400mハードルのメダリスト・為末大選手の新刊。(新潮新書)
非常に面白く読めて、しかも「実利」がありそうな内容である。
この前の日曜、国立競技場で関東インカレを応援・見学した際にFコーチから「もう読んだ?」と手渡されたのがこの本。
観戦の合い間にパラパラ読んでみると、つい読みふけってしまいそうになるほど引き込まれる。
で、帰途ジョグの途中、本屋さんに寄って購入し、じっくり読むことに。
焦点は、「第1章 だれでも足は速くなる」と「第2章 速くなるトレーニング」である。
速く走るには骨盤の角度が重要で、やや上を向いている日本人は不利であり、正面を向いている欧米やアフリカの人々は体を直立させて速く走るのに適した骨格を先天的に持っている。
したがって、日本人は日本人に適した走り方が必要となる。
「走り方を変えれば速くなるんだ―― 私が明確にそう体感できたのは、2003年の冬でした。筋力ではなく、技術で足が速くなる、と確信したのです」
為末選手が体感した確信とは。
「今までとはまったく違った感覚でした。今までなら着地した時に地面から跳ね返ってくる圧力は膝にきていたのです。それが、膝を通り越して股関節にきました。
あたかも、下り坂を走っていてどんどんスピードが出てくるような加速感を感じました。極意の切れ端をつかんだような気がしました」
極意とは。
「速く走ろうと思っているうちは速くならない。自分の体に向いた走り方さえできれば、ひとりでに速く走れる――。それが極意です」
具体的には。
車で言うと日本人の体は、サイドブレーキを少し引いたような状態。
(骨盤の角度が、スピードを減速する役割を果たしてしまう)
⇒サイドブレーキを解除する必要あり
⇒骨盤を、前へ、そして下へ、傾ける意識を持つ
「つまり、上へ逃げがちな推進力をムダなく前へ持っていくためには、下へ押さえ込む意識が必要なのです。それくらいのつもりでちょうど、走っているときの骨盤の角度がようやく欧米人、アフリカ人と同じくらいになってくれます」
より具体的な身体操作としては。
「最大のポイントは、走る時の意識を変えることです。
走るというよりも、コケそうになるのをこらえる、
という感じで走ると、速く走れます。
自然に真っ直ぐ立って、ほうきが倒れるように体全体を前に倒してください。重心が前に移動し、体重がつま先にかかって倒れこみそうになり、足がひとりでに前へ出るはずです。
この動作を連続して速く行なうのが『走る』ということです。
意識を変えて、骨盤がいい角度の状態で走ることができるようになれば、だれでも足が速くなります。
日本人が速く走るために必要なのは、筋力よりもむしろ、技術なのです」
なるほど。さらに為末選手はこう書いている。
「生まれ持った骨格上のハンディのために足が遅い」という現実をポジティブに考えれば、
「その欠点を修正するだけでサイドブレーキが解除されるから、足が速くなりやすい」という明るい未来が見えてくる、と。
この逆転の発想こそが為末選手の特質であり、10代後半で決断した100mスプリンターから400mハードラーへの転向、あるいは今夏の大阪世界陸上と来年の北京で「銅より上のメダル」を取るためにあえて500日間近くハードルを跳ばないなど、本書の随所で語られる競技人生の軌跡に、その哲学がにじみ出ている。
本書は、日本人が速く走れるための実用書であると同時に、「為末大」という異色のアスリートの軌跡と近未来、さらには遠大な夢をちりばめた詩集でもある。
その渾然とした複合が、足の遅いオヤジの胸を打つ。
今、この本を読めてよかった。
⇒ 為末大選手オフィシャルサイト
今度の日曜5/27には、東京・丸の内で路上ライブならぬ「ストリート陸上」を開催されるそう。観覧無料とのことなので、ぜひ見たいものである。
朝、地下足袋で芝生ジョグ30分。上り坂ダッシュ5本、心拍152。
夜、世界卓球をTV観戦しながら、その場腿上げなど。
最新の画像[もっと見る]
読んでませんでした。
知り合いから本を譲り受けて、
ようやく、新幹線の中で前半を読みました。
特にいいのは、
おしっこの勢いが強くなったという話。
体幹のどこを意識しているかを
具体的に示してくれてます。
早速、実行したところ、
ぼくも強く出すことが可能となり、
走りもより安定感が出てきました。
うーん、さすが、この先生の教え方は
わかりやすいと、またまた、為末式に
はまってます。
なんちゃって~
「トイレ特訓」は、たぶん男性限定でしょうけど、おもしろくて効果ありそう。
……使っている筋肉は、明らかに腹筋とは違います。腹筋よりも下で内側。このあたりの筋肉が重要で、走るときも、意識としてはここを中心にして全身を躍動させるのです。
正しい姿勢で走ることができるようになると、おしっこの勢いが強くなります。私も足が速くなりだしてから、勢いが増しました。
うーむ、これぞトレーニングの日常化、かつ日常のトレーニング化の極致?