Harvard Square Journal ~ ボストンの大学街で考えるあれこれ

メディア、ジャーナリズム、コミュニケーション、学び、イノベーション、米国社会のラフドラフト。

朝日新聞元主筆・船橋洋一さんハーバード講演

2012-03-26 | Harvard-Nieman
朝日新聞元主筆の船橋洋一さんがハーバードに来られた。
私にとって船橋さんは、ジャーナリストとして、憧れの存在で、また、最初にニーマンフェローの存在を知ったのも、船橋さんがかつてのフェローだったからだと思う。

お昼の一般公開の講演会では、船橋さんが理事長をつとめられている日本再建イニシャティブ財団の「福島原発事故独立検証委員会」による報告書など、震災関連について。

そして夜は、招待客のみの、ハーバードのファカルティクラブでの晩餐会。こちらでは、日中関係がテーマで、討論者はハーバードケネディスクール教授で、米国の4人の大統領(ニクソン、フォード、レーガン、クリントン)のアドバイザーをつとめたデビッド・ガーゲン。こちらの講演のほうが、リラックスされ、ご自分の体験談をベースに、話しも伸びやかで面白かった気がする。

ともかく、船橋さんの、明確な視座、柔軟な思考、アカデミックなバックボーンも持ちつつ、現場で集めた情報や経験などをいかに繋げて、物事を理解して行くのか、など、学ぶ事がたくさん。とかく新聞記者は、物事を皮肉にとり(批判精神は大事だけれど)、ネガティブなことに目を光らせ、重箱の隅はつくものの、大局的な視点から物事を見たり、自ら分析を加えたり、今後の展望を描いたりすることが苦手な気がするが、船橋さんは、独自の分析力、提言力においても卓越していました。

また、議論において知的な貢献をすることがいかに大切なのかも、あらためて考えさせられました。質疑応答でも、質問者と相反する考え方を持っていても、つねに、自分の見解が、テーマに対してさらに多角的な視点を与え、深く豊かな議論へと導くようにと、知的に貢献しようという意思が感じられました。この点も、大いに見習いたいところです。

以前、私が朝日新聞に寄稿した記事に、「国際的なネットワークの構築には、知的なギブ・アンド・テイクが必要」と書いたことがあるのですが、船橋さんはまさにそれを実践されていました。だからこそ、ダボス会議等、国際的な場でも、引っぱりだこであることに納得がいきます。朝日新聞Globe「米国の大学街で国境を越えたネットワークをつくる

いずれの講演の後にも、ご挨拶させていただいたましたが、私が現ニーマンフェローであることを伝えると、満面の笑顔で「それはおめでとう!」と強い握手で喜んでくださり、幾度となく応援の言葉をかけて下さいました。36年前のニーマンフェローは、彼にとってもスペシャルな一年だったということです。

今後は何をされるのかと伺ったところ、調査報道を通して、福島で実際に何が起こったのかを、より深く検証して行くということでした。「福島が、世界の問題だからこそ、やる価値がある」。また、少し意外が気もしましたが、日本の経済が衰退している原因のひとつは、能力ある女性を上手く活用していないから、という問題意識をお持ちで、このテーマについても取り組んで行きたいということでした。また、「失われた10年」は日本独自の問題ではなくグローバルなイッシュなので、こちらも研究を続けたいと。

実は、私のもうひとりのヒーローは、米国の卓越したジャーナリストの故デイヴィッド・ハルバースタム。10年以上前、たまたまニーマン財団を取材で訪れた時に、セミナーの講師としてやってきていたハルバースタムと遭遇。というわけで、少女時代からの、二人の憧れのジャーナリストと、ニーマンフェローを通して出合えたことは、本当に幸運だと思います。

船橋さんのお話をお伺いしながら、自分の力不足を深く痛感しつつも、良いロールモデルを前に、さらなる高い目標や、自分の課題がクリアになり、前に進んで行くエネルギーを頂いた幸せな一日でした☆

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