狭間に揺れて

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「立憲的改憲論」静かな胎動 権力を厳しく制約・拡大解釈に歯止め(朝日新聞 2018年6月4日)

2018-06-04 | 虚しきもの(時事・思想)


安倍晋三首相の改憲提案が相次ぐ政権不祥事で一時の勢いを失い、国会の憲法論議は停滞している。ところが、野党内で静かに動くもう一つの「改憲論」がある。あえて憲法を改正することで、権力をより厳しく縛ろうとする「立憲的改憲論」だ。実現する可能性はあるのだろうか。



立憲内で検討

「私は立憲的改憲論(の立場)であり、我々は護憲(政党)ではない」。立憲民主党の枝野幸男代表はt月3日の憲法記念日に東京都内であったイベントで、みずからや党の立ち位置を説明した。

立憲は「憲法に関する当面の考え方」と題した文書で、「憲法を一切改定しない立場は採らない。立憲主義に基づき権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与するとの観点から、憲法に限らず、関連法も含め、積極的に議論、検討する」とうたう。ただ、「立憲的改憲論」という言葉を明記しているわけではない。

「立憲的改憲論」とは何か。

衆参両院の憲法審査会で打ち出す党の方針を議論する党憲法調査会の活動と別に、立憲的改憲論の議論、検討を任されている山尾志桜里・党憲法調査会事務局長は「憲法解釈を尊重しない政権に対抗するため、国民の意思で最低限守らせるべきルールを憲法に明記する考えのことだ」と言う。

たとえば、自衛権の範囲を自国が直接、武力攻撃された場合にのみ反撃する「個別的自衛権」に限定するために憲法9条を改正する。憲法に首相の衆院解散権へのしばりを設けたり、臨時国会の召集要求に期限を設定したり、同性婚の権利やプライバシー権を明記する。憲法違反をただす憲法裁判所を置く。そんなことを検討しているという。



安保法きっかけ

枝野氏らが立憲的改憲論に踏み出した大きなきっかけは、2015年の安全保障法制の成立だった。

歴代の政権は、9条で認められる自衛権の範囲を「個別的自衛権」に限定してきたが、安倍政権はこの法制で、同盟国が攻撃された場合に共同して防衛に当たる「集団的自衛権」も一部行使できると政府解釈を拡大した。拡大解釈で実質的に改憲されるぐらいなら、逆に改憲で歯止めを明確にすべきだと考えた。

山尾氏は「これまでの護憲派が大事に思っている憲法の価値、9条の神髄を守るために条文を変える時代にきている」と語る。

野党第1党の動きに、第2党の国民民主党も呼応する。

国民の玉木雄一郎共同代表は4月末、枝野氏ら野党幹部と一緒に参加した憲法討論会のあと、「各党の立場に多少の違いはあっても、権力をしばる観点からの改憲論は共通点が見いだせる」と記者団に語った。

憲法に基づく野党の臨時国会の召集要求を3カ月以上無視し、召集したとたん衆院解散を強行した昨年の安倍政権の対応を問題視する。9条に自衛隊を明記するという自民案に対しても「議論すべきは自衛権のあり方。必要なら自衛権の制約を書き込む議論を進めるべきだ」と繰り返しており、立憲の考え方と近い。



政権の利用、警戒

とはいえ、安倍政権が続く限り、立憲的改憲論が国会で正面から議論される可能性は低そうだ。

憲法改正に反対する共産党と社民党は、「改憲論」の土俵に乗る立憲的改憲論に警戒感を示す。共産幹部は「いかにもタイミングが悪い。安倍政権に利用されるだけで、野党は『安倍改憲反対』で一致すべきだ」と話す。

憲法学者ら専門家のなかにも、「いまの野党の力では実現可能性はない。他の改憲論と一緒くたにされ、国民の多くが望んでいない憲法改正の論議が国会で進むことになる」「新たな条文が加われば、さらに拡大解釈されるリスクが高まる」といった意見が根強い。

枝野氏自身もそうした声を踏まえ、「政治論として、いま立憲的改憲論を党として打ち上げると安倍首相の思うつぼだ」と語り、ポスト安倍政権をにらんだ非公式の検討にとどめている。

立憲的改憲論について、憲法学者の山元一・慶応大教授は「日本に立憲主義や個人の尊重を根付かせるうえで大切な試みだ。復古主義的な改憲派から、現実を踏まえた健全な改憲派を切り離す政治的効果があるかもしれない」と評価する。

ただ、過去にも憲法を改正して自衛権を縛ったりプライバシー権を拡大したりするという「護憲的改憲論」が何度も浮上したが、護憲派の警戒感もあり、論議は深まらなかった。

山元教授は「改憲論にも多様な考え方がある。改憲・護憲双方に考え方のグラデーションがあることを前提に、一緒に議論する場を作っていくきっかけになればいい」と期待する。
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