あいらのひみつ箱

2006年の年明けとともにジュリーに堕ちました。日の浅いファンが 勝手な思いを書き連ねるゆるいブログです。

むっつりケンの歌

2009-07-06 16:57:34 | その他
※この記事はネタばれを含みます。未読の方はご注意下さい。
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今日のお題は、「むっつりケンの歌」
じゅりをモデルに書かれたという、童話作家今江祥智氏の作品です。
この本をご紹介下さった、HNきりん様、どうもありがとうございましたー

教えて頂いた「今江祥智 5年生の童話」という本は、残念ながらアテクシの地元のショボイ図書館
には無かったんですが、司書さんに調べてもらったところ「今江祥智の本 第32巻 招き猫通信」
といういわゆる「全作品集」的な本にも、このお話が収録されてるとの事だったので、そちらを借りら
れるよう手配しておいたんですね。
で、それが土曜日にやっと手元にやってきたので~す。

さて、じゅりがモデルだなんて、どんな風に書かれているのかしら~ムフフと思いきや、もう、
ストレートに「サワダケンジ」がモデルなのでした。隠しても、ぼかしてもいないんです~。
名前もそのままですし、足の不自由な妹をもつ兄という設定も、実際のじゅりにリンクします。
そしてその妹との会話や、兄として妹のために孤軍奮闘する少年の姿、そしてそんなケンを俯瞰で
見る大人のケンジ。
彼らの姿が只、それほどの大事件があるわけでもなく、暖かい関西弁と共に淡々と書かれています。

童話なので、漢字は少ないし、短いお話ですが、決して「わかり易い」「道徳の授業チックな」オチ
などは用意されていません。
ということで、読み手の豊かな感受性が求められる内容なのではないでしょうか。
というか、童話ってそういうものなのかも知れませんね~(よく知らないけど)。
心のヨゴレッチマッテイル大人のアテクシですが、なるべくマッサラな気持ちで読んでみました。

先に言ってしまいましたが、作中では、じゅりの少年時代がモデルの「ケン」と、大人のじゅりが
モデルの歌手「ケンジ」が一つの時間軸の中で同時に登場します。


読んでみて一番気になったことは「じゅりの何が今江氏の創作意欲を駆り立てたのか」って事です。

作中で歌手のケンジは「銀色ずくめのいしょうにからだをつつみ、5分もすればステージにとびだして
いって、ダイナマイトみたいにはじけ歌う」
と描写されています。
それは、一般の人が黄金期じゅりに対して抱いている印象となんら変わりないと思うんですけど、
今江氏にはその華やかな姿の中に、むっつりした少年ケンの姿が垣間見えたのでしょうか。
少年ケンは作品の冒頭で「ケンはわらわない子だった。しゃべらない子だった。いつもむっつりした
顔でいた。まるでつかれた大人といったあんばいにみえた。」
と描かれています。

なんとなくですけど、ケンは幼少期のケンジであるとともに、大人のケンジのプライベートな素顔
という側面も持っていると思うんですよね。
素顔のサワダケンジを見透かすような、それでいて、だからどうだというわけでもない静かな視線が
そこにはあるような気がします。


ところで、この作品が最初に発表されたのは1981年「海・別冊 子どもの宇宙」誌上に於いてなんだ
そうですけど、1932年1月15日生まれの今江氏は当時49才。じゅりは32、3才です。
今江氏が、いったいいつ頃から、この作品の構想を持っていたのか大いに気になっちゃうところです。
じゅりが一流のクリエイターの創作意欲を掻き立ててやまないのはいつものことですけど、
じゅりと童話とはまた、なんとも意外な取り合わせではございませんか~。

とにもかくにも、童話作家の重鎮からみても心惹かれる存在だったことだけは確かなようですわ。
さすがじゅり、さすがサワダケンジ、とファンなら思わず嬉しくなってしまう、ステキなお話なのでした。