とことん青春!

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地獄少女 二籠 22話感想 『憧憬』

2007-03-11 14:34:45 | 地獄少女 二籠(感想) 

また会ったね 拓真!
まだいじめられてるの?

もっと酷くなってるよ
だから もう誰も信じられなくなって…
 

じゃあ 地獄少女を呼ぶ?
ううん 大丈夫
あの人に せりに会えたから
もう大丈夫

なぁ~んだ つまんないの!
でも せりは…   

【依頼人】蓮江美鈴 
【ターゲット】水谷せり

これが「金巻地獄少女は神作」と言われる所以か…。
今回も前回に引き続き金巻氏独特の遠回しな表現技法による作中テーマ表現が随所に見られ完成度の高い内容でした(前回よりは分かりやすかったですが)。
「絆」というテーマを明らさまに表現しないために「居場所」をキーワードにした遠回しかつ丹念な作中テーマ描写は本当に秀逸。     

そして、拓真かわいいよ拓真!と言ったのも束の間、最悪のオチが…。   
22話感想。 

◆◆憧憬◆◆       
誰もが心の中に持っているであろう憧憬(憧れ)。
それは「ここではないどこか」に対する憧れ。 
拓真、せり、そして、あいの中にある「ここではないどこか」を求める想いの描写によって、作中テーマ「絆」を巧みに表現したのが今回の話だったんですね。

しかし、金巻先生、本当に上手い(と言うか、神)ですね。
ますますファンになっちゃいそうです。                 

◆◆ここではないどこかへ(あい)◆◆   
ここの景色飽きた   
そう…             
飽きないの? 
別に…
きくりは飽きた

慣れ過ぎた…かな…?   

「ここ」にいる事に疑念を抱きつつあるあい。
今後、あいが地獄少女の仕事に疑念を抱くであろうという伏線が何気無く張られています。
相変わらず上手いですね(流石は金巻氏)。

あいの抱く淡い憧憬は「地獄少女」という職務からの脱却である、と。

◆◆ここではないどこかへ(拓真)◆◆   
拓真は父の重症と母の死という現実から逃れるために童謡を唄い、「ここではないどこか(静かな湖畔)」を居場所とする事で汚れた現実世界を「綺麗な世界」として保っていた。

だが、彼はせりと出会い、刹那の「絆」を構築する事で汚れた現実世界である「ここ(ラブリーヒルズ)」で生きる意味を見出す。 
ゆえに、「ここではないどこか」を求めるせりに「ここ(ラブリーヒルズ)」に自分と居て欲しいと願うんですね。             

どこ行くの?
どこって… 
うち…来る?   

孤立無縁状態の拓真が求めていたものは他者との「絆」と現実世界における確固たる居場所だったという訳なのです。

◆◆ここではないどこかへ(せり)◆◆   
ねぇ 拓真…
一緒にさ この町出ようか?
ここはもう 私の知ってる町じゃないからね
僕は無理だよ…だってお父さん 入院しているし                 

ここにいたら…?     

せりが求めていたものはかつての風景。
家を壊され自然を破壊された「ここ(ラブリーヒルズ)」はもう自分の居場所ではない。
だから、「ここではないどこか(かつての風景のある場所)」に行きたいんだ、と。

拓真も本当はせりと一緒に「ここではないどこか」へ行きたかったのでしょうが、まだ息の根がある父との強い「絆」「ここ(ラブリーヒルズ)」に彼を留まらせる事になるんですね。
仮に父が死んでいれば拓真は二つ返事でせりと「ここではないどこか」へ旅立っていたでしょうから、それだけ彼と父との「絆」は強いものなのでしょう。     

ここ出てどこ行くの?
どっか田舎…まだ分かんない
でも 蛙が一杯いる所
やり直すんだ 何もかも 今までの事 全部忘れて

「ここではないどこか(かつての風景のある場所)」へ行って、今までの汚れた人生を洗い流し一からやり直したいとするせりに対して…     

止めなよ!お金取るのなんか止めてさ
うちに住みなよ!
ずっと居ても良いからさ
  

せりとの「絆」を保つためにせりと「ここ(ラブリーヒルズ)」で生きたいと訴える拓真ですが…。
せりにとっては拓真との「絆」よりも「ここではないどこか(希望に満ちた別世界)」に対する憧憬の方が強かったという事なのでしょう。
それだけ彼女は汚れ切った「ここ(ラブリーヒルズ)」と自分の人生に嫌悪感を抱いていたのではないかと思う次第。

父との「絆」ゆえに「ここ(ラブリーヒルズ)」を居場所として選んだ拓真と「ここではないどこか(希望に満ちた別世界)」を求めたせりとが鮮明に対比されているのは良かった。

◆◆その時、あいは◆◆               
もうお気付きの方も多いと思いますが、拓真の境遇はあいの境遇と酷似しています。
あいはかつて六道郷の人間から「もののけ」と称され忌み嫌われていましたが、拓真は「悪魔の子」と称され(同じく)忌み嫌われていますからね。       

ゆえに、あいにとっては拓真が追い詰められていく様を見るのは胸が引き裂かれる想いでしょうね。
過去の自分と同じ境遇の者が居るのに助ける事ができない、と。
「地獄少女」である以上は決められた掟に従い、決められた職務を全うしなければならないのだから。

しかし、今回のせりの行動を今後のあいの行動に暗に掛け合わせていたのは上手いなぁ、と感心。
せりは拓真との「絆」「ここではないどこか」の二者択一を迫られたが、あいも同様に三藁との「絆」か、追い詰められる拓真を助け禁を破り「ここではないどこか(地獄への帰還)」に行くかの二者択一を迫られる事になりそうですからね。
辛い展開が待っていそうな感があります。

◆◆オチとしては◆◆
私的妄想では、住民から追い詰められながも拓真が「ここ(ラブリーヒルズ)」で生きる道を選ぶ様が描かれるのでは、と思います。
そして、拓真に「ここ(ラブリーヒルズ)」を居場所として生きる理由を与えるのが何かしらの「絆」の構築なのではないかと妄想する次第。
復活するであろう父親との「絆」という可能性が高いとは思うのですが…。 

また、要注目なのが(上でも触れたが)あいの取る行動です。           
あいが地獄少女の仕事を続ける(「ここ」で生きる)意義を三藁との強い「絆」に見出すのか?
それとも過去の自分と同じ境遇に遭う拓真に感情移入し仕事を放棄し地獄(「ここではないどこか」)へ帰る事になるのか?     

このあまりに理不尽な矛盾をあいがどの様に直視し受け止めるのかが見物です。
400年以上もの間、自らの意思とは関係無く与えられた仕事を黙々とこなしてきたあいが自らの意思で決めなければならない時が近付いて来た様に思います。

ゆえに、『地獄少女 二籠』の最大の見せ場はあいの「決断」という事になりそうだなぁ。
ラストに向けて、あいが自らの運命と対峙して自らの意思で道を選び取る様が描かれて然るべきかな、と。                   

私的誇大妄想を膨らませると、あいが(三藁同様に)拓真を拾うというオチもアリなのかな、と。
三藁との「絆」を保ちつつ拓真も助けるとなるとその方法しか無いと思うのですが。
しかし、きくりの存在の謎が語られていない現状ではこの物語を「絆」という一大テーマにどの様に収斂させるのかがまだ見えない。

本当に先が気になって気になって仕方無いですよ(笑)。
この上手い引っ張り方は地獄少女ならではですな。             

以上、次回以降の放送が待ち切れない状態にしてくれた22話感想でした。



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