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農業の現場の おはなしなどなど。

語られることが少なすぎるTPPにいたる経緯〔TPPを考える〕。

2013-02-12 16:33:43 | Weblog
語られることが少なすぎるTPPにいたる経緯〔TPPを考える〕。

2010年11月の、当ブログ記事です。菅直人前首相の“平成の開
国”発言を受けて書いたものですが、次回の資料としてよろしかった
らご参考に。 

 ↓

唐突に話がすすんだ感のあるTPP。そんなTPP問題がでてくるま
での、日本の農業の立場から見た実感といったようなものを記してみ
ます。

各国間の自由貿易の促進を目的とした国際協定を、ガット(関税・貿
易一般協定/General Agreement on Tariffs and Trade)と、GATT
拡大発展させた「WTO協定」いいます。「工業製品を輸出したい国は、
工業製品を輸出してもいいですよ、農作物を輸出したい国は、農作物
を輸出してもいいですよ」という考え方
です。

それまでの世界の各国がそれぞれのやり方で自国の産業を守っていく
という方針は、このガットによって大きく変えられました。ただし、
そこにはルールがあります。「輸出補助金を使って輸出することや、
特別な関税を掛けることで自国の産業や産物を保護することを、やめ
ましょう
」・「お互いに話し合しあうことで公平な貿易をしましょう
というルールです。

このルールの下でのガットの貿易交渉で、1986年~2000年ま
での国際貿易に関する約束が交わされてきたのが、これまでの世界の
貿易の大きな流れでした。しかし2000年以後、次第にガットの、
特に農業部門の交渉が難航して来るようになります。

交渉が難航しているのは主として次のような理由が浮上してきたから
です。

 ● 先進国と途上国の対立
 ● 輸出国と輸入国の対立
 ● ECや農業輸出国である米国が、表に出にくい形での自国の農業
  保護を行っている
 ● 多数の農産物輸出国が輸出補助金を使用しているのではないかと
  いう疑念


ガットの前提となっていたはずのルール、そのルール違反に対する各
国間の疑念が表面化し始めた後、交渉が難しくなってきた
のです。
自国に有利なように交渉するのが、それぞれの国の本音ですから、
輸出は自由にできる方がありがたいが、逆に外国製品が輸入されて
国内産業がダメージを受けることは避けたい
」と考えるのは当然のこ
となのです。このように、成果が実らぬまま幾度も交渉が重ねられて
いるのが、2009年現在の多国間の農業交渉の実情と言えます。

そんな中で日本です。日本は貿易自由化の推進を対外経済政策の
基本としている国ですから、ご存知のようにガットとGATTを拡大発展
させた「WTO協定」を積極的に推進しています。農業分野でも、農産
物の平均関税を12%にしている
 のは従来よりご説明してきた通り
ですし、国内の農業分野でも「農業保護」の削減が積極的に推し進め
られてきたのです


 ● 1995年の食糧管理法(食管法)の廃止
 ● コメ輸入の関税化特例措置に伴うミニマム・アクセス米の受入れ
 ● 農業助成金の削減

などがこれにあたります。さらに2000年以降は、2001年4月に
発足した小泉政権の「構造改革」が農政に導入されたことを受けて、
次ぎのような案が実行にうつされました。

 ● 農林水産予算の減額
   01年度度農林水産予算3兆4003億円→07年度予算2兆6927億円
 ● コメの備蓄米量の削減
   150万トンから100万トンに削減
 ● 2003年食糧庁の解体

貿易自由化の是非はともかく、現在の日本農業がこれほど衰退してい
った原因の一つには、このガットとGATTを拡大発展させた「WTO協定」を、
日本が律儀すぎるほど律儀に守ってきたことによる影響があるとおもわれ
てなりません。

この状況をもって さらに“平成の開国”発言とは、菅首相は、いった
いなにをいいだしたのでしょう。いち農業関係者として、どこの国の首
相であるのかと疑わざるを得ない状態であります。


◎ 農業交渉が進むにつれ、過疎集落は増えていった・・そんな
  気が、個人的には おおいにします。現場の実感として、“これ
  でよく日本の農業は踏ん張れてきたものだな”と、おもってしま
  うんです。


51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染