総合漢方にんぷ薬・総合漢方育児薬

~頭を使ってではなく、カラダ(感性)で子育てしてみませんか~

超強力陣痛促進剤  その1 怠けない! 

2011年11月25日 | エッセー
 「あのねぇ~。陣痛が始まったら、だんなの1週間分のカレーとかおでんを作って、1週間分のワイシャツのアイロンがけをして、それでも時間があるようだったら、窓もピカピカに磨いてから来なさいねぇ~。」
とは、助産師イワバーの名ゼリフ。
 つまり、陣痛が来てからも動けということだ。病人みたく横になっていてはいつまでたっても強い陣痛はやってこない。
 昔から、トイレ掃除をしたら安産になるという言い伝えがあるけど、ま、それと似たようなもの。
 長男を妊娠して、ハテ?どこで産もうかと悩んだ。ブランドお産とは何ぞやという視点で思考すると、『数年前まですそを切るのは、初産婦だけだったのに、最近は二人目も三人目も切るようになった。叶うなら、すそは切りたくない。自然分娩でお産をしたい。』となる。そうなるとやっぱり助産院で産むっきゃない。 ということで探しに探して、アパートから車で1時間のイワバァー助産院で産むことに決めた。
 何しろ、はじめてのお産なので、全てが未知との遭遇だ。
 今から考えると実におバカさんな私が続出する未知との遭遇お産体験だった。
 深夜、いきなり10分間隔の強い陣痛が襲う中「あすの朝起きたら、まず、カレーを作らなきゃ。」って本気で段取りを考えていたんだから、とんだ間抜け人間だった。
 初産婦の場合、一般的には、1時間に1回2~3分程度の陣痛から始まり、少しずつ陣痛の間隔が短くなっていく。そして、10分間隔の陣痛開始から平均15時間で産まれると言われている。しかし、病人のようにゴロンと寝転んでいたら、強い陣痛が育たず、パワー不足で微弱陣痛になり、難産への道を自ら選んでしまうことにもなりかねない。
 ところで、胎児・産道・娩出力の三つを分娩の三要素という。
 つまり、赤ちゃんが元気で、通り道がよく伸び縮みし、強い陣痛が押し寄せると安産の神様がニコッと微笑んで待っている。
 強い陣痛は育てるものって知っていた?
 私は知らなかった。
 強い陣痛は、①太りすぎない ②怠けすぎない ③上手な腹式深呼吸 ④あっためる の四天王の相乗効果でパワー全開する。
 やっぱり、妊娠して体重が10kg以上増えると微弱陣痛で二晩も三晩も寝れないしんどいお産になりやすいような気がする。なぜなのかなぁ~?子宮の周りに脂肪がついて、子宮筋(子宮は筋肉なのだ)も松坂牛みたいに霜降り状態になり、筋肉の伸び縮みがうまくできなくなるのだろうか。やっぱ、霜降りだとギューっと縮みにくいだろうなぁ~。と勝手に想像する。
 イワバーは、こうも言っていた。
 「あのねぇ~。もし、予定日を過ぎても陣痛が来なかったら1日10km歩きなさいねぇ~。」
 予定日を過ぎると、精神的に落ち着かなくなる。ソワソワしてくる。地に足がつかなくなる。おまけに、病院に行くと「胎盤の状態があまりよくありませんので早く産ませましょう。」などとおっしゃるものだから、不安が倍増する。妊婦に不安は禁物。なのに、不安でいっぱいになる。
 わたしなんか、産休に入ったら、毎日2時間ウインドショッピングに励んだもんね。
 思いおこせば、あの日は、12月21日土曜日。木枯らしの吹く寒~い日だった。予定日は12月27日。その日の広告に、ある布団屋さんの店じまいマラソンセールの折り込みチラシが入っていた。正午までは30%OFF、午後7までは50%OFF、午後7時から9時までは70%OFFとどんどん安くなるというセールってやつだ。
 シングルの布団しか持っていなかった私は、赤ちゃんと添い寝するには、ダブルの掛け布団があったほうがいいなと思い、夕方7時前、寒い木枯らしの中、片道30分の道のりをテクテク歩いていった。
 お店に入ると、誘惑されてしまいそうな商品ばかりであったが、その中でも、15万円という定価の羽生布団が5万円になっていて「ほしい~。」という衝動にかられた。でも一方で「でも・・・。どうしよう。」と悩む私がいた。
 当時、夫の帰りはいつも10時過ぎだった。結婚したとき、「1万円以上する買い物は二人で話し合ってからにしよう。」と夫の提案で約束をさせられていて、そのことに悩んだ。セールは、本日限りだ。でも、相談する暇がない。(当時は、まだ、携帯電話がなかった。)
 「え~い、必需品だ。買っちゃえ。」

 その夜、10時過ぎ、夫はいつもどおり疲れた顔で帰ってきた。が、しかし・・・・。玄関に置いてある大きな包を見て、「何だ。これ?」と引きつった顔で聞いてきた。やっべぇ~と思った瞬間、危惧していたとおり激怒した。
 そして、一言も口を聞かず、プイっと横向いてふて寝してしまった。とりつくしまもない私は、仕方なく背中を向けて横になったが、眠れるわけがない。
 時計の音が、12時、1時と鳴った。
 シーンシーンと時が過ぎていくなか、私の悶々とした気持ちに、ジーンジーンと生理痛?のような痛みがうっすらと腰の方から侵入してきた。
 『もしや、こらが陣痛???』
 『やばい。どうしよう。夫に甘えたくても甘えられない。こういう時にかぎって・・・。』
 『マジ。やばい。いきなり10分間隔だ。普通、1時間に1回からスタートするんじゃないの?初産婦は時間がかかるんじゃないの?教科書には載ってなかったぞ。誰も一言も いきなり10分間隔もあるって教えてくれなかったぞ~。』
 四つん這いになって一人哀しい気持ちで腰をさすり、ラマーズ法の痛みをそらす呼吸「ヒーヒーフーウン」をくりかえす私。
 夫は、隣で、「フンガーフンガーゴーゴー」をくり返し、びくともしない。
 真夜中の丑三つ時に、「ヒーヒーフーウン」と「フンガーフンガーゴーゴー」の大合唱だ。
 それだけならまだいい。なぜか、突如、ウンチをしたくてたまらなくなった。津波のように押し寄せてくる陣痛を必死でこらえながら、壁伝いにトイレまで這っていっては帰り、這っていっては帰りを何度くり返しただろう。6回?いや7回?『まぁ~、よくもこんなにお出ましになるもんだ。』とびっくらこいた。(失礼!)バケツ1杯は出たような気がする。(たびたび失礼!)
 今ならわかる。
 見事な自然の摂理だ。
 赤ちゃんの通り道をなるべく広くするために、腸の中身を全て出し切るのだ。ホルモンの働きってすごい。生理が始まる時と同じホルモンが生理の時より多量に分泌されているんだよね。しかし、この素晴らしい話も聞いたことがなかった。
 そんなこんなで、小一時間。
 外は、雪も散らつく寒い夜。暖房も効いていない寒い部屋に、ケンカして寒い気持ちを抱きながら、布団とトイレを四つん這いで行ったり来たりするチョーかわいそうな私がいた。
 夜中の3時。
 「何しているんだ?」とふと目は覚めた夫が、異変を感じて声かけてきた。
 「陣痛が来たみたい。」
 この一言で、夫の怒りはぶっ飛んだ。
 が、しかし、お互い初体験だ。10分間隔とはいえ、74才のイワバーを夜中に起こすなんて申し訳ない。とにかく、朝の5時まで待つことにした。舵のとり方がさっぱりわかんない。後で思えば、ぞっとする。決死の覚悟で船出する赤ちゃんにとって、イワバーの睡眠を考える余裕なんてあるはずがないのに・・・。おっかしいよねぇ~。トホホ。
 そんなこんなで、イワバー助産院に着いたのは、夜も白白と明け始めた午前6時。東に向かって車を走らせたので、夫は朝日のまぶしさと闘いながら、そして、私は、助手席で「ヒーヒーフーウン」と陣痛と闘いながらの、キャンドルサービス以来はじめての夫婦共同作業だった。フー・・・・。


 『陣痛は、歩いた分だけ強くなる』  の巻でした。


次回は、『超強力陣痛剤 その2 たった1回の腹式深呼吸』  です。
 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夢破れてオチンチンあり  ... | トップ | 超強力陣痛促進剤  その2... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

エッセー」カテゴリの最新記事