薬が顔に

少し前まで穏やかだった利用者Aさんが、この数週間荒れた感じでいる。
介護スタッフ陣に戸惑いの色が濃い。
自信を失いかけているベテランさんもいる。

Aさんは食べものの好き嫌いはあっても、全て平らげておられた。
なのに最近では好物のバナナは「食べない」と言い、
歯を固く閉じ合わせて水を飲むことさえも拒む。

スタッフは薬を飲んでもらうのにも苦労している。
Aさんは超高齢であるが、味覚はしっかりしており、
たとえばヨーグルトに顆粒薬が一つまみ混ざっているのも分かる。
錠剤ならなおさら。「異物」はすぐに吐きだされてしまう。

先日は介助していた私の顔に、薬が飛んできた。
メガネしてて良かった・・・いやそういう話じゃないか（苦笑）
頭が薬まみれ。吐きだした気持ちは分かるけど、
これではAさんが全量服薬できていないことになる。

「どうしたら良いのか？」
事業所への介護報告をもとにして、Aさんへの関わり方を皆で探しているが、
日の調子によっては介助が順調にいくこともあり、
その都度様子をみながら、適切な介助をしていこうということになった。

↑当たり前と言えば当たり前の対処、しかしこれが難しい。
難しいけれど、これが在宅ケアに関わるヘルパー業の醍醐味。
・・と私は考えることにした。

Aさんの中で今何が起こっているのだろうか。
Aさんの態度を通してでしか見えない、その「何か」。

決められたケアは毎回行わなければならない。
しかしながら、ヘルパーが関わる時間には制限がある。
食事を全部召し上がっていただけなかったとしても、
ひと口ぶんずつ運ぶケアには心を込めたいと思う。

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