裏山赤太郎~ゲイでエイズで、でも生きてくよ!~

ゲイとして生きて、50代でエイズを発症したけど、自分らしく生きていくことには変わりないないんだよってブログ。

HIV感染がわかったとき~2

2015-06-30 15:01:48 | 日記
消化器内科の医師からHIV感染を宣告された後、
私は頭がジーンと痺れたような感覚で病院を出た。
そのまま会社に向かい、
午後から仕事に戻った。

私は自分でも驚くほど、
冷静に事を受け止めようとしていた。
人はショックが大きいと、
その際には冷静に振る舞えるものなのかも知れない。

「そもそも、感染するようなことをしていたのだから。」

「来るべき時が来た。」

そう自分に言い聞かせながら、
これまでセックスした相手を思い起こしていた。

あの時のあの男だったのか・・・・

それともあいつか・・・・

あそこでやった奴か・・・・

そんなことを思い起こしても無駄なことだ。
そう心を落ち着かせようとしては、
もしあの男だったら・・・という考えが浮かぶと、
わずかながら恨みのような感情さえ心をよぎった。

あいつに病気のことを確認してみようか?

いや、そんなことして何になる・・・

これから自分はどうなるんだ・・・・

生きていけるのか?

いや、大丈夫だ・・・・

今は良い薬が出来ていて、
ちゃんと治療すれば普通に生活もできるって聞いている。

病気の宣告を受けた日から
翌週の血液内科の診療日まで、
不安は私を支配しようとするかのように膨らみ、
そのたびに理性を呼び覚ましては理性を保とうとする自分がいた。

しかし、まだ自分には大きな感情が無かった。
私はその時、すでに心を病みかけていたのだった。
様々なことがうまく行かず、
転職して就いた仕事にも馴染めず、
上司の叱責などで強い自己否定の中にいた。
崩壊する自分の精神を必死に抑えながら、
自分の感情を押し殺して、
まるで感情のないロボットのように働き、
生活していたのだった。

そのおかげで、私は病気の宣告に対しても、
取り乱すことよりも、
感情というものを凍結させて対応していたのだった。
とにかく、冷静に。
現実を切り抜けるためにはどうしたらいいか。

私は血液内科の診察日前に、
役所に電話して医療費についてどうしたら良いか、
手続き方法を確認したりしていた。

私は不安に負けないように、
とにかく具体的な対応策だけを考えるように努めていたのだった。

大丈夫、なんとかなる。

なんとかしなきゃ。

大丈夫だから・・・・

すべての感情をブロックして、
私は何度も心の中で繰り返していた。

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