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映画『APPLESEED』 、いけていかない未来

2005-06-04 07:29:24 | 映画・音楽・・・パッケージ・メディア
映画『アップルシード』
   ―  僅かな映画・コミック体験に基づいた、横レス自在の、独り言

<結末とテーマ>
  たどり着かない ユートピア (明るい未来の喪失)
  いけていかない未来
  映画の結末は、長老から
  「後は任された」今日へと、立ち戻ってくる。


 人間の非核世界戦争の果て、長老達は、人間と科学の地平、
人間と優生学によるバイオロイドとのバランスの上にユートピアを築いていた。
しかし、止まらぬ人間の欲望につかれ、暴発をしかけ、
バイオロイドによる新人類世界に未来を託そうと、人間の抹殺のボタンを押しかけた。
それを止めるのが、デュナンとヒトミ、
アシストは、プリアレオスとアテナ。
ガイアの崩壊、長老の最後の遺志により、
人間と生殖力を持ったバイオロイドの、日常が始まる。

この 結末は、
『マトリックス・レボリューション』の公園での朝日のエンディングの印象に似ている。
(核戦争による天変異変は、培養カプセルの中で夢見る人と地下で暮らす人の世界だが)
また、
『ブレードランナー』を引き継いで、レプリカントの延命の途を開いてもいる。

繰り返される日々の戦いと和解、
生命の歴史では、個体間でも種の間でも、
拡張と収縮を繰り返して、状況にニッチに適応してきた。
人間は、族として、地域として、組織として、
その差異を意識化することにより戦いの対象にもしてきたし、
同じ差異を融合することで、新たな発展の手がかりにもしてきた。
ある時代の優生学的な選別が、次の時代の弱さにもなる。
常に、違和を起こしつづける仕組みが、持続の仕組みとなる。
人類の進化にたいする認識が、
”発展的進化論”から”状況へのニッチな適応論”へと、
変わってきたことことが、
”明るい未来の喪失”、”最後の審判”、”大きな物語”のない
結末を裏付ける。


<キャラクターと語源>
APPLESEED : りんごの種
 エデンでの禁断の実を食べた人間と、その種を引き継ぐバイオロイド
デュナン:ナッツ(木の実)の娘、
 父に戦い・守るすべを学び、母の意志を継ぐ
ブリアレオス:デュナンの恋人、肉体を失ったサイボーグ
 ヒトミ:瞳 (思い出される多くのヒトミ・瞳)、
 カオス(Chaos)から生まれたガイア(Gaia:大地)
 オリュンポス、アテナ、・・・・ギリシャ神話より


<人間の変化>
優秀な人間:デュナン
優生学的なバイオロイド:ヒトミ 
進化論が異変と適応の理論へと変わった今、
”新人類”という完全さへの神話は、終わったのか?
人間と機械、
情報機械と戦闘機械などを二極的に扱うことは、終わっている。


<愛のかたち>
両親のあるデュナン 
サイボーグ化され生体を失ったサイボーグ:ブリアレオス との性愛をへた純愛
             デュナンは、最後までブリアレオスを離さなかった。
攻殻の素子は、両親や幼少の記憶が作られたとの疑問が消えない。
バトーと親友だが、人形遣い(自律したプログラム)と融合した。
デュナンは涙したが、素子はできない。

<思い込み>
押井 守の攻殻、『パトレーバー』などが男の世界的だとすれば、
士郎正宗のコミックには、女を感じさせる世界がある。
特に、このアニメには、宝塚による戦闘ドラマを連想する。
また、戦う強い女性像は、『エイリアン』や、『ニキータ』の頃からか?
素子が30代だとすると、デュナンは、20代、柔らかな肌をしている。
エヴァンの綾波レイは、10代で傷が絶えない。

<表現>
3DとCGを活用し、人間のモーションから起こした映像は、スムーズだ。
しかし、映画の内容、場面によって、適切かどうか、好きかどうかと評価は変わる。
一秒あたりの絵の数を増やし、人間のモーションから起こしたほうが、スムーズ。
ディズニーアニメが、スムーズになるほど、結末が定型的で、
見る側の想像力が不要になる。

コミックは、歌舞伎の"見得”のような一瞬の画像の切れや、多様な表現を持っている。
一人の世界での繊細な感性を、画と言葉のコマによる構成により表現した。
アニメは、音と時間が加わった分、総合性を増し、想像力の入り込む余地を狭めた。
タランティーノの『KILL BILL』に挿入されているアニメの映像の強さ。
『茶の味』のスケッチブックによるパラパラ・アニメの感動。
それは、すべてを物質的に再現したり、造形しても、
人間のリアリティと比例しないことの現われだろう。

<形象>
『スチームボーイ』では、蒸気の力学と、レトロな表現が、
感性のリアリティを持っていた。
攻殻、パトレーバーでは、近未来の設定で、
メカトロニクスとネットワークが見えていて、
東京、香港などアジアの豊穣なディティールを重ねていた。
『アップルシード』遠未来、ナノテクノロジーの果て、
形も動きも機械まで滑らかで、しがらみが少なく、明るい。

<音楽>
『スチームボーイ』が、交響楽的だとすれば、
『攻殻・・・・・』は、多民族的、オルガの声が気持ちよく、
『アップルシード』は、クラブ的に心地よい。

映画『APPLESEED』は、士郎正宗の楽しい世界。





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2 コメント

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TBありがとうございました (mina)
2005-06-04 10:26:22
わたしは、まだ「アップルシード」のレビューを書いていないので、わたしからの折り返しのTBは、その後に張らせてくださいね。お願いします。

それにしても、「バカボンの叔父」様の反応と行動の速さにはびっくりしました。官能的ですらあります。

素敵ですっ。

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デュナン、素子、レイチェル (バカボンの叔父)
2005-06-04 11:21:44
『アップルシード』の紹介ありがとうございました。DVDのおかげで、映像を参照し合える時代になりましたが、自信の気分にそった映画を探すのが難しいのです。余分な刺激を入れてしまうと、自身が乱れます。

”官能”という言葉は、大好きですよ。



攻殻の素子には、恋ができそうもないけど、

『ブレードランナー』のレイチェルなら心中できそうな気がする。

しかし、デュナンは、ブリアレオスとは離れないだろうな?

(人間の大脳皮質は、ある意味で妄想空間でしょうね)

レビューをよろしく。



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