カッキーYAMA   akihiko tange

手始めに、日常的なことを気の向いたときに載せていくつもり。

高遠の桜 旅 伊那の街 2017

2017-04-29 | エッセイ












  伊那の街に宿を取った。いわゆる旅館というものだ。商人宿風と言うと分かりやすい。和室。素泊まりなので安い。高遠での桜見物の後、車でやって来た。車だと近い。玄関ドアにガラスが嵌り、靴を脱ぐところがあって上がり框があり、宿の若いお兄さんが出てきて、よくお越しくださいました、というタイプの旅館。で、実際そうだった。部屋に案内され、さて寛ぐことに。あぐらをかき、お茶など入れ、部屋を一回りぐるりと見て、手ぬぐいはあるかな、浴衣はあるかな、歯ブラシはないな、窓はガタつかずに開くかななどと見て回るうちに、その部屋の引き戸の窓の上に、四角い小さな換気口らしきものがあり、そこから引っ張り用のワイアーが出ているのが目に入ったので、思わず手を伸ばしてちょっと引っ張ったのだ。引っ張り用だから。チャッと音がして、おもむろに換気口が開いてしまった。非常用だと思う。開かないといけないもののはずで、ほー、ちゃんと開くんだと思ったけど、空気圧の突っ張り棒が利き始めて完全に開き、今度は腕を伸ばして閉めようとしてもどうにも閉まらなくなった。煙草を吸うので丁度いいかと思ってそのまま開けて一夜過ごした。季節はもちろん桜咲く頃で既に寒くはなくそれで良かったのだが、後で宿のお兄さんにはそう言って謝っておいた。普通は引っ張らないのだと思う。こちら、出ている紐など引っ張る部類。

 夜、伊那の街へ散策と食事を兼ねて歩きに出た。宿は伊那北という駅の近くで伊那市駅の一つ隣なのだが、歩いていくらも掛からない。宿のお兄さんに聞いた「うしお」という店へ行ってみた。ローメンというのが伊那の名物であるんですけど、と言って教えてくれた。B級グルメですけど、と言っていた。そこでローメンを晩飯に食べた。ビールと。店内は満員で少しの間待った。田舎の街で通りに人通りはほとんど無かったのに伊那の街にこんな混雑したところがあるのか、という感じだった。仲間同士で談笑しつつほとんどの人がローメンと何かアルコールを飲んでいた。飲む時のツマミとしても美味いなと思いつつあっという間に食べてしまった。腹が減っていたのだと思う。ローメンというのは焼きそばのようだけれど、蒸した太い麺を使っていて柔らかく、焼きそばのように焼いてはいるのだろうけれど汁気を多く含ませたまま軽く焼いた感じだった。味は醤油的、少しソースも入っているかもしれないという独特の味だった。ビールを飲みつつ食べた。
 
 その後、偶然、路地裏に小さなジャズの店を見つけそこで生のセッションを少し聴いた。一杯だけ注文して飲んだ。注文したのはスコッチのロックだったが出てきたのは味がバーボンの味だった。流れる音楽を何となく聴いていた。他のお客に、面倒なので今日は全部ジャックね!と店のマスターが言っていた。ジャックダニエルのようだ。そうこうするうち生の演奏が始まり、ブリブリとサックスが鳴り出したあたりで店を出た。1時間もいなかったと思う。もう一軒どこかで軽くでも飲もうかなと思っていた。

 伊那の街は昔の街道筋にあたる。そのせいか小さな街の割には寂びれた感じは全くしなかった。そこここにともる店の灯りがどこかみやびた感じがするのは山あいの高遠の街から来たからか。伊那谷を貫いて高速道路も近くを通っている。長野松本と中部名古屋を結んでいる。古くは伊那谷を通る街道は東海道、甲州街道などに繋がっていた伊那街道。
 蒸し暑くもない、心地良い空気の道を歩きながら、馬刺しと書いてあった看板の記憶を引っ張り出してその店へ向かった。その店は街を一本貫く宿への帰り道の脇にある。山菜の、何かてんぷらなどでも食べたいと思った。背中のデイパックには宿でゆっくり飲もうかなと、見つけたスーパーで買った「醸」という日本酒が入っていた。結局、街を歩いて堪能し、宿へ帰って疲れでそれほど飲むこともなく、ぐっすり寝てしまった。




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