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アイヌの伝統家屋の建て直し・「みどころ」の紹介(JANJAN)

2010-03-25 00:00:00 | アイヌ民族関連
http://www.janjannews.jp/archives/2930002.html

アイヌの伝統家屋の建て直し・「みどころ」の紹介

Esaman

 愛知県犬山市にある野外民族博物館・リトルワールドのアイヌの伝統家屋「チセ」の建て直し作業は、2月の頭から行われ、23日には、ほぼ完成。
 職人さんたちは一旦北海道に帰り、祭壇のイナウ(御幣)や、チセの床に敷くゴザなどを作ってきて、3月20日には新築を祝う儀式『チセノミ』を行いチセは一般公開されました。
 今回は、チセの「みどころ」と思われる箇所を紹介したいと思います。
 
●みどころ

1

新築されたチセの隣のチセに安置されている「チセコロカムイ」。このチセコロカムイは建設当初に作られたものに、新しいイナウ(白い部分)が追加されている。(2月22日、撮影・Esaman)


・チセコロカムイ
 家の守り神として作られている御神体。
 木で作った本体に、イナウ(生木を削って作ったリボン状のもの)を飾って作られている。
 柳で出来た剣を持っていて、家に悪いことが起きないように見張ってくれる神様である。
 ポロチセの家の隅に安置されていたが、今回の建て直し作業に伴って、昨年の12月19日に「引越しのためのカムイノミ」が行われて、隣の家に移された。
 その際に、御神体には新しいイナウが追加されて、建築当初に作られた物が継続して使用されている。
 家によくないことが起きた場合、チセコロカムイが役目を怠ったとして、壊されて新しいものにされることがある。
 一旦『引越し』をしていた神様は、3月20日の新築祝い『チセノミ』のさいに、新築されたポロチセの隅に安置された。
 
・チセの屋根の状態・特に北側
 今回新築された「ポロチセ」は、たいへん美しい仕上がりになっている。
 とくに、屋根の萱葺(かやぶ)きの段々の仕上がりはアイヌの家特有のものとのことだが、隣に建っている古いチセの屋根は、そのような段がなくなっている。
 これは、風雨によって萱が次第に崩れていってそうなってしまっただけで、新築当初は全ての家が段々状になっていた。
 また、屋根の上部にある丸太で補強された構造物も、古いチセではなくなってしまっていることも比較できる。
 古いチセの北側の屋根には一面に苔が生えていて、シダや木が生えている場合もある。
 チセの北側の屋根は、北海道でもこのような変化をしてゆくとのこと。
 苔むした状態は、特にポロチセの隣のトイレ(フェンスがある間は覗けないが)の北側(裏側)が顕著である。
 
・アイヌの家は川の近くに建てられる
 現在もチセのあるエリアの敷地内には、人工的な小川が作られていますが、それとは別に、アイヌの家のあるエリアの通路の外側を下ったところには小川が流れているそうです。
 ただし、その小川は通路からは見えません。
 
●チセ周辺と内部

2

ロルンプヤラの外側に設置されたヌササン(祭壇)の台。この台にイナウを立てかけて使用する。この祭壇の裏側は通ってはいけない場所とされていて、場所によっては土盛りがされている場合もある。(3月20日、撮影・Esaman)


・ロルンプヤラ(上座の窓)とヌササン(祭壇)
 入り口からみて、チセの一番奥の東についている窓を、「ロルンプヤラ(上座の窓)」と言う。
 この窓の外側には、イナウを安置する祭壇が設けられており、囲炉裏から直線上に祭壇を見ることが出来るようになっている。
 この窓は、獲物や狩猟道具などの特別なものを出し入れする窓で、神だけが外から覗くことが出来る窓であり、人間が覗いたら怒られた。
 なお、ユカラには、主人公が他所のコタンに行き、この窓に掛かっている簾の隙間から内部を除き見る、という様子が描かれることが多いが、実際この窓から覗くと、上座、下座とも誰が来ているのかを、一目で把握することが出来る。
 現在、ロルンプヤラの外には『チセノミ』の年に作られた祭壇が設置されている。
 
・ヌササン(御幣の祭壇)
 ロルンプヤラ(上座の窓)から外を覗いたところにある。
 イナウと呼ばれる、木をリボン状に削ったものを何本も立てかけたもの。
 このイナウは神様に捧げる宝物で、木で削られたイナウは、神の世界に届くと白銀の宝物になるといわれている。
 神にささげる物は木の上のほうに繋がれて立てかけられており、先祖供養に届けるものは、地面に刺さっており、削る向きが逆になっている。
 どちらのイナウも生えていたときの向きで作られている。
 神々は、このヌササンからロルンプヤラを通って、アペオイ(炉縁)の火の神様に挨拶をするので、この通り道は神聖とされる。
 
・熊の檻
 クマを山でしとめたときに、小熊がいることがあり、そのことをアイヌは「クマの神を託された」と解釈して連れて帰り、丁重に育てた。
 クマの子供は生まれた当初は犬の子ほどもないが、あっという間に大きくなり、1年ほどで40~50キロほどになる。
 ある程度大きくなったら外の檻に移して育てて、イヨマンテ(クマ送り)というクマの神様を送り帰すお祭りをする。
 実際に子グマを飼うのは1~2年ほどの間。
 クマの檻は、チセの主人の寝起きする場所からちょうど覗ける位置に建てられている。

3

クマの檻に付属している、クマの食器。木が器状にくりぬかれていて、隙間に差し込めるようになっている。(2月22日、撮影・Esaman)


・家の屋根
 萱葺きの屋根の中央内側には、火の粉が飛んで延焼を防ぐために、スダレのようなものが敷いてあり、その上に萱葺きがされている。
 また、新築された状態ではまだ何も刺さっていないが、チセノミの際には、家に使われた材料の魂を慰めるために、屋根裏に向けて矢を放ち、うまく刺さったものはそのままにしておく。
 今回新築されたチセの屋根の北西のところには、萱葺きの際に使われた道具である、木で出来た大きな「針」が置いてある。
 
・家の屋根の骨組み
 チセには天井板がないので、内部から天井を見ると、骨組みの様子がわかるようになっている。
 その骨組みを観察すると、東側・西側にまず三角形の丸太を立てて、その三角を基準に木を組んでいく様子が分かる。
 また、釘を使わずに(実際には見えない箇所に補強として使われているが)、紐で縛って組み上げられている様子もわかる。
 
・家の柱の角度
 チセの柱は、中心部に向かって、ややハの字型に傾斜して組まれている。
 また使用されている木は製材されておらず、丸太の形を生かして組まれている。
 伝統的な工法では、釘は一切使わずに組まれていた。
 (現在は建物の法律もあり、補強として見えないところに釘が使われている)
 
・壁の周囲のサクマ(横木)
 壁の萱引きは紐によって縛られているが、それを補強するためにサクマと呼ばれる横木が外側に縛り付けられている。
 このサクマと、内側の垂木であるサキリとの間を紐で縛りつけ、縫い付けるようになって強度を増している。
 紐の材質は耐久性の点から最近のロープが使われているが、サクマの木は自然木である。
 とくに壁の角の部分のサクマは壁に沿って曲げられているが、職人さんの話によると、この木は時間をかけて曲げたもので、手間のかかる作業だったとのことである。
 
 
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関連リンク:
 野外民族博物館 リトルワールド
 アイヌの伝統民家「チセ」(実際にチセに泊まって防寒システムを研究したレポート)
 
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 『アイヌ』にまつわるQ&A(Esaman作成のQ&A)
 
 
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