非情

スローモーションのように
崩れ落ちた
二基の神輿。

雨も土砂降りに変わる。

大原八幡神社の神輿は
真っ直ぐ落下、
玉前神社の神輿は
左側に倒れ落ちた。

神輿も大きく損傷。

その瞬間、
倒れ落ちた神輿の屋根が
倒れた女子中学生の
足を直撃。

地面と屋根に
足を挟まれた。

彼女は失神状態。

すぐさま救助。

こんなときって、
すごい力が出てしまう。

神輿を起こしてしまった。

っが、
そんなこと
言ってらんない。

３人たかって
神輿から離れた場所へ
彼女を運ぶ。

すぐそばに
ガードマンが５人。
俺は、
そのガードマンに
「救急車っ！救急車呼んで！」

彼女を仰向けに
置いてしまったので

「だめだめ！横向きにして！舌が詰まって窒息しちゃう！そう、っで、足を組ませて、あ、そこの人！傘貸して！協力してください！」

少し離れて
立ちすくむ
ガードマン。

「っらぁっ！てめぇ！なにやってんだよっ！早く救急車呼べっ！」

さらに少し離れて
立ちすくむ
ガードマン。

「っち、つかえねぇ！」

氏子の一人が
彼女に顔を近づけ、
「息はある！」

彼女の頬を軽く叩く。

(氏)「おいっ！大丈夫かっ！」
(中)「・・・ん、ん？」
(氏)「お、よし！」
(中)「え…？何？」
(俺)「っしゃ、じゃ、ここお願いします！」
(氏)「おし！」

神輿の方へ戻ると
多くの担ぎ手が
倒れてる。

中には
出血した者も。

「大丈夫か！」
「救急車まだか！」
悲痛な大声が飛び交う。

非常

各報道で
ご存知の方も
いらっしゃるでしょうが
“通称”
『大原はだか祭り』
の初日、
大別れ式会場に
雷が落ちました。

大原八幡神社と
我が玉前神社が
その落雷の
被害に遭い、
多くの負傷者を
出してしまいました。

いろいろな
“デマ”が
飛び交っておりますので
ここで
改めて真実を述べます。



大別れ式後半、
我が玉前神社は
一旦神輿を置いた後、
若頭である俺は
「いくどぉ！たかってくんなよぉ～！」
と、みんなに指示。

神輿を上げ、
最前線で誘導。

やさしく
寄り添うように
神輿群へ入れた。

“わぁ～けもぉんどぉ～もぉ　わぁ～かぁ～れぇ～がぁ～つぅ～らぁ～いぃ　ぉおおぉてぇ～わぁかぁれぁがぁよおぉ　なぁ～けぇ～りゃぁ～よぉおいぃ～”

一度合わせてから
ちゃちゃっと
会場から出そうとしたが
なんだか、
会場出口附近で
どっかの神社が
もめてるようなので
なかなか進まない。

「詰まってるみてぇだかっよぉ、じっくりやっべよぉ」

と、そこへ
大原八幡神社の神輿が
寄ってきたので
併せた。

神輿の
すぐ前にいた俺は
小雨の夜空をバックに
神輿を見上げ、
しばしこの情景を
眺める。

「やっぱ、いいぃ～ねぇ～」

“わぁ～けもぉんどぉ…”
『ッパーーーンンン!』
「！？！？！？」

すっごい音だった。

我々の神輿の真上、
空の雲が
円盤状に
白く光った。

「えっ！？」

雷だ。

だが、
稲妻は見えない。

その瞬間、
高々とさした神輿が
崩れるように落ちた。

例大祭～初日・港～

五穀豊穣・大漁祈願祭
会場。

雨風強し。

例大祭～初日朝～

おめでとうございます。

始まりました。

例大祭～前日③～

境内準備と
御霊入れのあと、
夕べの火災出動の
後片付け。

他の分団から借りてた
ホースを
高圧洗浄機で
洗う。

みんな、
夕べから寝てない。

例大祭～前日②～

御輿を掃除して
漆部分に椿油を塗布。

大正末期製作の
古い御輿だけど
煌びやか。

神主さんに
御霊入れを
してもらい
御神酒をいただき
しばし歓談。

例大祭～前日①～

御霊入れの儀を前に
朝７時から
役員と若衆が集合し
境内の飾り付け。

落ち着けっ！

午後、
配達途中に
広報無線からまた、

『ぅおぁ～んん・・・』

「あ゛～！ったく！」

祭り前の
このクソ忙しいときに
また火災発生。

近くを走ってたので
直接火災現場へ。

今回も
草っ原。

すぐ鎮火したけど、
気ぃ～付けてくんなョ、
マジで。



大原は今、
あちこちで
祭り仕度。

商店街の
祭り用品を売るお店も
それとなしに
繁盛してる様子。

今年、
俺のセガレが
北日在玉前神社の
氏子としてデビューする。

唄の練習会でも
それとなしに
しっかり唄えてた。

同い年の子供らとも
すぐに
打ち解けていたから
まずまず安心。

だが、
５年生とはいえ、
チビスケ。

大原最北端から
２日間の行脚。

スタミナが心配。



俺の腰も心配。



正味、
明日から４日間は
お仕事お休み。

祭り明けからの
仕事の予定が
詰まってる。



今週は、
いろんな意味で
落ち着かない。

火事場の馬鹿話し

お昼前、
広報無線から、

『ぅおぁ～んん・・・火災発生、場所、日在・・・』

「なっ！？」

うんならかして
機庫へ。

出動。

現場は草ッ原。

先着していた
本署のタンク車の
消火活動で鎮火。

事なきを得た。



鎮火後、
消防団本部にいる
先輩Ｓ村さんから
声をかけられた。

(Ｓ)「あのぉっさぁ、結婚パーティーやろうって決まったんだけどさぁ」
(俺)「誰っすか？」
(Ｓ)「いや、まめっぱちゃんの」
(俺)「は？」
(Ｓ)「俺が幹事なんだけどさぁ、“いつ？”とか“場所は？”とか、まだ決まってないんだけどさぁ、まぁ、とりあえずぅ、３００人くらい呼ぼうかと」
(俺)「ずいぶんこじんまりっすね」
(Ｓ)「んじゃぁ、１５００人くらい」
(俺)「・・・っつうか、いぃっすよ、そんな」
(Ｓ)「いやっ、やるから、っつうか、俺が大勢で呑みたいだけ、結婚おめでとう」
(俺)「あぁ・・・、ありがとうございます」

火事場でこんな話しも
どうかと思うが、
ま、嬉しいことだ。

はて、
どうなることやら。

ご注意

夕方、
いすみ警察署
東海駐在所の
駐在さんが
ウチにきた。

(駐)「こんにちゎぁ」
(俺)「はい、こんちは、なんすか？」
(駐)「あのぉ～ですねぇ、ここのところですねぇ、事務所ぉ～の空巣被害がですねぇ、多発ぅ～しておりましてですねぇ、日在でもですねぇ、今朝方ですねぇ、１件ありましてですねぇ、まぁ、未遂だったんですがぁ～、今ですねぇ、近所の皆さんにですねぇ、注意を呼びかけてですねぇ、まっわってですねぇ、おりますぅ～」
(俺)「そっすか、ご苦労様です」

空巣、
朝４時頃だそうな。

テレビで見たけど、
そんくらいの時間って
多いんだってね。

いすみ警察署の場合、
通報から現着まで
どんなにとばしても
どうしても５分は
かかってしまうそう。



用心しましょ。