中3の頃。
なかなかのバカだったが、バカなりの夢があった。
いくつかある夢の一つが、ダース・ベイダーの「中の人」であるデヴィッド・プラウズに会いたい、というものだった。
ダビングしたVHSテープで観るスター・ウォーズに夢中だった。
中でもダース・ベイダーのかっこよさに。
今でもだけど。
どの作品でも、ダース・ベイダーは素晴らしくかっこいい。
圧倒的悪 → 運命を揺るがす悪 → 迷いのある悪
作品ごとに違う表情があった。
マスクや衣装は同じでも、身振り手振り、演技に表情があった。
英語は0点を取っても(マジで取ってた)、セリフだけじゃない演技が確かにあった。
21歳になった。
上京して間もなく、フィギュアブームとスター・ウォーズ/エピソード1公開の波に乗って、デヴィッド・プラウズ氏が来日した。
あっけなく夢がかなった。
めちゃくちゃ緊張して吐きそうになった。
お気に入りのライトセーバーにサインを貰おうとした。
しかし、それには既に以前の保有者がしてもらったものだろう、サインが書かれていた。
でも、自分の目の前で、私にサインをしてほしかった。
氏は「これにはもうサインがしてあるじゃないか」と。
私は緊張で震えながら「もう一度私のために書いてくれませんか」とかなんか、そんな事を言った。
氏はヤレヤレといった感じで、サインの上からサインをなぞった。
それでもう満足だった。
数時間後。
サイン会終わりの時間に、もう一度見に行った。
お店(会場)のすみでじとっと見ている私に、デヴィッド・プラウズ氏が手招きした。
無言で、さっきのサインとは反対側に、「May the Force be with you」とメッセージ付きでサインをくれた。
嬉しくて嬉しくて、感動して「ありがとうございます!ありがとうございます!」と舞い上がっている私に、氏は「まだインクが乾いてないから触らない方がいいぞ」と言った。
その後。
デヴィッド・プラウズ氏は何度か来日した。
その度にサインを貰いに行った。
色んなグッズにサインを貰った。
夢見るバカも30歳。
最後にお会いしたのは2008年の『スター・ウォーズ セレブレーション・ジャパン』という大きなイベントだった。
今まで沢山のグッズにサインを貰った。
今回は何か謝意を伝えたい、と『時計仕掛けのオレンジ』のDVDを持っていった。
氏はこの作品に、ジュリアンというマッチョ男の役で出演している。
ダース・ベイダーのあなたに会いに来たんじゃないんですよ、デヴィッド・プラウズという俳優に会いに来たんです、と伝えたかった。
氏はいつものサイン会では見せないような笑顔で、サインを書いてくれた。
その笑顔を見て「ああよかった、謝意や敬意が伝わったかな!」と思って嬉しくなった。
先日、デヴィッド・プラウズ氏が亡くなった。
誰がやっても同じなんて言わせないし、誰も言えない。
デヴィッド・プラウズこそダース・ベイダー。
あの日、暑くてアビイさんが汗だくになりながら、「また入ってもいいですか?」と聞いたら「いいですよ!」と言ってくれたのを覚えています。
その後も何度かお会いしましたね!
また何かの折にお会いできる事を楽しみにしています。