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読書の森

幸福な時間 その5

手直しどころか、書き進む内に大幅に内容を変更してしまいました。高校のサークル誌に載せられないです(゚∀゚)

(本文)

紗栄子への「秘めた恋」を俺が語れるのは藍沢にだけだった。他にお喋り出来る仲間がいない訳じゃない。学校の話、進学の悩み、など藍沢と喋る内容じゃない、恋バナにしたって他人の恋なら冗談口はいくらでも叩ける。

ところがこと自分の中身、殻を取った生の部分を曝け出せるのは藍沢以外に誰もいない。
藍沢の持つ複雑な家庭の事情、彼はそれに全然触れはしなかったがある程度知っていた。だからこそ俺は脆い自分の中身を見せる事が出来た。

藍沢は勿論俺が真相を知ってる事を親は知らないが、俺の家庭も相当な訳ありだったからだ。墓場迄持っていかねばならない重い秘密である。

俺の家は一応東京都の住宅地にあるし、父親が一流商事の総務課長を勤めてるし、両親はそれなりの学歴を持つ。
周りが羨む環境に育った一人っ子のお坊ちゃんって奴だ。
兄弟がいないのは、俺が生まれた後、父親は流行病で子供が出来ない身体になったからだ。

しかし、実は真相は違う。俺の生まれる前、もっと言えば結婚前に父が学徒出陣で戦地に赴いてた時、悪質な流行病で子の出来ない身体になった。
従って俺の父親ではない。
俺が母の体内にいる時、両親は結婚したのだ。



こんな話をした場合、誰もが想像するいかがわしげ(?)な話とは違う事だ。
つまり俺の本当の父親は今の父の兄で、もうこの世にいない。

戦争中によくある話だ。それなりの家の跡継ぎを絶やさぬために戦死した兄の嫁と弟が結婚するケースである。
しかし俺の父親は戦死した訳じゃない。
戦地から早めの帰国後、幼馴染の母と結婚、その後死んだ。
自殺だった。

狂死とも聞いている。鬱の病いで狂って衝動的に飛び込み自殺を図った、とお節介な親戚が囁いた時俺は信じられなかった。



読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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