融通無碍なる留学生活

~豪に入っては豪に従います~

この人たちの本気具合。そしてヘンな曲発見。

2006年11月23日 | 音楽
オーストラリアの作曲家、過去25年間、292人による1271曲のピアノ・ソロ作品に限りました、というニッチだけど立派なカタログが手に入った。2006年10月版。作曲者情報、演奏時間、形式、難易度、特徴、出版、音源情報などが掲載されている。製作者はDr Jeanell Carrigan。もし日本でこれだけのもの作るとなったら、科研費でもとって数年かけなきゃ無理だろうな、とか思うシロモノ。もともとは数年前の彼女の博士論文の一部として収集した情報からスタートしたもので、ここにAMCが全面協力をしてまとめているらしい。第4版。これ、買ったら60ドルもするらしいのだけど、AMCに「日本にオーストラリア作品を紹介したい」と持ちかけたことがきっかけとなって(正式にはPTNAを通じて公開しようと思っています)、General ManagerのJohn Davis氏が今回のカタログも気前よく送ってきてくれた。すばらしい、AMC。本気だね、AMC。

書誌情報:
Carrigan, Jeanell. Australian Solo Piano Works of the last twenty-five years; Fourth Edition. Sydney: Australian Music Centre. 2006.

AMCは出版譜やCDも多いけど、教育的な事業にも力を入れている。このカタログの製作者であるCarriganが演奏している《Piano Games》というCDは、とくにピアノ学習者のために集められた小さな作品の数々が収められている。もちろん、全ての曲がオーストラリア産。こっちのビッグネームであるロス・エドワーズの作品なども入っているのだけど、ロスをしのぐほどの(と私には思える)際立った(ヘンな)曲がありました。

アンドリュー・フォード作曲
《8羽のオーストラリアの鳥、20世紀の音楽を発見》

これ、タイトルもおかしいけど、個々の曲のタイトルになると、もっとおかしい。

1. エミューがアルバン・ベルクを真似る
2. オーストラリアヅルがバルトークのように振舞う
3. コトドリがリゲティに恋をした
4. オウムがアルヴォ・ペルトのために羽づくろい
5. ワライカワセミがジョン・ケージを想う
6. モモイロインコがぽかんとグラスを見つめる
7. ツカツクリがスカルソープに降参
8. ありふれたマイナがメシアンのものまね

なんかもう・・・・きちゃってる。スカルソープ(豪作曲家)をそこに混ぜますか、しかも降参ですか、みたいな。
で、曲はというと。ちゃんと、それっぽいんですよ。笑えます。
ぺルトのなんか、いい感じです。ああ、そうそう。ペルトってそうよね~みたいな。ケージは、あ、はいはい、プリペアドっぽくね~、グラスは、あ、左手いっぱい繰り返すのね~、みたいな。メシアンが一番やっぱり鳥っぽいですよ。いや・・しかし、怖いもの知らずな・・・って感じはします。

そして先のカタログでこの曲の解説を見てみると、なんでも「これらの作曲家の
特徴的な音使いが見事に提示されており、現代音楽の音や技術に興味をもつ子供たちのための、優れた教材」ということになっている。あ、そうですか。笑っていてはいけないのでした。本気なのです。ええ、そうですとも。優れた教材なのです。

ところで、ツカツクリが降参したピーター・スカルソープですけど、ピアノ曲《Dijile》という作品、これはとても美しい。アボリジニのメロディーを元にしているとのこと。楽譜を入手したいと考えています。