細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・教育者のブログです。

学生による論文(116) 「『ハブ』として活躍した小樽港は樺太発展の立役者である」 堀 雅也 (2022年度の「土木史と文明」の講義より)

2022-12-02 05:50:18 | 学生の論文

「『ハブ』として活躍した小樽港は樺太発展の立役者である」 堀 雅也

 今でこそ中距離旅客輸送は鉄道や車といった陸路がほとんどとなっているが、かつては必ずしも陸路中心ではなかった。道路や鉄道と言ったインフラが存在しない場合、その輸送は大抵水運に頼っており、それは陸地が繋がっていても同じであった。特に北海道や樺太は開拓初期から海路を開いており、北国の発展を支えたのは間違いない。

 当時の日本には、「命令航路」と呼ばれる、国策として設定された航路が存在した。横浜からもロンドンやブエノスアイレスを始めとして、諸外国への航路が開かれていたが、内国航路と呼ばれる国内(外地も含む)を結ぶ航路も充実していた。中でも、未だ陸路が開拓されていなかった北海道においては港という港が結ばれ、それらの都市は現在でも地域の中心として発展している。

 ところで、北海道内の航路は主に函館を起点としており、鉄道で青森まで来て青森から船を乗り継ぐスタイルが確立されていたが、樺太航路は本州からの直通も多く、半数ほどは大阪を起点としていた。そのため、鉄道に頼らず、各都市に寄港するスタイルとなっており、内路や野田といった小規模な町も東京、大阪などの大都市へ直接出ることができた。

 この樺太航路には1路線だけ、門司・伏木を経由する本州の日本海側ルートを通るものがあり、その結果、樺太航路が集結するのは小樽港となった。先述した道内航路では函館が担っていたハブの役割を、樺太航路では小樽が担っていたのである。樺太航路の小樽への集結ぶりはすさまじく、樺太島内で完結する森田商会の航路を除く7路線すべてが小樽に寄港していた。一部の路線は函館を通過しており、週に1-2往復と外地航路にしてはかなり頻発された小樽始発の路線(小樽・恵須取線の西海岸ルート)すら存在していたことからも、小樽の活躍ぶりが伺える。また、樺太島内でも大泊がハブの役割を果たしてはいたものの、大泊から西海岸に向かうには西能登呂岬を迂回せねばならず、使い勝手が悪かったのではなかろうか。実際、函館・安別線では、小樽から海馬島と武意泊を経由して内幌から西海岸の町村を巡っており、大泊を経由していなかった。

 なぜこれほどまで小樽が重用されたかと言えば、明治初期から使われていた色内・手宮の埠頭に代わって、1908年に北防波堤が完成し、日露戦争後のポーツマス条約で得た南樺太への航路設定にはベストタイミングであったことが挙げられる。当時は稚内港が未整備(季節航路を除けば就航は1923年)であり、そもそも稚内に至る鉄道も未整備であった一方で、小樽は永らく鉄道の拠点であった上に、大正期までは札幌をも凌ぐ北海道一の都市であり、ハブとして運用するのに都合が良かったとも言えよう。

 この小樽をハブとすることで、樺太は開拓初期から各町村が平均的に発展出来ており、北海道のように炭鉱街だけが急速に発展することも、本州のように一極集中の動きが出ることも無かった。西海岸の塔路は炭鉱街として発展していたが、こちらも(三笠・小樽の関係の様に)輸出港の恵須取の方が発展しており、市制施行もした豊原をも凌ぐ勢いであった。

 現在ではあまり注目されておらず、利用者も少ない船による旅客輸送ではあるが、短距離の航路(いわば渡し船)は重要な地域交通となっている地域もあり、北九州の若戸航路や尾道・向島間の船は代表格であろう。また近場では三崎仲崎・城ヶ島間にも船が通っているが、こちらは城ヶ島大橋という立派な橋が開通して半世紀以上経ってもなお、城ヶ島の中心地は港の地域のままであり、いかに港の存在が大きかったかがよく分かる一例である。このような影響力のある船は、道路や鉄道といった大規模な陸路のインフラを建設しにくい地域や発展途上の地域において活用し、地域の発展に貢献することが可能であると私は考えている。特に途上国に対しては、日本が今までに得た知見を活かして開発援助を行うべきではないだろうか。道路や鉄道と違って、港を作れば外国・他地域との貿易・交易が可能となり、商業が一気に盛り上がる。これこそ、港の持つパワーと言えるだろう。

参考
・国土交通省北海道開発局 小樽港
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kk/kou_kei/ud49g70000008mg2.html
・全国樺太連盟 樺太全図
http://kabaren.org/shiryouarchives/karafutozenzu.html
・カムイミンタラ 樺太の航路
http://kam-r.sub.jp/ainu/karafutkouro.html

 


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