野田隆稔ブログ

日記・評論・エッセイなど、日々思ったことを公開しています。

民間軍事会社

2005年05月15日 22時52分31秒 | コラム
「民間軍事企業」について
 齊藤さんが拉致されて、一躍有名になったのが「民間軍事企業」である。PMC(Privatized Military Company)と言われているが、アメリカではPMF(Privatized Military Firm)民間軍事請負企業と呼ばれている。
P=W=シンガーが『戦争請負会社』(NHK出版)という本を書いている。その本を読めばPMCの実態がよくわかる。一読をお勧めする。ただし、面白くスイスイと読める本ではない。
昔は傭兵と呼ばれ、その存在は古代からあった。ローマ帝国ではゲルマン人が傭兵として活躍し、傭兵隊長オドアケルが西ローマ帝国を滅ぼしたことや、1618年から始まった30年戦争ではワレンシュタインが傭兵隊長として活躍し、皇帝になろうとして殺されたことも有名である。
傭兵で活躍したのは独立以来、戦争をしたことがないスイス人である。彼らは出稼ぎとして傭兵になっていた。ネパール人のクルガ兵も傭兵として名高い。
イラクでネパール人が拉致され、12人が殺された。彼らはクルガ兵で、傭兵としてPMCに雇われていたから殺されたのだ。私は不覚にも、そのときは気がつかなかったのだが、ネパールとクルガ兵が結びついたときに、殺された意味がわかった。
またイラクの話になるが、イラクの砂漠で米兵の遺体が埋められていたのが発見された。米軍の制服は着ているが、彼らは米兵ではなく、PMCの社員だ。だから、米兵は彼らを埋めただけで、死体を基地に持ち帰らなかったのだ。
PMCの社員なら、責任はPMC側にあり、米軍にはないのだ。高い金を払い、PMCから軍事要員を雇っても、保障はしなくてもいいし、政府は国民から責められなくてもいいから、大きく見れば安上がりなのだ。
今回の齋藤さんも責任はHart社にある。Hart社と斉藤さんの間にどんな契約内容が交わされたかは知る由もないが、おそらく万が一のことも想定された契約を結んでいると思う。
齋藤さんの事件で、世論がもう一つ沸かないのは、厳しい言いかたをすれば、覚悟の上で言ったのだから仕方ないと言う雰囲気があるからだと思う。
PMCは紛争や戦争によって成り立っている会社だから、それがないと生きていけない。彼らが政治家と結びついたら、恐ろしいことになる。つまり、戦争や内戦は彼らによって作り出されると言うことだ。

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アメリカの戦争映画の見過ぎでは? (とら)
2005-05-17 20:58:30
野田さんの、民間軍事企業 に対する見解は、どうも私は、反対なような気がしてならない。



「PMCは紛争や戦争によって成り立っている会社だから、それがないと生きていけない。彼らが政治家と結びついたら、恐ろしいことになる。つまり、戦争や内戦は彼らによって作り出されると言うことだ。」



この文面の最後のところで、「戦争は、彼らによって作り出される」と言われているが、私に、言わせれば、戦争が、彼らを作り出しているのではないか。

戦争が、なければ、彼らは必要が無い。戦争が、彼らを必要とし、民間軍事企業を作り出していると言えないのだろうか。



傭兵のことでも、傭兵を必要とする、争い事があるから、それを解決する手段として、傭兵と言うものを作り出したと、言えないのだろうか。



企業と言うものは、その企業が必要とされるところに、出来るのが一般的である。

それは、マッチポンプ式に、火をつける人がいるから、ポンプが必要になる場合も確かにある。しかし、火をつける人は、決して民間軍事企業では無いであろう。

それは、政治家だったり、一部の民衆だったり、一部の権力者だったりする。



必要は、何とかと言うが、正に、民間軍事企業は、この何とかに当るのではないか。

軍事産業が、その製品を売るために、戦争を起こすと言うのは、アメリカの戦争映画の見過ぎだと思う。

野田さんのレスを期待します。



死の商人 (野田)
2005-05-20 10:54:29
とらさんは、どうして戦争が起きると思いますか。

領土・資源・宗教・民族・政治問題が戦争の原因だと言われていますが、それもありますが、私は「私の商人」の存在が大きいと思います。彼らが、政治家と結び、政治家を動かし、戦争を仕掛ける。今回のアフガニスタン、イラク戦争でもハリーバートンなどの軍需産業とブッシュ政権は結びついていた。

PMOは戦争(紛争も含む)がなければ存在できない会社です。だから、戦争が必要なのです。軍需産業と結びつき、政治家と結びついて、戦争を企てることもありえると思います。

アメリカ映画はとらさんの指摘するようなことを描いていますか。作品名を教えて下さい。ビデオ屋で借りてきて見ます。

利権 (とら)
2005-05-21 10:35:02
「私の商人」という言葉を見て、一瞬何のことか分かりせんでした。「わたくしの商人」とは、なんぞや?題名が「死の商人」となっていたので、ようやく納得した次第です。



それと、他のレスに、「謝る」と書くべきところが、「誤る」となっていました。

このような、キーの言葉は、いくら急いで書いたのだとしても、やはり気配りをするべきではないでしょうか。人間ですから、間違えると言うことは、皆無ということは無いにしてもです。



戦争の原因は、イデオロギーでなければ、利権でしょう。日本が起こした、太平洋戦争も所詮は、石油と鉄鉱石の利権にかかわるところから、起ったのだと理解しています。



資本主義ですから、利権に結びついた、企業は必ずありますが、だから、その企業のために、戦争が起ると言うのは、何か、考えが短絡的過ぎるような気がします。



イラク戦争の誤りは、イラクというイスラム教が支配する国に、キリスト教的な、資本主義の考えが通ると思ったことではないかと思います。



日本が戦争に負けて、すぐにアメリカの支配に従順に従ったのは、そのような、強い宗教も無かったし、資本主義の素地が元々あったからなのではないでしょうか。



今、ちょっと、アメリカ映画の題は思い出せませんが、最新の武器をテロ集団に売ろうとするアメリカ企業があり、それをヒローが阻止するという映画がありました。



アメリカ映画のことですから、勧善懲悪であることがほとんどです。

だから、大統領が、悪者になるのではなくて、取り巻きが悪者である場合が、多いですが、そんな映画は、所謂、「死の商人」との関係が、描かれています。



恐縮ですが… (尾崎)
2005-05-24 00:29:29
>とらさん

そんな「鬼の首とった!」みたいに言わなくても…「誤変換が多いようなので気を付けてみてはいかがでしょうか」くらいの言い方で良いんじゃないかなあと見てて思いましたw

仰るとおり、間違いや誤解は誰にでもあるものですよね。例えばとらさんのレスにある「ヒロー」とは何でしょうか。おそらく英語のHEROをカタカナ化したものでしょうが、一般的には「ヒーロー」と表記するのが普通かと思います。これは間違いではないかもしれませんが、わかりにくい・誤解を生むという点では同じでしょう。





では本題。とらさんのレスについて恐縮ながら。



確かにはじめは「戦争が軍需産業をつくった」といえるでしょうが、既に軍需産業の発達してしまった状態で考えればどうでしょう。

軍需産業が所与のものであるという状態で戦争がなくなってしまったらその産業は死滅します。だから戦争を続けざるを得ない、と。

野田さんは、軍需産業が既に発達してしまっているという前提に立って、「彼らが戦争を産み出す」と言っているのではないでしょうか。



横レス失礼いたしました。
誤変換について (とら)
2005-05-24 09:40:04
尾崎さん、私の、言葉の使い方について、誤りではないにしろ、普通の使い方ではないことについて、指摘頂きましてありがとうございます。



私は、「鬼の首を取った」つもりで言っているわけではありません。

私は、視覚障害の方が多く入られている、MLに入っています。

そのMLでのメールは、漢字の誤変換のかたまりのようなメールがあります。

最初は、私は、指摘していたのですが、この頃は、言わなくなりました。



なぜなら、そんな親切心が薄れたからです。指摘したからと言って、必ずしも、お礼を言われるわけでもないので、何か悪者になったような気分になるのには嫌気がさしたのです。

誤変換は、誰でもあります。しかし、たいがい意味が分かれば良いと言う態度で、指摘はしません。指摘することは、勇気が要ります。



最近は、製造メーカーでも、苦情は、宝の山だという考えがあります。商品を差別化するヒントになるという考えです。



そんな、考えから、野田さんは、心の狭い方ではないと思いましたので、変換に関して、指摘しました。指摘は迷惑だと思われるなら、これから言わないことにします。



本題の、軍需産業のことについては、又、別に議論します。



少し切り口を変えます (とら)
2005-05-25 09:31:22
少し、切り口を変えて、軍需産業があるから、戦争が無くならない、という議論は、少し置いておいて、では、軍事産業は、絶対悪かと言うと話しです。



軍事産業は、戦争のためにあるものだから、コストは、考えません。価格が非常に高くても、軍事的に有効だと分かれば、それは成り立ちます。



そこで、発達した技術が、何と多く、一般の使用に使われているかです。

身近なことでは、カーナビで使われる、GPSシステムが、そうです。

宇宙産業などは、その典型です。大陸間弾道ミサイルの技術です。

気象衛星やら、一般に役立つ衛星、例えば、資源がどこにあるかを宇宙から探索する技術などなど、元々、軍需産業としての、開発がなければ、あり得ません。



軍事産業として開発されてものを、一般に使うのは、けしからん、と言う人がいました。

しかし、その人は、その恩恵を充分受けている。その事実を知らずにそんなことを言うのは、全く世間知らずとしか言えません。