイズグループTFBOYSの王俊凱(ワン・ジュンカイ)主演の新作ドラマ「重生之門」(BE REBORN)の放送が始まりました。

中国刑事推理ドラマ「重生之門」 (直訳すると「再生の門」) 英語名:Be Reborn  
2022年4月27日配信開始 全26話 1話約45分 Youku独占配信


あらすじ
主人公・庄文杰(ジュアン・ウェンジエ)が通う青城大学の美術館に収蔵されている名画「睡蓮」が何者かにすり替えられた。
「睡蓮」がすり替えられたことに気付いた庄文杰は、その場で指摘するが信じてもらえない。後に「睡蓮」が本当にすり替えられたことが明らかになると、庄文杰は逆に警察から事件に関与したことを疑われる。警察から疑われたのは、庄文杰の父親が名画の窃盗犯として指名手配されていることが一因でもある。庄文杰は父が残した禍根に振り回されながら、敏腕刑事・羅堅(ルオ・ジェン)とともに事件の黒幕を追う。

主人公の庄文杰を演じるのがTFBOYSの王俊凱(ワン・ジュンカイ)です。
青城大学(※架空の大学。青城のモデルは青島)法学部3年生。寡黙で頭脳明晰、成績優秀な大学生。一人で大学の近くに部屋を借りて住んでいる。絵画に対する造詣が深い。
母親とは幼い頃に死別。父親は骨董・芸術品を専門に狙う盗賊で、名画「洛神」窃盗の主犯として指名手配を受けた後、車ごと川に墜落したまま行方不明となる。





王俊凱(ワン・ジュンカイ)は3人組ボーイズグループ「TFBOYS」のメンバーとしてデビューしました。
王俊凱 1999年9月21日生まれ、重慶出身、2013年8月6日TFBOYSとしてデビュー(リーダー)
現在22歳ですが、昔の面影を残したままイケメンに成長しました。小顔で首が長く、細身のスタイルの持ち主です。身長は176cm前後と思われます。

TFBOYSは日本でいうと10代の頃のKinKi Kidsに近い存在だと思います。少年らしく清潔感のある整ったルックスで、中国では珍しく10代からアイドルとして活躍し、莫大な数のファンから熱狂的に支持されていました。

TFBOYS「青春修練手冊」(青春練習帳)2014年7月24日リリース

中央が王俊凱。当時15歳。リーダーでTFBOYSの「顔」であり、センターが彼の立ち位置だった。
この曲をリリースした頃からTFBOYSの衣装はパステルカラーの制服が多くなり、「少年=学生」という健康的なイメージが確立され人気急上昇。

TFBOYSは現在グループ活動はほぼ行っておらず、王俊凱、王源(ワン・ユエン)、易烊千玺(イーヤンチェンシー/ジャクソン・イー)の3人は大学に進学し、個々に芸能活動を続けています。

王俊凱は昨年北京電影学院を卒業しました。
中国では多くの大学に演劇科、舞踊科、音楽科、アナウンス科などいわゆる芸能向けの学部が設置されています。
数ある演劇系大学の中でもトップに君臨するのが、北京電影学院、中央戯劇学院、上海戯劇学院の三校です。
このトップ3の演劇大学は超難関で、その中でも北京電影学院は特に多くの有名監督、俳優を輩出しており、エリート中のエリートとされています。

中国の競争は激しく、依然として学歴を非常に重視する社会です。そして、自分が応援するアイドルには一点の疵もなく完璧でいてほしいと願うファンが多いです。
10代の頃から注目されてきた王俊凱は、見事名門北京電影学院演劇科に合格し、周囲の期待に応えてエリート街道を歩んでいます。
もちろん、名門大学に進学することは芸能人としてステップの一つであり、ゴールではありません。
今後クオリティの高いドラマに出演し、メインキャストを務める映画をヒットさせ、キャリアを積んでいくことをファンは期待しています。
中国芸能界においては、俳優のステイタスは高く、主演俳優として作品をヒットさせ、さらに俳優として国際的に権威のある賞を受賞するということがキャリアの頂点と思われています。

中国ドラマでは、中国人俳優が演じているのにセリフが吹替えになっていることがよくあります。
国土が広い中国では、標準語の普及に時間がかかったため、言葉に訛りのある役者をカバーするためにアフレコが多用されてきました。
現在では、演技力に不足がある若手・アイドル系俳優の力を補うためにもアフレコが使われており、また、演技力はあるけれど売れっ子でスケジュールが過密すぎるため、時間節約のため他人にアフレコさせるケースもあります。
例えば、ドラマ「陳情令」の主役、肖戦が演じた魏無羡、王一博が演じた藍忘機役は、ともにドラマ専門の声優がアフレコしていますが、あまり違和感はないと思います。

王俊凱はドラマ「重生之門」の主役ですがアフレコを使っています。
蘇尚卿(スー・シャンチン)というドラマ吹替声優がアフレコを担当しており、この声優さんは他の作品でも王俊凱のアフレコをしており、「王俊凱御用達声優」と言われています。
ドラマでアフレコを使うことは決して珍しいことではありませんが、俳優としてのキャリアの頂点は「国際的にメジャーな映画賞を取ること」だとすると、ずっとアフレコを使っているわけにはいきません。一般的にいって、アフレコで出演している俳優に、国際的に権威のある賞が与えられることはないからです。

ただし、王俊凱はアフレコを使わなければならないほど演技が拙いわけではないと言われています。
「本人の声でやらせてあげればいいのに」という声も強いです。
巨額の予算を投じたドラマを失敗させてはいけないので、安全を期してアフレコを使っているのかもしれません。これによって、演技を磨くチャンスが奪われているともいえます。

もう一人の主人公、誠実な敏腕刑事・羅堅(ルオ・ジェン)を演じるのはベテラン俳優の張譯(ジャン・イー)。


張譯(ジャン・イー) 1978年2月17日生まれ ハルビン出身、身長178cm
張譯は中国では非常に有名な俳優で、正義感・責任感の強い実直な人物を演じることが多く、軍人、兵士、警官役などでのアクションも得意としています。
近年は「主旋律映画」と呼ばれる愛国的価値観・歴史観を発揚するための戦争・革命もの映画に多数出演しています。張譯が今後、悪役や反社会的な役を演じることはないのではと思うほど、「主旋律映画」(愛国映画)常連俳優としてのイメージが確立されています。
実力のあるメジャーな俳優ですが、張譯が演じている時点で、ドラマが始まる前から正義の側に立つ人物だと見当がついてしまいます。
有名になればなるほど役の幅が狭まり、作品の面白さや意外性を削ぐ要因にもなります。

ヒロイン・林芷悦(リン・ジーユエ)。主人公と同じ大学の三年生。幼少期から主人公のことを知っており思いを寄せている。
ヒロインを演じる範詩然(ファン・シーラン)は1999年11月23日生まれ、四川省出身、上海戯劇学院卒業、身長164cm。中国ドラマで好まれるタイプの透明感のある可憐なルックスです。


刑事推理ドラマとしての「重生之門」
全26話ですが、6~7話で一つくらいのペースで連続的に事件が発生します。黒幕と主人公の父の生死の謎を突き止めるため、主人公がかなり危険な目に遭います。
「窃盗」をベースとした事件が展開され、絵画や芸術品が多く登場し、映画「007」さながらの高層ビルのワイヤーアクションなどもありスケールの大きなドラマです。また、犯罪の手段として、電子金庫や網膜認証などハイテクが多用されます。
しかし、それらは視聴者の日常とはかけ離れており、推理のとっかかりもなく、感情移入しにくい面があります。
主役を演じる王俊凱は美形でスラリとした体型できれいな容姿をしていますが、表情から感情の起伏が読み取りにくく、共闘する刑事との関係性もやや温かみに欠けます。魅力のある悪役が登場するエピソードは非常に面白く、特に、窃盗団の親玉・丁生火はプロの盗賊の知性と残忍さ、独特の思考回路を持つキャラクターで先の行動が読めません。丁生火を演じるベテラン俳優・田小潔の怪演がドラマ「重生之門」を盛り上げています。
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台湾ボーイズアイドルオーディション番組「原子少年」(ATOM BOYZ)放送スタート

2022年05月14日 | エンタメの日記
参加者80名の台湾ボーイズアイドルオーディション番組「原子少年」(ATOM BOYZ)の放送が4月17日から始まりました。


「原子少年」(ATOM BOYZ)審査員:ELLA(元S.H.E)、坤達(元Energy)、周湯豪、田一德。


放送媒体:TVBS歡樂台/TVBS精采台/LINE TV/YouTube/中視、三立等
2022年4月17日(日)20時~放送開始、1回あたり約1時間40分、全13回、2022年7月中旬終了予定。
参加者:80名。最年少が2006生まれ、最年長が1997年生まれ。
YouTube公式チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCQarhowx2x0qbeB8d4AeUZQ

台湾では「原子少年」の前に「菱格世代DD52」という女子向けオーディション番組を放送しており、G.O.F、PINK FUN、HURの三グループがデビューしています。

「原子少年」(ATOM BOYZ)は5000人以上がカメラテストに参加し、1.2億台湾ドルを投じて制作されたと言われています。
プロジェクトしては2020年にスタートしましたが、コロナの影響で1年も中断してしまいました
参加者は最年少が15歳で、19歳から22歳くらいの子が多いですが、番組に応募した時点ではいまより2歳若かったことになります。

80名の参加者がいますが、最初から水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星という8つのグループに分かれています
第1回のオープニングムービーによると、「宇宙に二つのブラックホールが現れ衝突により太陽系が消滅の危機にさらされている。太陽系を救うためには、8つの惑星から特殊な能力を持つ少年を見つけ出さなければならない・・・」ということで、8つの惑星に10名ずつ分かれています。
EXOのファンからクレームがきそうな設定ですが、放送が始まってみると、この「特殊能力設定」が反映された演出はいまのところ見られません。

各グループ(惑星)にはそれぞれの特徴があります。
地球:親近感あふれる美少年アイドル
水星:平均年齢17歳の明朗快活な少年たち
金星:美の象徴・金星、中性的な魅力
火星:熱くワイルド
木星:全員180cm以上、モデルのようにクール
土星:ダンススキルが高い(練習生・芸能歴が比較的長いメンバーが集まっている)
天王星:HIP&HOP系アイドル
海王星:個性的でエネルギッシュ

「原子少年」(ATOM BOYZ)番組ルールの特徴
いわゆる「PRODUCE101」系のオーディション番組とはかなりルールが異なります。
・第1回目の冒頭でいきなりテーマ曲が披露される。テーマ曲のセンターポジションをめぐるプロセスは番組本編ではなく、番組開始前に動画で簡略的に公開された。
・80名の参加者があらかじめ10名ずつ8グループに分かれている。10名の中から、実際にパフォーマンスに参加できるのは5名のみ。その5名を選ぶのは番組内部のトレーナー。よって、まったくパフォーマンスに参加できないメンバーもいる。
・第2回目公演終了後、各グループの10名のうち、人気最下位が1名ずつ淘汰される。

客観的にみて基本的なダンススキルが高くない参加者も多く、80名の参加者全員がテレビ放送に堪えうるパフォーマンスができるわけではないので、このようなルールにされているものと思います。

台湾の強み
コロナの影響もあるため、審査員を含め台湾ローカルの人材で制作されています。
審査員は全員台湾のベテラン芸能人で、参加者たちに対し非常に優しい姿勢で臨んでいます。韓国のオーディション番組にみられる苛烈な競争や審査員からの辛口のコメントは一切なく、温かい目で見守られています。そこが視聴者にとっては、ちょっと物足りないかもしれません。ですが、制作側は台湾の現状、出演者の力のレベルをよく理解しており、身の丈にあったことを無理なくやっています。

また、中韓のオーディション番組では暗黙の了解として「シナリオ」があり、参加者は自身に与えられた「キャラ設定」を際立たせることで視聴者の注意を惹きつけるという演出がなされていましたが、「原子少年」はそういった意図的な演出はあまりみられません。

4月17日放送の第1回目、翌週の第2回目では、8グループの初回パフォーマンスが披露されました。
水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星という8つのグループがありますが、すべてオリジナル楽曲でした。
番組製作陣が作詞、作曲、アレンジ、振付した、この番組のためのオリジナル楽曲がテーマ曲とは別に8つも用意されていたのです。
どの曲もなかなかクオリティが高く、台湾音楽界の底力を見せています。

韓国や中国のオーディション番組と比べると、ダンス、歌、ルックスのレベルはもちろん、衣装、メイク、照明、舞台装置、カメラワーク等も見劣りがするのは否めないのですが、C-POPの天地・台湾が作るだけあって曲がいいのが「原子少年」の特徴です。

人気メンバー・グループ
人気が高いのは、地球、水星、金星などです。
地球(EARTH) 初回公演曲「全世界暫停」


地球(EARTH)には、一番人気の林佳辰(リン・ジャーチェン)がいます。2000年6月5日生まれ、現在21歳。身長180cm、体重64kg。


中国武術の達人・黄文廷(Tin)、台湾BLドラマ「HIStory3」に出演していた陳廷軒(Kenny)などもいます。

水星(MERCURY)初回公演曲「FREAKY LOVE」

16歳の林毓家、17歳の李秉諭などはダンスの実力者。黄莑茗は歌、ダンスとも安定しておりグループを引っ張る。

金星(VENUS)初回公演曲「怎麼會」

美の象徴金星。金星は「中性的な魅力」が特徴。歌が上手く表現力のあるメンバーが多い。ダンスのレベルも高い。

天王星(URANUS)初回公演曲「KING」

HIP&HOP系の天王星。高雄出身の長身イケメン・蔡承祐が人気。小孩(シャオハイ)は小柄で金髪が似合うやや中性的なルックス。ダンス、RAPともに高く評価され、ステージ慣れしている印象を与えます。

「原子少年」(ATOM BOYZ)に参加している子たちは、みんなK-POPが大好きです。BIGBANG、EXO、BTS等から大きな影響を受けており、現役で活動している男子・女子グループを全般的にフォローしています。
「原子少年」は海外でも通用するアイドルをデビューさせることを目標にしていますが、海外進出できなくても台湾で十分活動の場があると思います。
コロナの影響が続く現在、台湾ローカルで活動するライバルとなる男子アイドルが基本的にいないので、「一日店長」などオフラインの商業コラボなどは相当需要があるのではと思います。
香港で2018年にデビューした「MIRROR」が香港土着のボーイズグループとして成功したことも刺激になっています。MIRRORはソロ活動が多く、俳優活動に重点を置くメンバーも多いのと比べると、「原子少年」は年齢が比較的若いこともあり、よりアイドル的な活動が期待できそうです。

コロナ対策に比較的成功していると言われる台湾でも、「原子少年」の収録は1年も中断され、80名もの芸能を志す若者たちが影響を受けました。
2022年4月にようやく番組の放送が始まったと思えば、台湾でもオミクロン株が大流行し、連日5万人を超える陽性者が出ています。
台湾の芸能ニュースによると、「原子少年」の出演者・関係者からも46名の陽性者が見つかったと言われており、放送を継続できるか心配されています。
現在第4回まで放送されており、第3回、第4回では、各グループが台湾アイドルの先輩たちとコラボステージを披露します。
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画家と警官のアートな刑事バディドラマ『猟罪図鑑』(猎罪图鉴)~檀健次が大ブレイク

2022年04月26日 | エンタメの日記
3月から配信スタートした刑事ドラマ『猟罪図鑑』(猎罪图鉴)をきっかけに、檀健次(タン・ジェンズ)が大ブレイクしています。
10年近く前に「MIC男団」というボーイズグループのメンバーとしてデビューした檀健次は現在31歳。中国はヒット作に恵まれることをきっかけに30歳近くになってブレイクする俳優が少なくありませんが、檀健次もそのケースに該当するといえます。



タイトル:『猟罪図鑑』(猎罪图鉴) 英文名:Under the Skin  全20話(1話約45分)
主演:檀健次(タン・ジェンズ)、金世佳(ジン・シージャー)、秦海璐(チン・ハイルー)
放送媒体:テンセントビデオ、IQIYI(愛奇芸)  放送開始日:2022年3月6日
監督:邢鍵鈞  総監:張暁波
制作:檸萌影業ほか  撮影地:厦門(アモイ)ほか
ドラマレビューサイト豆瓣(ドウバン)評価:7.5点/10点

あらすじ
7年前、一人の警察官が何者かに殺害された。新米の警官だった杜城(ドゥ・チェン)は参考人として取調べを受ける若き天才画家・沈翊(シェン・イー)に詰め寄る。警察官が殺されたきっかけを作ったのは、沈翊が描いた似顔絵だった。
沈翊は容疑者の顔を見たにもかかわらず、容疑者の似顔絵を描くことができない。杜城は沈翊を罵倒する「お前の絵は人を不幸にするだけだ」と。
7年後、アート界から姿を消した沈翊は警察学校の教官として教壇に立っていた。ある事件をきっかけに、沈翊は刑事課に配属され、似顔絵師として杜城とともに犯罪の解明に立ち向かう。

という切り出しから始まるドラマです。

沈翊(シェン・イー) 若き天才画家。28歳。
警察学校の教官兼刑事課の似顔絵師。イケメンとして認識されており、署内のあちこちにファンがいる。
一応警察官という身分だが、中性的でカジュアルな服装で出勤している。警察署内に自分専用のアトリエのような個室をあてがわれている。
捜査では犯人と異常な至近距離で接触する場面にたびたび遭遇する。人の心理を捉えることに長け、それが絵にも反映されている。


7年前の沈翊(シェン・イー)。アート界の寵児だった。


沈翊を演じる檀健次(タン・ジェンズ)は1990年生まれなので、撮影当時すでに30歳でしたが、すごく若く見えます。中国芸能人としては小柄で、KPOPアイドルのようなルックスの持ち主です。



檀健次(タン・ジェンズ)
1990年10月5日生まれ 広西壮族自治区北海市出身 漢民族 英語名:JC-T 身長:174 cm
日本人のような名前ですが中国人です。
2010年に中国ボーイズグループ「M.I.C男団」のメンバーとしてデビュー。グループの活動は2017年頃まで続いた。
しかし、当時の中国はKPOPグループが席巻しており、中国国産グループはプロデュース力が弱く、SNSも発達していなかったので露出の機会を作ることすら難しく、「M.I.C男団」はメジャーになりきれることなくフェードアウトしていきました。
檀健次はアイドル活動のほか、ドラマや舞台にも出演していましたが、最近になって芸能人の再ブレイクをかけるサバイバル番組に出演したことをきっかけに、知名度が飛躍的にアップしました。

2018年12月:俳優が演技を競うバラエティ番組『我就是演员』(米「I AM THE ACTOR」の中国版)第1シーズンに出演。
2020年12月:アラサー、アラフォー男性芸能人の再ブレイクをかけたバラエティ『追光吧!哥哥』(Shine! Super Brothers)に出演。
『追光吧!哥哥』は歌、ダンスを競うタイプの番組で、檀健次は21名の参加者の中で見事優勝を果たします。

2021年2月7日『追光吧!哥哥』公式Weibo 元々ダンスを学んでおり、番組ではダンス、歌ともに高く評価される。


もう一人の主人公、刑事・杜城(ドゥ・チェン)を演じるのは金世佳という長身の俳優です。
杜城(ドゥ・チェン):刑事課のリーダー。7年前に師匠として敬う警察官が殺されながらも犯人を逮捕できないことに深く苦しむ。
当初は事件に関与した沈翊(シェン・イー)にやりどころのない怒りをぶつけていた。


俳優 金世佳(ジン・シージャー) 
1986年11月10日生まれ、上海出身。英語名:Kim Scar 身長:189cm  体重:77kg
上海戯劇学院出身、大阪芸術大学の研究所に留学していた経験があるそうです。10代の頃は水泳選手としても活躍していた。
非常に背が高く体格に恵まれ、韓国俳優を思わせる顔立ちです。
檀健次と並ぶとかなりの身長差がありますが、金世佳は中国俳優の中でも長身です。
国立の有名演劇大学出身で、コンスタントにドラマ・映画に出演するキャリアの長い俳優の一人です。



中国で実際に起きた事件をモチーフにした犯罪ドラマ
『猟罪図鑑』は全20話のドラマで、約10個のエピソード(事件)が描かれます。2話で1つのエピソードを消化するペースです。
個々のエピソードで描かれる犯罪は、中国で実際に発生した事件をモチーフにしているものが多いです。
中盤に出てくるエピソードの一つは不自然に途切れています。後々伏線が回収されるのか?と思って見ていても、最後まで回収されません。
このエピソードで描かれる犯人像は、中国犯罪史上稀にみる凶悪犯罪を連想させるもので、しかもその事件が現在も公判中ということから、エピソードの核心部分が削除されたのではと言われています。

なお、原案となっている事件の中には20年近く前の事件も含まれており、20年前なら犯罪の手口として成り立ったかもしれないけれど、いまの時代では成り立たないのでは、と疑問を抱かせる部分もあります。

犯罪ミステリーとしてはロジックに矛盾がみられ、設定に無理がある部分も少なくありません。
しかし、現代アートをベースに、美しい街並みと個性的な建築物が次々と登場するリッチな映像のドラマです。
また、推理の面では緻密さを欠くのに対し、主人公の二人、画家・沈翊と警察官・杜城のバディ関係の進展は、すごくまともに描かれています。腐女子に媚びるような描写もなく好感が持てます。
犯罪ドラマではありますが、推理要素は30%程度で、アートやバディ要素、檀健次の美貌を楽しむドラマで、推理の追及はそれほど重要ではないと思います。


女性視点の犯罪ドラマ
男性主人公二人の警察バディもので、「ヒロイン」は存在しません。ですが、事件の中核にいるのは女性が多く、ドラマ全体でみると女性の視点に重心が置かれています。
捜査にはあまり参加しませんが、警察署(分署)の署長も女性です。署内の司法解剖医師、ITスペシャリスト、凶器鑑定のスペシャリストも女性で、女性キャラクターは決して少なくないのですが、男女の恋愛展開はほぼゼロです。
司法解剖医を演じる張柏嘉。美人でスタイルのよい女優がたくさんキャスティングされていますが恋愛要素はありません。


モダンアートに力を入れる中国
モダンアート、特にインスタレーションアートは広いスペースと新しい建築空間が必要とされます。
都市が大きく設計されている中国はモダンアートに向いており、人工的な都市空間も多く、モダンアートの作品を発表する機会に恵まれています。
『猟罪図鑑』のようなアートを題材にした犯罪ドラマというのは、アメリカ刑事ドラマにもあったような気がします。
もちろん、カメラワークなどは韓国ドラマの影響も見られます。ただ、最終話のヨットハーバーなど、中国ならではの圧倒的なスケールの都市空間が映像化されていることが、米国ドラマや韓国ドラマとの差別化に繫がっています。
ドラマの撮影地はまたしても厦門(アモイ)です。海岸、旧市街、高層ビル、メリハリのきいた映像の力で足りない部分を補うのが中国ドラマの特徴です。
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中国推理ドラマ『開端』(RESET/リセット)~2022年のコンパクトな良質ドラマ

2022年04月16日 | エンタメの日記
2022年1月に放送された推理ドラマ『開端』(RESET/リセット)が好評です。
『開端』は中国ドラマとしてはコンパクトな構成で、キャストも少数、派手なセットや特殊効果に頼らずに「コロナ2年目」の時代に作られたドラマです。

 

タイトル:『開端』(RESET/リセット) 全15話(1話約45分)
原作:小説『开端』(オンライン小説レーベル「晋江文学」掲載) 作者:祈祷君
主演:趙今麦(チャオ・ジンマイ)、白敬亭(バイ・ジンティン)
放送媒体:テンセントビデオ独占配信  放送開始日:2022年1月11日
監督:孫墨竜、劉洪源、算
制作:正午陽光(DAYLIGHT ENTERTAINMENT/東陽正午陽光影視有限公司)

制作会社「正午陽光」は、ドラマ『琅琊榜』(ろうやぼう)、『歓楽頌』、『清平楽』(孤城閉〜仁宗、その愛と大義〜)など、多数のドラマをヒットさせている制作会社です。『開端』(RESET)にも、『琅琊榜』の制作陣が多数参加しています。

中国ドラマは、壮大なセットを組んだ豪華絢爛な歴史ドラマ、CG特殊効果をふんだんに使ったファンタジー時代劇、リッチでゴージャスな都市生活が強調された現代ドラマなど、規模と資金力を競い合うかのような傾向がみられます。
しかし、俳優のギャラや制作費の高騰が社会問題化し、政府当局はエンタメ業界全体に対して厳しい圧力をかけています。
また、2020年以降は、コロナ対策により撮影活動自体に規制がかけられています。
『開端』は全15話ですが、中国ドラマの中では短い部類に入ります。ほとんどのシーンが路線バスと警察署の中で展開され、主人公の二人はほぼ同じ服装で登場し、中国ドラマには珍しいほどの質実な作風です。

あらすじ
李詩情は嘉林師範大学に通う大学3年生。大学の前を通る路線バス「45番」に乗り市内の書店へ行こうとする。
バスの中で眠ってしまった彼女はバスが爆発する夢を見て飛び起きる。隣に座る青年を巻き込んで無理やりバスを降りると、不安にかられた彼女は「バスが爆発する」と警察に電話する。
その直後、交差点に飛び出してきたバイクと接触し、脳しんとうを起こし気を失ってしまう。目覚めたときは病院のベッドの上で、バスはすでに爆発し全乗客が犠牲になった後だった。
取り調べを受ける彼女の証言はつかみどころがなく、刑事の頭を悩ませる。病院のベッドで眠り落ちた彼女が目覚めたとき、再び「45番」のバスの中にいたーーー。

という切り出しから始まる超常現象推理ドラマです。

主人公:李詩情。20歳。嘉林師範大学に通う大学3年生。


李詩情を演じるのは現在19歳の演技派・趙今麦(チャオ・ジンマイ)です。
趙今麦(チャオ・ジンマイ) 2002年9月29日生まれ 身長165cm 瀋陽出身 中央戯劇学院在学中
2019年公開のSF映画「流転の地球」のヒロインにあたる役所を演じ注目を浴びる。映画公開当時17歳で、将来を嘱望される。実際には小学生の頃から子役として活動している。

もう一人の主人公、肖鶴雲。25歳。ゲーム開発エンジニア。ゲーム会社を起業。会議に向かう途中、バスの爆発に巻き込まれる。
「45番」バスの中で隣の席に座った肖鶴雲と李詩情は、超常現象を共有する無二の存在として、バス爆発という過酷な運命に立ち向かっていく。


肖鶴雲を演じるのは若手俳優の白敬亭(バイ・ジンティン)です。
1993年10月15日生まれ 身長183cm 体重75kg 北京出身
大学在学中に演技未経験ながら青春文学ドラマ「匆匆那年」(2014年)のメインキャストに選ばれる。細身で柔和な印象のルックスが特徴。
ドラマ、バラエティ、広告で活躍していますが、ルックスのせいかソフトな人物を演じることが多く、役柄の幅は広くありませんでした。
『開端』ではこれまでにない深みのある演技を見せています。

白敬亭は撮影時28歳、趙今麦は19歳で9歳差の二人ですが、芝居においては趙今麦のほうがリードしています。

『開端』の中国での評価

ドラマレビューサイト「豆瓣」(ドウバン)での評価:7.8点/10点
7.8点は比較的高評価の部類に入りますが、本当に評価の高い作品は8.5点を超えます。
2021年に放送されて好評を得た「バッドキッズ」は「豆瓣」で8.8点と評価されています。
『開端』では、物語が進むにつれてバスの乗客ひとりひとりがフォーカスされます。乗客は、ローカル配信主、アニメオタク、前科者、失業者など様々なバックグラウンドを持ち、ドラマを膨らませます。ただ、ストーリー展開のために作為的にキャラ設定されている部分もあり、改善の余地があるとのコメントが寄せられています。


推理ドラマの「中国事情」

中国の大都市には「死角なし」と言われるほど無数の監視カメラがはり巡らされています。
警察は監視カメラの録画映像の扱いに熟練しており、実生活の中で、監視カメラから逃れることは非常に難しいです。
よって、『開端』のような現代推理ドラマでは、「監視カメラがあるのが当たり前」で、それを逆手にとった行動が物語の鍵になります。
海外の視聴者からみれば「こんなところに都合よく監視カメラがあるのか?」と違和感を覚えるような場面でも、当然のように監視カメラが存在しています。
また、日本の推理ドラマでは、警察が人手不足でとにかく忙しそうに駆け回っている姿がよく描かれますが、中国ドラマではそういうシーンはありえません。
監視カメラがどこにもである、警察はやたらと人員が潤沢、といった前提は中国ローカル色といえます。


ロケ地:厦門(アモイ)

ドラマの舞台は架空の都市「嘉林市」とされていますが、ロケ地は福建省の厦門(アモイ)です。
ドラマの中で、長い橋の真ん中で路線バスが爆発するというシーンがあります。橋を使った撮影するためには地元交通当局の協力が必要となります。ロケ地の候補は他にもあったけれど、実在の橋を使った撮影許可が下りたのが厦門であったため、厦門が選ばれたと言われています。
厦門は多くのドラマのロケ地になっています。海に面し緑が豊かで街並みが美しく、もともとカメラ映えのする街ですが、地元当局がドラマ撮影に対して協力的であることも、厦門で多くのドラマが撮影される原因の一つと思われます。


中国ドラマの海外展開

歴史ものを中心に、日本でも中国ドラマが放送されるケースが増えてきています。中国メディア企業は中国ドラマの輸出に力を注いでおり、あらゆる国を対象に海外展開を目指しています。日本ももちろんターゲットですが、英語圏や東南アジアにもアプローチしています。
Netflix:2022年4月1日から台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ向けに配信。
韓国の放送局/ネット配信:4月4日から放送。R15指定。

中国エンタメは、あらゆる面で韓国の影響を強く受けており、はっきりと口に出しては言いませんが、韓国を手本にしています。
『開端』もいってみれば「韓国ドラマっぽい」ドラマです。
全15話とコンパクトにまとまっており、推理もので、かつ中国色が比較的薄いので、海外展開に向いている作品といえます。

中国ドラマの撮影サイクル

中国のドラマの多くは、制作者と放送媒体が分離しており、全話分の制作が完了した後、放送媒体が発表され、放送スタートします。
『開端』の場合、2021年6月5日にクランクインし、2021年8月5日にクランクアップ。2022年1月11日に放送スタートしました。

2021年6月5日に公式Weiboにてクランクインを発表、アモイにてクランクイン。


2021年8月5日に公式Weiboにてクランクアップを発表。撮影期間は2ヶ月。


2021年6月の時点では制作スタッフがマスクをしていませんが、8月には全員がマスクをしています。

中国では、ドラマや映画に対し、当局によるセンサーシップ(検閲)が実施されています。
あらゆる面の表現に対して規制、制約があり、特に政治、道徳観念に反する表現、性的な表現に対する規制は厳しく、ドラマの中でできることは限られています。
そのような社会環境にありながらも、『開端』レベルの良質なドラマを生み出すことができるのは、中国エンタメ界の資金力、器材力、人材力の賜物であると思います。
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niko and...上海南京西路店と「ジョジョの奇妙な冒険」期間限定コラボレーション

2022年02月19日 | エンタメの日記
アパレルブランドniko and...(ニコアンド)は2019年12月に上海旗艦店を出店して以来、上海を中心に着実に店舗を増やしています。
先日、niko and...上海南京西路店で「niko and...✕ ジョジョの奇妙な冒険」の期間限定コラボが行われました。

期間:2022年1月1日~2月6日
場所:niko and...上海南京西路店
コラボ内容:コラボ限定商品の販売、コラボカフェ、ポップアップの展示など


niko and...上海南京西路店は、地下鉄の南京西路駅の出口からすぐの路面店で、上海の中でも洗練されたエリアにあります。真向かいにアジア初のスターバックス・リザーブ・ロースタリーがあります。


「ジョジョの奇妙な冒険」は今年連載35周年を迎える天才・荒木飛呂彦先生作の大人気漫画ですが、テレビアニメ化されて以来、中国でも若い世代を中心に人気が急上昇しています
正確にいうと、2018年に放送された「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」から中国での人気が高まりました。
今回niko and....とのコラボ対象になったのは「ジョジョの奇妙な冒険」のテレビアニメ「黄金の風」と「ストーン・オーシャン」のキャラクターです。

「ジョジョの奇妙な冒険」は2012年からテレビアニメの放送が始まりましたが、「第6部」にあたる「ストーン・オーシャン」は、Netflix独占一挙配信として2021年12月1日に1~12話が配信されました。
Netflixなど外資資本の動画配信サイトは中国市場に参入することができず、中国ではNetflixは視聴できません。
そのため、中国では「ジョジョ」テレビアニメはbilibili動画で配信されています。「ストーン・オーシャン」もbilibili動画でNetflixとほぼ同時に有料会員向けに一挙配信されました。

新番の一挙配信はbilibili動画にとってもチャレンジだったと思いますが、アクセス数は堅調に伸びていました。
10点中9.9という非常に高い評価がつき、12月1日の配信開始から現在(2月19日)までの再生回数は12話合計で1億回を超えています。


「黄金の風」は2018年10月にbilibili独占でサイマル配信、全39話で合計再生数は4.4億回。9.8点という高評価がついています。


アニメ版ジョジョは、中国では当初Youkuで配信されていましたが、2018年「黄金の風」からbilibili独占配信にプラットフォームが移ってから、中国での人気が定着したと思います。

コラボ期間中に入店していた客層からみると、中国のジョジョファンの年齢は10代後半から20代、30代前半が中心で、男女の比率は半々くらいでした。






  

アパレルブランドとのコラボですので、メインはコラボ限定商品の発売だったのですが、スタートしてから最初の週末を迎える頃にはコラボ商品がほぼ売切れという状態になっていました。そのため、店舗に来てもコラボ商品が買えないという事態になり、もったいなかったように思います。
これらのコラボ商品は、1月中旬の時点では店頭で売切れでした。後に主にネット販売で補充されました。
  

店頭に商品がないのでフィッティングルームも人がいませんでした。


1月中旬以降は上海でも1桁台ですがコロナ感染者が発生したため、コロナの影響も受けたと思います。



右側にある白いテントはコロナウィルスワクチン3回目の接種会場です。
中国でも昨年12月頃からブースター接種を進めましたが、3回目の接種に向かう足取りは鈍いです。
旧正月休みに入る1月20日頃までは、政府が3回目の接種を積極的に呼びかけていましたが、3回目接種率はあまり高い数値に達していないと思います。
この接種会場は地下鉄駅南京西路駅の出口からすぐのところにあり、予約なしでワクチンを接種できて、接種者が参加できる抽選の景品の内容が良いと言われ、希望者が多く集まっていたところです。一等はiPhone13で、最低でも100~200元(1500円~3000円)相当の買物クーポン券が当たると言われていました。2022年1月15日(土)撮影。

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中国語ミュージカル「人間失格」上海大劇院にて上演~白挙綱×劉令飛の太宰&大庭葉蔵

2021年12月30日 | エンタメの日記
12月10月から19日まで上海大劇院にて中国語ミュージカル「人間失格」が上演されました。
太宰治の「人間失格」をもとにした中国語オリジナルミュージカルです。太宰治は死後50年が経過しており著作権は切れていることもあり、一種の二次創作のようなミュージカルとなっています。
「人間失格」の中のストーリーと並行して、小説の主人公・大庭葉蔵と作者である太宰治が対峙する形で舞台が進行します。

主役の大庭葉蔵と太宰治の二役を、歌手の白挙綱(バイ・ジューガン)とミュージカル俳優の劉令飛(リウ・リンフェイ)が役替わり・ダブルキャストで演じました。私が観たのは、白挙綱が大庭葉蔵役で、劉令飛が太宰治役の回でした。


中国語ミュージカル「人間失格」
公演日:2021年12月10月~19日(全12公演) 会場:上海大劇院 チケット:1080元/880元/680元/480元/280元/280元
主演:白挙綱、劉令飛
制作: 染空間(RAN SPACE MUSICAL)、プロデューサー:梁一氷
脚本:文雅、章明珠
監督・振付:長谷川寧(日本人)
中国人監督&演出総監:許翀烨
照明:陳焯華
作曲:フランク・ワイルドホーン(Frank Wildhorn)
編曲・音楽指導:Kim Scharnberg
音楽総監:孫钰涿
舞台美術:Leslie Travers





ダブル主演 白挙綱(バイ・ジューガン) 1993年11月2日生まれ 四川省出身。


白挙綱は中国の男性ボーカルサバイバル番組「快楽男声 2013」(Super Boy)で最終順位3位となり一躍有名になりました。
湖南テレビの「快楽男声」は何度も開催されていますが、2013年度はカリスマ的な人気を誇るアーティストに成長した華晨宇(ホア・チェンユー)を輩出したシーズンです。番組として大成功し、“華晨宇の同期”であることはいまでも白挙綱の肩書の一つとなっています。

この種のオーディション番組で発掘されたタレントは、俳優に転向してしまうケースが多いですが、白挙綱は歌手活動にこだわり、ライブ活動を続けていました。派手な顔立ちではないのですが、アイドル性があり熱心な女性固定ファンがついています。「人間失格」は初のミュージカルですが好演していました。客席を埋めているリピート客の多くが白挙綱のファンだと思います。

劉令飛(Liam Liu)  1985年11月15日生まれ 上海音楽院演劇科卒業。


劉令飛(Liam Liu)は中国ミュージカル界のスター俳優です。CATS、ジキルとハイド、スリル・ミーなど数々の中国語ミュージカルで主役を演じています。身長は180㎝以上ありそうです。ルックス、歌唱力、演技力、経験など総合的にみて中国ミュージカル界のトップスターです。
体格、顔立ち、年齢が近いせいか、劉令飛の演じた太宰治のビジュアルは、映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」で小栗旬が演じた太宰のイメージと重なる部分がありました。

ミュージカル「人間失格」のストーリー紹介は次のように書かれています。
--------------------------------------------------------
太宰治:日本無頼派文学の代表的作家。「人間失格」は太宰自身の半生を投影した自伝的小説。主人公の人生を通して、太宰の一生と思想を表現している。
大庭葉蔵:小説「人間失格」の主人公。大庭葉蔵は太宰の魂と生命が注ぎ込まれた存在であり、自我の追求を渇望しているのに仮面を被り続けている。
太宰治は大庭葉蔵の創造主であり、大庭葉蔵は太宰治の文学世界の分身である。
「僕たちは自分。僕たちは互いの相手。僕たちが交差し重なり合うことでお互いが補完され完全になる。」


ミュージカルを観た後に読み返してみると、この紹介文は本作を非常に簡潔かつ正確に表しています。

太宰治は創作と人生に苦悩しつつ作品世界の支配者として表現されており、創作物である大庭葉蔵は弱く繊細で、周りの人間と太宰に振り回されています。
一方で、太宰も大庭葉蔵も、2021年を生きる中国人の観客にとって理解・共感しうるキャラクターになっています。
前半は小説「人間失格」のエピソードに比較的忠実で、東京を舞台に「電気ブラン」まで出てくるのですが、作品の後半に入ると、精神世界における二人の対話が繰り広げられます
「人間失格」というタイトルのオリジナルミュージカルなわけですが、なんというか、全体的に『エヴァンゲリオン』っぽかったです。

また、太宰治と父親・出身家庭との確執や摩擦が妙に強調されており、少し違和感がありました。
しかし、そんな違和感を忘れるほど、役者の歌・ダンスのパフォーマンスのレベルが高く、振付、舞台美術、照明等の演出が素晴らしかったです。

「人間失格」を制作した「染空間」(RAN SPACE MUSICAL)は、2018年に東野圭吾の「白夜行」の中国語版ミュージカルも制作するなど、中国のミュージカル界で実績のあるカンパニーです。
ミュージカル「人間失格」は、原作(原案)太宰治、脚本・作詞は中国人が担い、作曲はフランク・ワイルドホーン、監督・振付は日本人クリエイター・長谷川寧、舞台美術はイギリスのLeslie Traversと、各国の人材を起用しています。中国の舞台器材の新しさもあり、非常にクオリティの高い作品でした。



女性キャラクターはツネ子とヨシ子が同じくらいの比重で登場します。ヨシ子を演じた徐夢迪がものすごく歌がうまかったです。
メインキャラクターは主役の太宰治と大庭葉蔵、ツネ子とヨシ子、堀木正雄ですが、その他20名近くの演者がモブ・アンサンブルを務めます。アンサンブルのダンスと歌が非常に上手く、演者は全員若く、背が高くスタイル抜群で、中国ミュージカルのレベルの高さを感じさせました。



会場の上海大劇院は人民広場にあり、客席は3層構造で1631席。満席でした。客層は主に20代から30代前半の女性です。




開演は19:30で時間どおりに始まったのですが、終演は23時を過ぎていました。途中で20分の休憩をはさみ、公演時間は約180分。劇場は上海の中心地である人民広場にありますが、コロナの影響もあり23時を過ぎると人通りはまばらでした。
コメント (2)
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