アイヌ民族関連報道クリップ

アイヌ民族・先住民族関連の報道クリップです。各記事の版権は発信元にあります。

卓上四季 中山峠(北海道新聞)

2012-05-11 00:00:00 | アイヌ民族関連
卓上四季 中山峠

「北海道文学全集第22巻 北の抒情編」(立風書房)に、こんな歌をみつけた。<まさやかに空にあらはるる青眉(あおまゆ)の蝦夷(えぞ)富士が嶺(ね)もわかれなりけり>▼歌人太田水穂(みずほ)が、道内を訪れた際に詠んだもの。歌集「雲鳥(うんちょう)」(大正11年)の中に収められている。「蝦夷富士」とも呼ばれる羊蹄山の姿を、水穂はどこから眺めたのだろう▼残念ながら調べきれなかったが、歌の叙景からは、国道230号の中山峠に立ったとき、視界に飛び込んでくる堂々とした羊蹄の山容が目に浮かぶ。その雄大な眺望は、初めて来道した人に見せたい風景の中で、上位に入るのではないか▼「札幌市史」によると、中山峠を経由して札幌と虻田方面を結ぶルートは、文化4年(1807年)に近藤重蔵がアイヌ民族の案内で踏査し、安政5年(1858年)には松浦武四郎が歩いた道だ。明治初期に東本願寺の現如(げんにょ)上人が開削して、「本願寺街道」の名が残る▼歴史を刻む、この観光・運送の大動脈が、峠近くの土砂崩れで断たれた。懸命の復旧作業が続いているが、片側通行による開通も今月下旬の見込みという。沿線の人々の暮らしへの影響を思うと、一日も早い完全復旧を願わずにいられない▼季節は、眠りから覚めた山が笑い始めたみずみずしい行楽期。せっかく新緑と花々で装っても、「きれいだね」とほめる人がいなくては山々も寂しかろう。

2012-05-11北海道新聞

最新の画像もっと見る

コメントを投稿