Harvard Square Journal ~ ボストンの大学街で考えるあれこれ

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自分の人生をプレゼンする機会をつくろう!

2012-03-29 | Harvard-Nieman
ジャーナリストという仕事柄、様々な人に話しを聞く機会がある。世間に良く知られた人から、そうでない人まで、人は実に色々な事を考え、多様な経験をし、それを通して学んでいるのだと感心する。ビッグネームのスケールの大きな話しも良いが、名もない人の人生哲学なども、実に深く、また心にしみて泣けることもある。ところが、私たちは普段、自分が考えている事、経験したこと、どんな人生を辿ってここまで来て、これから何をしたいのか、つまり自分自身の人生について、ある程度、フォーマルな形で話す機会はほとんどないのではないだろうか。確かに日常的にプレゼンする機会が多い人もいるが、それは仕事やプロジェクトのことであって、自分自身については、ごく稀なような気がする。

以前、書いたように、私が所属するニーマン・フェロー(特別奨学研究員)は毎週「サウンディング」と呼ばれる、「私の履歴書の講演版」ともいうべきイベントがある。私も無事に1月に終えたところだ。フェロー同士は、連日会い、かなり長い時間おしゃべりする時間もあるのだが、1時間の「サウンディング」を聞いて、誰もが始めて、その人を始めてちゃんと知った気になると言う。それくらい、お互いを知るためには、欠かせないイベントなのだ。

そして、今夜は、ハーバード・デザインスクール(建築大学院)のローブフェロー(特別奨学研究員)の配偶者による「私の履歴書」に招待を受けた。ニーマンフェローもそうだが、ローブフェローの場合も、配偶者にも授業を取ったりセミナーに出たりする機会が与えられる。そして、今回は、初の試みとして、配偶者にも「人生」を語る場を設けたということだった。実は私もニーマンフェローの配偶者も、発表する機会があれば良いのに、とかねてから思っていたので、興味津々だった。

ちなみに、ローブフェローは、建築家、都市計画関係の人が多く、ニーマンフェローに比べると、お洒落でセンスが良さそうな、あか抜けたタイプが多いw 配偶者といっても、奥さんがフェローで、旦那様が一緒に来ている人も半分ほど。今日は6人によるプレゼンなのだけれど、これがまた、全員全く違っていて、それぞれがとてもよかった。

ースイスの大学で、デジタル情報マップを使って、様々なグローバルな問題を分析、予想している男性。地球温暖化など、漠然と語れることが多いが、データを集め、それを地図に重ねて行くことで、得られる情報が格段に上がるということでした。
ーニューヨークのトップレストランの接客担当者による、皿洗いから始まって今の地位に上り詰めるまで。また、トップレストランの接客哲学。さらに、新鮮な魚介類をどのように仕入れているのか、ビデオで紹介。「安い魚に良い物はない」。安さばかり追求する最近のトレンドをさりげなく批判。職業人としての誇りが感じられる素晴らしいお話。ちなみに友達の旦那さんであるにも拘らず、こんな素敵な人なのかと、感動しきりw
ーダンスや身体の動きを題材にしたビデオを制作する、私の友人の女性。座り仕事がいかに身体に悪いのか、それを解決するために、運動とデスクワークをブレンドした新しい仕事の仕方を実験しているラボの様子。また、交通整理をしている警察官をダンスに捉えて分析、などなど、日常的な題材を、まったく新しい視点から捉えていて、ストーリーとしてもとても面白かった。ああ、ここまで良い仕事をしていたとは知らなかった!
ー次はドイツで建築とアートの出版を手がける女性。世界的に売れてもせいぜい2000部から4000部らしいが、それでも、きちんと収益を上げており、さらに今それが上向きになっていて、出版の意義に対する自信を強めているとのこと。美しい写真とデザインの本が次々と紹介され、日本の建築家も多々含まれていた。
ージャーナリストだったものの、レイオフに遭遇し、何をしたいのか彷徨った結果、ショートビデオ制作を始めたという男性。地元にあるタイプライターのお店にくるお客さんと、店を経営するタイプライター職人を追ったもの。一時はつぶれそうになったものの、この5年ほど、親が子供を連れてくるケースが増え、ビジネスも落ち着いてきたという。美しいタイプライターを愛おしそうに修理する姿、「親子で来てくれるお客さんは嬉しい」と語るときの優しい目線など、心がほんわかする作品だった。また、逆にタイプライターが時代遅れのものではなく、むしろ、とてもエレガントなものにも見え、メディアについても考えさせられた。戦場も経験したジャーナリストがたどり着いたのは、日常を優しく救い取る、素敵な作品づくりだった。
ーラストバッターは、これまた私の知人の旦那様で、多くの著作がある小説家による、自作の朗読会。ライトを落として聞く話は、味わいがあって、みんながうっとりと聞いていた。

というわけで、今回も知っているつもりの人の、新たな側面を知って、本当に感慨深い夕べとなった。
以前、ニューヨーク公共図書館の本の取材している時に、クイーンズにある図書館では、毎週夜に「マイクナイト」というイベントを行っていて、誰もが自分の好きなテーマをステージで話す機会を設けていたが、こうした機会が日常的にもっとあってもいいと思う。なんだかんだ言っても、多くの人に向けて自分を語れるのは、やはり特別な人ばかりなのだから...。こんなコンセプトのお店があったら、流行ると思うのだけれど、どうかな~(笑)w

ところで、語る方も、単なるおしゃべりではなく、ある程度、フォーマルな形にすることは、準備段階を通して、自分自身の人生を振り返る、絶好の機会にもなると思う。私自身も、数々の忘れていたことを思い出す格好のプロセスになった。

ともかく、家族、友達、職場でも、もっともっと自分の人生を語る場を設けてみてはどうだろうか。
その人自らが語る、人生から学ぶことは、実に深くて楽しく、人間同士の絆も深まる、素敵な方法だと思う☆
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