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KIMURAの読書ノート『サイコパス』

2017年03月03日 | KIMURAの読書ノート
『サイコパス』
中野信子 著 文藝春秋 2016年11月

「サイコパス」という言葉からどのようなイメージを抱くだろうか。大抵の人が世間を震えさせる強烈な殺人鬼を連想するのではないだろうか。本書では、それも含め私たちの周りにいる「サイコパス」について特徴から脳科学的構造、歴史に至るまで論じたものである。

ここで身近にいる「サイコパス」としての特徴の幾つかを挙げると、
・常習的にウソをつき、話を盛る。自分をよく見せようと、主張をコロコロと変える。
・ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手。
・傲慢で尊大であり、批判されてもおれない、懲りない。
・つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなったことを悪く言う。
・人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。(p8)

となる。これら全てでなくても幾つか当てはまる人が周囲にはいるのではないだろうか。私も正直このような方がかつて身近におり、付き合い方にほとほと悩み、エネルギーを消耗したことがある。と同時に、その人がそうなった背景に興味を持ったのも事実である。この部分で言うと、
・脳の機能について、遺伝の影響は大きい。
・生育環境が引き金となって反社会性が高まる可能性がある。(p150)

現段階ではこれ以上のことを言うのは、難しいそうである。とても肩透かしのようにも感じるが、ここに至るまでに本書が取り上げている文献の数は目を見張るものがある。と同時に、世界で「サイコパス」について様々な研究が古くから行われていることに驚かされる。実際に「サイコパス」という言葉が使われる以前からそれに該当する言葉を持っていた少数民族の存在も確認されている。また概念的なものとしては、ギリシア時代にさかのぼる。19世紀に入ると「サイコパス」の存在についての「発見」があり、そこから本格的な研究が始まっているようである。現代では、これらに関して脳科学的にも研究が行われており、一般の人との活動部位が異なることも分かっている。しかし、現段階では更に実験的な研究というのは倫理的に不可能であるということも記されていた。

更に本書では、昔から一定数集団に存在し、現在も淘汰されていない「サイコパス」について言及している。それには、誰もが不安や尻込みするような事案に対して恐怖心を持つことなく進むことで、新たな道を開く存在であるためというのが理由の一つのようである。そのような意味において広義的な「サイコパス」が存在している職業を最後に本書では記しており、著者は「好むと好まざるとにかかわらず、サイコパスとは共存してゆく道を模索するのが人類にとって最善の選択であると、私は考えます(p230)」と締めている。しかし、凶悪犯罪者でなくとも、身近にいる「サイコパス」と渡り合うのはやはりしんどいと思うのは私だけであろうか。  (文責 木村綾子)
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