羊飼いの実家、築30年の古い建物から、このたび、弟一家と母が引越しをしました。
何しろ30年分の荷物、それこそ、みなで1ヶ月がかりで整理し、捨て、片付けて運びました。小さい場所に、いろいろと植えてあったモッコウバラやクリスマスローズたち・・これらはどうするのかなぁと、思っていましたが、この植物たちも引っ越しをいたしました。
何もなくなった空間に、なぜか不思議な気持ちがしたのです。ここで、私たちは育ち、笑い、泣き、子どもを育て、父を看取った。
いいことばかりではなかったこの家。でも確実に私たちの生活があったのですね。一生懸命に生きた私たちの姿がそこにはあります。一度は嫌で逃げ出したこともあるのに。今は何もなく、何事もなかったかのように、静かにただずんでいる。
そして、なんだか泣けてきました。もう二度とここに足を踏み入れることはないでしょう。亡くなった父が、あれほどまでにして守ってきた土地。誇りでもあったのです。
子羊たちも、ここでたくさんの楽しいときを過ごしました。もう、そんな日々はこないのですね。しみじみと寂しさがこみあげてきます。
そして、今回の引越しで、わたしの昔のものがたくさん出てきました。
思いがけず、小学5・6年の学校の日記帳が出てきました。今の娘と同じ年です。
幼い私が、あれこれ書いています。幼い頃の自分に向き合う、そんな体験もまた、することが出来ました。
その中ですら、私は必死で生きていたのです。弱みをみせまいと、つらい気持ちをひた隠しにして、強がっている、か弱い子ども。それが私でした。
担任のK先生が心配してくれていてもなお、それに反発する私。
その私に先生は辛抱強く、コメントを入れてくれていました。
今、ここにきて、自分の原点とこんな形で向き合うことになろうとは。それは、きっと私の進化のための恵みなのだと思えます。蓋をしていた過去にきちんと向き合うこと。
それをしなさいという。私の卒業式でもありました。
新しい家で新しい生活を送る、母と弟一家が、新しい幸せな人生を積み重ねいきますよう、心から祈ります。