Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

利休イノベーション

2020年02月15日 06時18分00秒 | 美術館・博物館etc.

★湯木美術館 サイト
早春展『利休イノベーション-茶道具の変革-』 ※3月22日(日)まで
  前期:2月16日(日)まで 後期:2月19日(水)~ 3月22日(日)

年間会員になって7年目。「今年もモトを取るぞ~!」と思うと同時に、「別の特典も利用したい」と思った。

帰省予定の期間中に講演会が開催されると知って、「じゃあダメ元で申し込んでみよう」。
幸い、先着25名に入れたようで受講券が送られてきた。

講演会の前に展示物の鑑賞。

今回のテーマは「利休」。
去年の早春展も利休だったし、年明けに松屋銀座で「利休のかたち」展もみた。

利休展が多いのは没後430年とゆーキリ番のせい?

そもそも、というか基本的なことだが、イノベーションって?

『イノベーションとは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと……』
ということらしい。

そういうことで、どのケースも利休の時代の前→利休→利休以降の時代という並べ方をして、
利休の登場によって道具がどう変化をしたのかを展示していた。

ケース1&2は茶碗の変化。
禾目天目(利休前)、長次郎の黒楽茶碗「春朝」~これは利休の指示?による変化が加えられた姿らしい。(道理で宗慶っぽく見えた)
そして、同時代にあったと思われる青井戸茶碗「春日野」
以上がケース1

ケース2には後の時代のもの。黒織部沓茶碗、唐津茶碗、萩茶碗、保全の色絵茶碗。
利休以降の時代は模様がついたり、形が個性ぽくなって、華やかな二なったなぁ。

ケース3は水指
南蛮芋頭水指は「前」の時代、関宗長作の真塗手桶水指は利休の時代。(デザインの指示まで与えてる手紙が残っているらしい)
後の時代になると見立てではなく発注品になる。ということで古染付山水文水指(明時代)。

ケース4は茶器
唐物肩衝茶入「富士山」、室町時代の茶桶(さつう)、ノ貫(へちかん)在判の黒大棗(益田鈍翁所持)
この場合、黒大棗が利休のかたちで、茶桶が“前”、南宋時代だけど「富士山」が“後”なのだろう。←中興名物だから。

最初は見立ての漆器を利休が指示して「かたち」を好んで大棗を作らせた。
そして、利休より後の時代を生きた遠州は新たな形を好んで、唐物を選んだ。というところか。

ケース5が茶杓
これは一目瞭然。象牙の茶杓は薬匙を見立てもの。
紹鴎は竹で茶杓をこさえ、象牙の代用を意識したのか無節にした。
つづく利休は「竹」という素材を前面に出し、中節かつ蟻腰にした。
そして、後の茶人に「節」のある竹茶杓が受け継がれていった。
(展示は碌々斎宗左と大亀老師)

ケース6は掛物
最初はえらいお坊さんの墨蹟。ということで、南宋時代の僧侶のもの。
利休さんが語録とかの一句を選んで、一行物を掛けるようになったんだっけ?
春屋宗園は最初から茶席に掛けることを意識して、一行物を書いていたとか。
ちなみに、利休さんの消息を茶掛として使ったのは織部だったらしい。

ちなみに、4枚掛かっている中で一番印象に残ったのは利休筆の「白餅の文」。
藪ノ内剣仲から贈られたお持ちの令状。中廻しの裂地は秀吉の陣羽織で仕立てたとか。

ケース7は花入
これも室町時代の床荘りは古銅だった。
砂張の釣舟花入、いつ頃から使われたのだろう。←展示品が小さくて、ちょいびっくり。

古銅の曽呂利花入(利休曽呂利)。やっと鶴首と曽呂利の形の違いが理解できるようになった。

そして、利休が新たに好んだのが竹や瓢の花入。
竹花入は後の時代にも好まれていった。

ケース8は雲龍釜。展示は西村道也作。そういえば、この形は利休が好んだかたちだったなぁ、たしか。

ケース9は小間の茶室
炉釜の大霰尾垂(道仁作)が迫力あった。

で、一休みしてから講演会に出席した。

講師は今日庵文庫の谷端先生。たしか、著書を読んだこともあるし、自宅の本棚にもある。
この展覧会に合わせ、1月2月3月の月始めに開催されている3回シリーズの2回目。
テーマは「利休イノベーション その生涯と茶の湯・茶道具の改革」

聴くことが出来なかった初回は堺の街に生まれ育った利休が信長の茶頭になるまでの話だったようだ。

2回目はいよいよ利休が茶の湯や茶道具をどう改革していったのかというお話。

最初の頃は露地がなかったらしい。待庵にも露地はなかったらしい。
秀吉の朝鮮出兵で九州に出陣した箱崎の陣所に建てられた茶室の記述に内露地らしきものが出てくるとか。
坪ノ内とか脇坪ノ内といった段階を経て、現在の内露地と外露地になったとのこと。

堺市博物館が所蔵している聚楽第図屏風の一部に利休屋敷が描かれていて、その山門の屋根が槍返しになっていた。
「槍返し」とは裏からみると槍の穂先が通れるように?丸くくり貫かれているもの。
その門が大徳寺の龍光院(←曜変天目茶碗を所蔵している塔頭!)の山門に移築されたという伝承があり、
宗旦がこれを写して造らせたのが裏千家の兜門~

へ? 前の日に兜門を見物したんだけど、とゴソゴソとスマホを取り出して撮影した写真を確認。これかな?
講演会の後に思わず質問しちゃった。画像を示して「これのことですか?」って。

他には超ビックリしたことがある。
利休さん(までの?)の時代、濃茶は建盞天目茶碗で飲み、井戸茶碗は薄茶を飲む際に使われていた。
それが利休さんの頃に? 井戸茶碗で濃茶を飲むようになり、薄茶には国焼のお茶碗が使われるようになった。

ん?
これも、(講演会後に)挙手して質問した。
「ということは、長次郎の茶碗で飲んだのは~」「薄茶です」

え~~っ!

今って、楽茶碗、とくに黒楽茶碗で飲むのは濃茶でしょう~~~

秀吉とあれだけ黒楽だの赤楽だのバトルを展開したのに、それが薄茶の飲むための茶碗をめぐる対立だったなんて。
濃茶ならともかく、薄茶なんて茶事のおまけじゃんか~

たぶん、衝撃を受けたのはワタシだけではなかったと思う。

ちなみに、黒楽茶碗で濃茶の飲むようになったのは少なくとも江戸時代に入ってからだそうな。

いやはや、すごいことを聴いてしまった。

そのほか、利休の消息に遺されている茶道具を発注する際の指示書の細かさの解説もあった。
利休が作ったのではない。あくまで、使い勝手を考えぬいて、「この寸法で作りなさい」と
それまでに存在した茶道具をアレンジしたプロデュース能力が「利休のかたち」ということ。

例示されたのが手桶水指。三本脚の寸法に関して長さの指示をした内容。 へ? 桶水指に脚なんてあったか?

たしか、ケース3に手桶水指があったっけ。。。と講演会後に展示室に逆戻り。
確かに、低く、そして円周に沿って一寸ほどの脚が三方向にあった。
なるほど~。あ 正月に松屋銀座であった「利休のかたち」展で買った図録のことを思い出した。

自宅に帰って参照したら、その解説のあった部分もバッチリ掲載されていた。
この図録をちゃんと読めばいい復習になりそうだ。

あとは長次郎の初期の茶碗は重いんだとか。(故・林屋晴三先生がそう仰っていたそうな)
白鷺も重いんだって。まぁ、これは初期の作として有名だよね。
大黒も重いので、初期の作だろうとのこと。
ムキ栗も初期みたいだねぇ。

重い軽いと言われても、触ることが出来ないから展示されているもの見て想像するしかない。
次に長次郎茶碗を鑑賞する時は重さを想像するようにしよう。

てな感じ、1時間半の予定が30分超過し、さらに質問しちゃったので長引き、
おまけに復習で展覧会をもう一度見直したので、結局半日近く滞在したことになっちゃった。

湯木美術館にこれだけ長居をしたのは初めて。

せっかく年間会員になっていることだし、今年も茶道にかける予算は削らないといけないので、
せいぜい知識の方で茶道と付き合っていこうと思う。(ただし、美術館の見学料にも注意しつつ)

※湯木美術館バックナンバーリスト
 2019年11月 秋季展『伝統と創造を重ねる上方の手わざ −茶席を彩る江戸時代から近現代の名品−』
 2019年7月 夏季展『茶道具の次第―更紗を中心に―』
 2019年5月 春季展『「きれい」寛永×「いき」元禄-くらべて見える江戸茶の湯文化-』 
 2019年3月 特別展『湯木吉兆庵の雛道具―ひな祭りのしつらえと茶道具―』
 2019年1月 早春展『利休と茶の湯のエピソード-茶書に描かれた利休の姿-』
 2018年11月 秋季展『松平不昧没後200年 不昧の茶道具と近代数寄者 ―その書とデザイン―』(後期)
 2018年10月 秋季展『松平不昧没後200年 不昧の茶道具と近代数寄者 ―その書とデザイン―』(前期)
 2018年5月 開館30周年展『湯木コレクション選 その2 古筆と茶陶/吉兆庵 大師会の茶道具』
 2018年1月 早春展『千家に受け継がれる美の形』
 2017年9月 開館30周年記念『古筆と茶陶 名品をすべてご覧いただきます=その1= 湯木コレクション選-吉兆庵光悦会の茶道具-』
 2017年5月 春季展『ひと目でわかる京焼300年の歴史 江戸時代のやきもの―仁清・乾山窯と後期京焼の食器を中心に―』
 2017年2月 早春展『わび茶のすがた 江戸時代後期の千家と大名の茶道具』
 2016年11月 秋季展『茶道具と和歌 -ものがたりをまとった道具たち-』(後期)
 2016年10月 秋季展『茶道具と和歌 -ものがたりをまとった道具たち-』(中期)
 2016年7月 夏季展『茶人のたしなみ 茶事へのいざない―夏の茶道具―』
 2016年6月 春季特別企画展『茶陶いっき見‼ やきもの百花繚乱 ―宗旦・宗和・遠州とその時代―』 
 2016年2月 春季展『おしゃれな名品たち―茶道具の文様・めでたいデザイン―』
 2015年11月 秋季特別展『禅僧と茶道具―大徳寺を中心に―』(後期)
 2015年10月 秋季特別展『禅僧と茶道具―大徳寺を中心に―』(前期)
 2015年6月 夏季展『小さな茶道具の豊かなデザイン―香合・羽箒・炭斗をみてみよう―』
 2015年4月 春季特別展『茶道具の創出(クリエイト)・再生(ルネサンス)・世界化(グローバル)-逸翁と吉兆庵のコレクションから-』 
 2015年3月 春季展『楽歴代と千家歴代の茶道具-利休のデザインと展開-』(後期)
 2015年2月 春季展『楽歴代と千家歴代の茶道具-利休のデザインと展開-』(前期)
2014年11月 秋季特別展『大名家の茶道具コレクション-遠州と不昧の蔵帳から-』後期
2014年9月 秋季特別展『大名家の茶道具コレクション-遠州と不昧の蔵帳から-』前期
2014年7月 夏季展「酒井抱一の短冊で一年と楽しむ -待合掛と茶会の道具たち-」(短冊の方)
2014月7月『酒井抱一の短冊で一年と楽しむ -待合掛と茶会の道具たち-』(茶会の道具)
2014年6月『海を渡ってきた茶道具-名物記・茶会記に現れた唐物・南蛮・高麗-』
2014年2月『激動期の茶の湯』(前期)
 2013年12月『湯木貞一の眼差し 茶の湯と料理の器』後期
 2013年9月『湯木貞一の眼差し 茶の湯と料理の器』前期
 2013年7月『吉兆庵湯木貞一の茶事-五月雨の茶事・朝茶-』
 2013年6月『茶の湯の漆器―利休と不昧のデザイン―』2期
 2013年4月「茶の湯の漆器―利休と不昧のデザイン―」1期
 2013年1月「江戸時代の千家のわび茶 宗旦の高弟とその子孫たち
2012年10月「関西数寄者の茶道具」(前期)
2012年5月「名物記に載せられた茶碗と名碗たち -高麗・樂・国焼を中心に-」2期
2012年3月「名物記に載せられた茶碗と名碗たち -高麗・樂・国焼を中心に-」1期
2012.2月「千家名物とその周辺-利休・少庵・宗旦の茶道具 
 2011.12月 秋季展「茶道具の琳派」
 2011.8月 夏季展「夏の祭釜と茶道具」
 2011.6月 「日本料理の開拓者 吉兆庵湯木貞一生誕110周年記念展」三期「湯木貞一の茶道具 - コレクションから」
 2011.5月 「日本料理の開拓者 吉兆庵湯木貞一生誕110周年記念展」二期:「数寄者との交流 - 小林逸翁・松永耳庵・松下幸之助」
2010.9月 『上方豪商の茶』
2010年5月 『釜と水指』
2010年3月 『茶の裂地』
 2009年11月 『棗と茶杓』
 2009年5月 『千家十職-茶道具と懐石の器』
2008年10月 『茶道具と器にみる四季の花』
2008年3月 『茶碗を愉しむ』
 2007年11月 『風流と美』


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