Moments musicaux

ピアニスト・指揮者、内藤 晃の最新情報です。日々、楽興の時(Moments musicaux)を生きてます。

フェデリコ・モンポウへのオマージュ

2016年02月12日 | コンサート
フェデリコ・モンポウへのオマージュ



 フェデリコ・モンポウの音楽の深淵に分け入ろうとするとき、いつしか現世的な感情から離れ、無心へといざなわれてゆくような気がする。静けさはしばしば死の予感と隣り合わせだが、フェデリコの音楽に響きわたる孤独は、どこまでも透明で、不思議なあたたかさがある。フェデリコは言う、「幸せの一瞬をおぼえているとしても、すべての記憶は、さびしさである」。これは、孤独と瞑想を愛する吟遊詩人が、心のおもむくままに紡いだ音楽なのだ。
 フェデリコが生まれたのはスペイン・カタルーニャ地方。独自の言語と文化の息づく地だ。母方の祖父は鐘を鋳造する職人で、フェデリコ少年は、工場に鳴り響く鐘の神秘的な響きに魅せられた。この残像は、フェデリコ特有の付加和音の響きに溶け込み、内省の旅を促す端緒となる。静謐な余韻の行方に耳をそばだてると、意識はその軌跡の遥か彼方を浮遊し、潜在意識の奥深くへと沈潜してゆく。
 フェデリコの音楽は同調を求めては来ない。彼は、自らの音楽についてこう語った。「この音楽は、ひそやかです。なぜならば、これを聴き取るのは内面だからです。自制と慎重。その感動は秘密のものであり、われわれの孤独の冷たい円天井のもとにこだましてのみ、音響の形をとるのです。それは、空間の数ミリ先までより遠く響き届くことを求められはしないが、われわれの魂の奥深く浸透することは、強く求められるのです。」こうして、音楽は、私たちの心の深奥を映し出す鏡となる。今日は、大勢の聴衆のひとりとしてではなく、あなたという個人として、そっとフェデリコの内密な音楽に向き合っていただきたい。
静かな夜、
黎明の夜、
ひそやかな音楽、
響きわたる孤独、
憩わせ、愛情をはぐくむ夕食
※十字架のヨハネ(16世紀スペインの神秘主義詩人・カトリック司祭)の詩「魂とその伴侶キリストの間の霊的な歌」より。フェデリコ・モンポウは、この詩にひときわ強い共感を寄せていた。

内藤 晃


「フェデリコ・モンポウの世界」
1月29日(金)東音ホール
1月31日(日)entracte自由が丘サロン
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