グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

早期水稲・種子の浸種について。

2020-02-14 15:04:26 | Weblog
早期水稲・種子の浸種について。

あとさきになってしまいましたが、前回の活着の良い苗を作るの
回[​こちら​]のまえに、研修会にて配布しました水稲の浸種につい
ての注意点となります。 ↓



書いてありますように、ここのところの収穫時前後の高温の影響
で 種子の休眠が深い傾向が見受けられるということですから、

 例年よりも長めの浸種時間をとる

こと、 それが出芽を揃えるポイントとなりそうですね。


晴れ 良いこととされる省力ですが、こと農作業に関して
  の省力は、えてして省略栽培となりがち な もの。
  省略することなく、基本事項をしっかりと踏まえる
  ことが、良品多収の早道です。

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活着の良い苗をつくる[早期米研修会要旨]。

2020-02-10 15:10:29 | Weblog
活着の良い苗をつくる[早期米研修会要旨]。

2月の第一週に、各地で開いている早期水稲の栽培研修会 の研修
要旨となります。 例年どうりの栽培作業のポイントとなります。
各人それぞれのやり方があるとは思いますが、よろしかったらご
参考までに。

 ↓

さて、本日の勉強会は 水稲育苗のはなしが中心であったのですが、
なかでも田植え後のスタートダッシュでつまづかないように「活着
のよい苗をつくる」という点を中心に 話をしますと・・・

そのような苗をつくるポイントとして大事なことが3つあります。

 1. 苗を徒長させない
 2. 苗に肥料切れをおこさない
 3. 苗の根の張りを良くする

といったことが挙げられます。そこでそれぞれの注意点について
の説明にかかりますと・・・

1番の徒長に関しては

 ■  播種量を多くしない
 ■  発芽が1cmになるまでに、シルバーをはがす
 ■  播種量を多くしすぎない
 ■  徒長気味の場合はアクセル2号の300倍を散布する

という点が大事になります。そのうえで、水のやり方と温度の温
度管理を的確にすることで苗の徒長を防ぎましょう。具体的には
緑化以後の昼間には、ハウスの肩をあけて通期を良くすることが
大切になります。

2番の肥料切れに関しては、本場が黄色くなる前の予防的な有機
液肥3号の追肥施用をおすすめします。

3番の苗の根の張りを良くするには、

 ■ シルバーを剥がした際には、かん水を1日だけ我慢する
 ■ 「マグホス細粒」の箱当たり30-40gの追肥

などをが効果的です。もちろん苗床の土にすでにマグホスをいれ
られている方も多いとは思いますが、そのような場合はアクセル
2号のかん水施用もおすすめです。

以上の3点の改善点を守られて、本年もがっしりとしたじょうぶ
な苗ができることを期待いたしております。


晴れ 早期米の田植えは3月中。田植え後に ときには田に
  氷が張ることもある
という コメづくりの作型についての 
  おはなしは こちら 。

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厳寒期の施設栽培作物のメンテナンスは。

2020-02-06 21:45:56 | Weblog
厳寒期の施設栽培作物のメンテナンスは。

立春をすぎての各地の初雪の話題がでてくる・・・などというとん
でもない温暖な気候のつづくなか、ピーマンをはじめとするハウス
栽培作物の果菜類の値段がじわじわとあがってきました。高値のと
きに良品を多収しないでいつするの、ということでそんな施設栽培
作物のメンテに関する定番の回ですが、参考までによろしかったら。

 ⇓

『厳寒期の施設栽培作物のメンテナンスは。』

ハウストマト栽培に限らず、ハウスキュウリ栽培やハウスピーマン
栽培の農家の皆さまから、〔日照時間が少なく・気温や地温が最も
下がさがっている
〕春先の2月上旬の時期にあたって よく質問を
受けるのは

 出荷の始まる年明けから良い品がたくさんとれる方法は?

という、出荷量がじょじょにあがってこなければならないこの時期
のメンテナンスに関する質問です。 それは とりもなおさず

 うちのハウスの作物には、いま どんな肥料を施すのが良いのか

ということになります。

その答えですが・・・これはもちろん千差万別。質問者さんのハウ
スの、現在の樹の状態により対応がちがって
まいります。その樹の
状態ですが、一般的には

 ↓

 ● 樹にたくさんの果実がついている
 ● 樹についた果実の大きくなるスピードが遅い
 ● 樹の先端部分の先端で花が咲き、芯が細ってきている
 ● 葉の色がうすい

といた場合は、チッソの割合の多く入った肥料を施す。またそれと
は反対に

 ● 花は咲くのだが、花がとまらない〔実にならない〕
 ● 樹の勢いが強く、先端部分が伸び、花が樹の中段で咲く
 ● 葉が大きく、葉色が濃い〔葉の表面が波うつ状態もあり〕

といった場合は、リンサンやマグネシウムの多くはいった肥料や場
合によっては、さらに カリのはいった肥料を加えて施す。


 ↑

というのが、樹の状態をみたうえでの〔これまでも元肥のやり方で
お伝えしてきたとうりの〕セオリーどうりの対策となります。

しかし、なによりこの厳寒期の営農対策として気をつけねばならな
いのは

 すぐに結果をださねばならない

ということ。

なにせ、この厳寒期の果実の値段は高いのがあたりまえ。極論する
ならば、農家さんは「品が薄くなって果実の値段が高くなる この
厳寒の時期
にあわせて施設栽培をおこなっている」 のですから。
せっかくの追肥であるならば、 すぐに効かねば意味がない わけです。

したがって この時期に施設栽培で使う肥料は、

 すぐに樹に吸収されるタイプの肥料を使う

という必要があります。

ということで、使用する肥料の種類としては、粒の形状であっても
水によく溶けるタイプの肥料や、液体の形状として市販されいる液
肥タイプの肥料を使用します。

さらにその肥料のやり方ですが、すぐに樹に効かすためには

 根から吸収させるよりも、葉から吸収させる

という 葉面に直接散布する方法 が、効果的です。

・・・そうですね、セオリーどうりの元肥を主食とするならば、今
回の〔樹のようすを診たうえでの〕緊急を要する施肥は、 ひとで
いうならば〔いわゆるファイトいっぱつ的な〕市販のドリンク剤の
ような効果を期待するもの といったら、わかりやすいですね。

その後の対策ですが、“効果のあったすぐに効くタイプの肥料”と
の連続使用と併せて、同じような成分をもった “粒状ではあるが、
吸収されやすいタイプ” の肥料を、圃場に施しておくのがお薦め
です。なんといっても液肥タイプの肥料は、

 すぐには効くが、効果は長続きしない

という性質がありますから。これもまた、主食とドリンク剤の関係
で考えると わかりやすいですよね。

というわけで今回は、施設栽培の最大のかきいれどきである厳寒
期における肥料の選び方と使用法
に関する考え方のおはなしでした。
追肥にしようする液肥とふり肥の具体的な商品名は ​こちら​。


晴れ 一例ですが、樹の勢いが強すぎる場合に使用する液肥のアク
  セル2号と、同社の粒状肥料であるマグホスの成分は似てお
  ります〔しかもマグホスには溶けやすい細粒タイプもあり〕。
  使用法として、まずはアクセル2号を葉面散布。効果がみら
  れた場合には、さらなる葉面散布と合わせて、マグホスの細
  粒の圃場への散布をおこないます。
  
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日本の水を管理してきたもの が。。

2020-02-04 18:58:07 | Weblog
​日本の水を管理してきたもの が。。

水田周りの野焼きや水路掃除がおこなわれていた先週の週末。南九
州の海岸部地方では3月下旬から早期水稲の田植が始まりますから
こういった集落を中心とした共同作業は、水稲作には欠かせない作
業となっているのです。ただ最近気づくのは、こういった作業に参
加する参加人員の少なさ。年々農家戸数が減少しているのですから
まあ当たり前の話ではあるのですが、はたしていつまでこういった
共同作業が続けられるのかと不安になっている昨今です。・・・よ
くとりあげられる最先端の農業技術として、いわゆるドローンや水
田の水回りの自動かん水装置などが取り上げられますが、このまま
農家の戸数が減少していくものならば、そういった最新技術が普及
する前に、水田の水供給そのものがままならずイネ栽培そのものが
続けられない事態になってしまうのではないかと、けっこう本気で
心配しています。ということで今回は2008年前後の水管理につ
いての回の再掲載です。
農業以外の職業に就かれている方や都市部にお住まいの方のなかで、
『日本の用水路・排水路の水管理の問題と、農家は無関係である』
と、思われている方もおおいのではないか、と思います。しかし実
際はちがいます。日本の農業用水は、〔主として〕土地土地の農家
によって構成される水利組合の手によって守られてきたという歴史
があります。そのような“水”の問題に関する、昔からの約束事につ
いてのお話となります。この前置きのほうが長くなってしまいまし
たが/笑、ご参考までによろしかったら。



『春の小川は用水路』

なにげなく見過ごしてしまいがちなのですが、冬の時期に枯れていた
田畑地帯にある小川が春になると流れていることに気づかれたことは
ありませんか。
じつはこれ、自然な小川ではなく農家の手によって人為的に流されてい
る用排水路の場合が多いんですよ。農家を主体にした水利組合の管理
のもと、計画的にながされている農業用水なんです。

田の水を管理する水利組合は、農業生産を行う上で欠かせない用排水
施設の整備・管理や農地の整備いわゆる土地改良を目的として設立さ
れた農家の人たちの組織です。この土地改良区は全国に約7,000・
関係する農家は約300万人・関係する農地は約300万haといわれ
ています。

そんな日本の農業用用排水路の総延長は なんと 約22万km!

この距離は、ほぼ地球5.5周にも達っするのだそうです。現場にい
るわたくしなども、この話しを聞いたときにはさすがにびっくりしま
した。いや、すごいものですね。
今回はそのような、まるで網の目のように、毛細血管のように張り巡
らされた日本の用排水路についてのおはなしです。

田植えに先立つ2ケ月前、水稲農家の苗づくりと並行してこなわれる
のが、集落ごと・水の流れる系統ごとの用水路の清掃です。
イネの栽培がおわってからおよそ半年、繁茂した草や、その後の増水
などで埋まった土砂などが用水路から除去されます。もちろん投げ込
まれたゴミの処理も、当然あります。。

この用水路清掃には、その水利を利用する方たちが参加するわけです
が、かなりな時間と労力がかかります。自分の経験では、ひとつの水
利系統で半日くらいの出役となります。

規模を拡大したり・高齢化の農家の農地を借りたりして田畑を耕作す
る方は、この共同清掃に何らかの形での参加が義務付けされますので、
これがなかなかに大変。耕作規模が大きくなるほど、水路を多く利用
するほど、出役は増えるわけですから、その負担も大きくなっていく
わけです。ですから、これもまた日本の耕地面積の土地集積がおこな
われにくい大きな原因のひとつにあげられますね。

余談ですが・・・農外から農業に進出しようとする企業や、現場を知
らない農業評論家の方には、農業を行うに当たってどうしても必要と
なる このような作業に関する認識が欠けているようにおもえてなり
ません。そうそう、新規就農された方などもまた、こういった就農前
には分からなかった地域の共同作業の多さに驚かれる場合も・・・多
々あるんですよねぇ。

さて話を戻して、そのように管理された水関係の上に成り立っている
イネ栽培をはじめとする農業活動なのですから・・・その水関係の作
業を担っている形の農家の絶対数が減ると、当然ながら農業の生産活
動そのものに支障がでるようになっていきます。そしてこの支障とい
うものは農業活動だけには限りませんよ、それ以上に水に関する災害
がまちがいなく増加していきます。だって、管理不足の用排水路がう
まく流れないようなら、行き場を失った水はあっという間に水路から
溢れだしてしまいますから。

いま、日本の農家さんの戸数の減少や高齢化のスピードは予想以上に
進んでいる。そしてそれは日本の水に関する災害をまちがいなく助長
していくものと考えられますよ。・・わたくしはそうみています〔経
営効率ばかりを重視する“先進的農家”や企業が、前述の集落の共同作
業による管理を喜んで肩代わりしてくれるとは思えない気がするもの
ですから〕。

ということで 今回は『春の小川は用水なのだ』ということ、そして
その用排水の管理が 限界近くに達していますよ、というお話でした。


晴れ バインダーで刈られた長いままのワラの場合は、大雨などで
  田から流出すれば、排水路を詰まらせることにもなりかねま
  せん。​獣害を防止するという点[​こちら​]でも、水害を予防す
  るという観点からも、田起しは重要​
になります。

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