思いつくままに書いています

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万葉文化館「自然との対話」展と奈良町を訪ねて

2013年02月14日 | 美術館を訪ねて

今回の展示は万葉文化館のコレクション品の展示ですが、ホームページの展覧会紹介では好きな作家の未見の作品が多く展示されているとのことで、出かけることにしました。

9時過ぎに出発。
数日前からまた冷え込みがきつくなってきていましたが、日差しはすでに春なので、暖房の効きの遅いプリウスでも天井のサンシェードを開けたらポカポカと暖かく快適でした。

途中、奈良県に入って安いスタンドを見つけ、前回給油から845km走行したプリウスに2か月ぶりで給油。車載燃費計は24.0km/lを示していましたが、満タン法で計算したら23.5km/l(笑)。まあ冬はこんなものですね。
(でも平坦な地形で車がよく流れている奈良では、その後奈良市内を経由して帰宅するまでの約70km走行での平均はなんと29km/l!台をキープ。奈良に住みたいです(笑))

文化館についたら、玄関前で何やらテレビの取材が。展覧会の取材かと思ったら、同時に開催されていた子供の書初め展の取材のようでした。

展覧会場に行くと、連休の初日なのにこの日も人影がなく、寂しい限りでした。ゆったり気分で車椅子で気兼ねなしに観られるのは有難いことですが、あまり観客が少ないと、館そのものの運営とか存続が心配になったりしますね。



展示されていた作家は以下の通りです(50音順)

 浅野 均      新井 富美郎   
 井上 稔      烏頭尾 精   
 大矢 紀      岡橋 萬帆
 加藤 美代三   木下 育應    
 佐藤 太清    城 登     
 田所 浩      田中 一村
 野々内 宏    野々内 良樹   
 福本 達雄    三輪 晃久   
 三輪 晁勢    由里本 出
 渡辺 洋子


今回一番印象に残ったのは井上稔の「ひまわり」でした。そういえば去年の最初の展覧会も「井上稔」展でしたね。
今回は他に「」「花と塔」「夜の海」「月明」「塔の朝」の5作品が展示されていました。「ひまわり」は今回の展示で一番目立っていました。

今回楽しみにしていた田中一村の作品は、以前同館で開催された一村展でも紹介された「瓢箪」「」「」「」「」の5点。これらはその一村展開催直前に、千葉市内の一村の関係者宅で見つかったもので、作家の18~21歳の作品です。展覧会後館蔵品となっていたのですね。

ただもうすでに老成の兆しがある5点の作品を観て、複雑な感じがしました。

若くしてこれらの作品によってその才能を高く評価されながら、その後の作品群は全く評価されず、失意のまま奄美大島にわたり、貧窮の中で画壇とは一切無縁なまま奄美の自然を描き続けた作品群が、死後一躍脚光を浴びた一村。

彼にとって、今回のような、いわば初期の栄光を代表する作品の存在はどういう意味を持っていたのか、知りたいところです。私としてはやはり晩年の奄美での作品が好みです。

新井富美郎の「穂高岳」もよくある構図ですが目を引きました。福本達雄、野々内宏・野々内良樹、烏頭尾精らの作品はまとまった作品群として展示されていました。これらすべてが館蔵品ですが、今回展示されていないものを含めて考えたら、大したお宝コレクションになりますね。

野々内良樹「杜の朝」↓


展示の終りのほうにあった由里本出の「阿蘇岳」と「激つ瀬」も力強いタッチで印象に残りました。

その他三輪晁勢・三輪晃久、大矢 紀、木下育應らの作品などは以前も展示されてなじみのあるものですが、いずれも私たちの好みにぴったりで、満足でした。

三輪晃久「万緑


ただ何としても展示作品の絶対数が少なく、何度も会場を往復して見直しましたが、物足りない感じは否めなかったですね。

会場を出て本館に向かう途中見たら、子供たちの書初め展は家族も大勢来ていて盛況のようでした。

文化館の庭園ではロウバイが咲き始めていました↓


ショップで絵葉書を買ってから奈良市内へ。奈良町で個人で絵画展を開いている友人を訪ねるためです。
奈良町センター前の駐車場に停めて、ギャラリーに向かいました。絵のほうは抽象画なので正直言ってよくわかりませんでした。(笑)
でも久しぶりに友人と会って楽しく会話でき、また彼女も私たちの来訪を喜んでくれたので行ってよかったですね。

ギャラリー前で↓


でも思ったより盛況で、友人も応対に忙しく、あまりゆっくりしていると迷惑になるので適当に切り上げて、駐車場近くのカフェで遅めの昼食にしました。





かわいらしいケーキの店でしたがランチもおいしく、オーナーの奥さん?が出入りに親切に気を使ってくれたのがうれしかったですね。





今回は明日香と奈良町のかけもちのお出かけで、特に奈良町は道幅が狭いので車で行けるか心配でしたが、まだ観光シーズンではないため人通りも少なかったのでラッキーでした。

今回の万葉文化館の展覧会の会期は3月31日まで開かれています。みなさんも明日香に来る予定がおありでしたらぜひご覧ください。

次年度の予定はまだ公表されていませんが、回数は少なくても今年度のように外部の作家による展覧会の開催が継続されることを祈っています。

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「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~」 蜷川バージョンを観て

2013年02月14日 | 観劇メモ

「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~」は原作者ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)演出バージョンと蜷川幸雄演出バージョンの競作となっていますが、私たちの観たのは蜷川バージョン。
シアターブラバは「アントニーとクレオパトラ」観劇以来です。



最寄りの駐車場に停めて、IMPホールで昼食の後、劇場へ。すでにたくさんの客が開場を待っていました。でも対岸の大阪城ホールのほうがさらに多くの人の列。「何があるんだろうね」とか話しているうちに劇場内に案内されました。


今回の席は下手側の障害者席。この日、宝塚の生徒らしき数人が前方で観劇していました。
1階はほぼ満席で、観客の男女比率は圧倒的に女性が多数。それも主役トビーアス役の森田剛のファンなのか、若い女性が目立ちました。

この公演、1時開演で終演は5時20分の長丁場です。事前に問い合わせてびっくりでした。
これが「ボクの四谷怪談」みたいな出来だと辛いことになります。(笑)

開幕してまず意表を突かれたのは、コロス。男女とも和服、男は紋付き袴、女は黒留袖でラップしています。
あまりリズムと歌詞?が合っていないのがご愛嬌で、歌詞もやや聞き取りにくいところもありました。

そのかわりというか、舞台左右の壁には電光掲示板みたいなディスプレイがあり、それにト書きやラップの歌詞が表示されます。ただこの表示、舞台への集中力がそがれるので、いいのかどうかわかりませんね。あと、四谷怪談同様、コロスの面々が神棚を捧げ持っていたり、仏壇を背負っていたりするのは蜷川好みですね。

今回面白かったのは、客席降りや客席からの登壇が頻繁にあり、私たちの座る下手側通路から現れる俳優を至近距離(私の短い足が当たりそうになるくらい近いです)で観られたこと。
でも当たり前とはいえ、みなさん客席下手側通路のドアを開けて入ってきた瞬間から完全に役に入っているところはすごいです。

この劇場、セリも回り舞台もないシンプルな舞台ですが、手際の良い場面転換は感心です。
気になったのは舞台でやたらにぶっ放される銃声の大きいこと。仕草を見てもう撃つ頃だなと身構えても(笑)、こちらが予測した音量をはるかに超える銃声に、初めは本当に驚かされました。

話は北回帰線と南回帰線の狭間(!)にある架空の街を舞台に、祖母と2人で暮らす内気な青年と、街を牛耳る強欲で好色な(ホントに好色です)市長、そして彼の3人の娘を巡って展開していきます。
それに絡むのが、市長の年老いた母親と彼の後妻、子供を亡くした使用人夫婦、テロを企てる地下組織のメンバー、いわくありげな司祭、錬金術師と白痴の助手、そして流れ者の若者たち。街に住む腕章を強制着用させられた人々はゲットーを思わせます。

最初は、めまぐるしく変わる場面展開と、登場人物の多彩さで話を追うのが大変でした。でも途中から、話の筋やつじつま合わせを気にするのは断念しました。(笑)
というか、この劇はそういうふうに理屈っぽく観るより、どぎつい演出で色濃く作り上げられた一場面一場面ごとのエピソードを観て楽しんでいるうちに話の全体像が浮かんできて、カッサンドラ(野々すみ花のレティーシャとの二役)が冒頭で予言した破局へと向かう話が見えてくるのです。

ギリシャ悲劇を思わせる脚本がよく書き込まれているので、長い上演時間も気にならず、観終わればもう終わったのかという感じでした。

役者ではなんといっても勝村政信演じるドン・ガラス。圧倒的な存在感でした。町を仕切っている大ボスの貫録十分。
ただ後半、パブロとトビーアスとの場面で、突然上段の舞台から1mぐらい段差のある下の舞台に転落したのはビックリ。しばらく足をさすって痛みを紛らわすなど、かなり痛めた様子でした。
それでもアドリブでパブロたちに「「お前が前に出てくるからだ!」とか返していたのはさすがの余裕でしたが(笑)。でもその後は、少しも痛みの気配も見せず演技を続けていました。

3人姉妹の中では宮本裕子のマチケが弾けていましたね。

姉妹3人ともすぐライフルやピストルをぶっ放すアブない女たちですが、その中でも末っ子マチケはかわいらしい仕草であっけらかんとした天真爛漫さとともに、それと表裏一体の無慈悲な残酷さを併せ持つというキャラクタをうまく演じていてインパクトがありました。

忘れてはいけないのが三田和代。舞台に登場するだけで場が引き締まります。この人も大したインパクトでした。

お淑やかな原田美枝子やアルコール依存症の中嶋朋子の姉妹もマチケほどではないものの、役柄はくっきり演じ分けられる好演ぶり、司祭の古谷一行も地味な役ですが味のあるいい感じでした。
退団後の初舞台となる野々すみ花も頑張っていました。初めはカッサンドラだけかと思いましたが、ちゃんとレティーシャ役があってよかったです。(笑)

その他(その他かい!>私)、次々と繰り広げられていく、重厚でエキセントリックでオドロオドロしい奇譚の連続を、大石継太、渡辺真起子、村杉蝉之介、満島真之介、冨岡弘、新川將人、石井愃一、橋本さとしがそれぞれの持ち味で好演していて楽しめました。



この芝居は、どうしてこうなるのかなどと言わずにどっぷり漬かるのが正解ですね。

最後の見せ場・「びしょ濡れ芝居」は、最前列で観劇される幸福な人たちには忘れられない場面でしょうね。なにしろ水量が半端でなく、しかも長時間で、最後にのた打ち回るドンガラスが跳ね上げる水飛沫は高く舞っていました。
2段の舞台はこのためかと思ったり。

長時間ですが、舞台の面白さをたっぷり味わえたので、満足して帰途につきました。

今回の観劇で、「四谷怪談」以後私たちが抱いていた蜷川センセイに対するマイナスイメージは少し拭われた感じです。(笑)

追記:勝村さんの落ちるのは演出みたいですね。アップしてからググってみたら別の日でも発生したらしいので、どうも蜷川流の演出にはめられたようです。
しかしほんまにややこしいわ!

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