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太陽へのまなざし 白石明彦さんが選ぶ本(朝日新聞)

2012-05-08 00:00:00 | その他のニュース
太陽へのまなざし 白石明彦さんが選ぶ本
[文]白石明彦(文化くらし報道部)  [掲載]2012年05月06日

2011年1月、太陽観測衛星「ひので」が宇宙からとらえた金環日食=国立天文台、宇宙機構提供

著者:斉藤国治  出版社:恒星社厚生閣 価格:¥ 2,940

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■金環日食目前、話題も熱く

 21日に国内で金環日食が見られ、6月6日には太陽の前を金星が横ぎる。一方、太陽の磁場に異変が生じて地球が寒冷化するかもしれないと、国立天文台などの国際研究チームが4月に発表するなど、太陽をめぐる話題が熱い。本を手がかりに、母なる星へまなざしを。
 「日、蝕(は)え盡(つ)きたること有り」。こんな記述が、推古天皇が亡くなる5日前の628年4月10日、『日本書紀』にあるように、日本人は古来、日食に関心が深い。太陽神の天照大神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸(あまのいわと)にこもり、天地が闇と化した記紀神話を、皆既日食の実体験にもとづく伝承ととらえる発想は江戸時代からある。
 こうした古代の天文記録や伝承を現代天文学の知識で読みとくのが古天文学だ。創始者の斉藤国治(くにじ)は『古天文学の散歩道』で推古朝の日食を検証し、飛鳥京では皆既食は見られず、深い部分食だったとしている。
 4月に出た出雲晶子『星の文化史事典』は星に関する世界中の伝承を集め、日食関係も多い。北米先住民のセミノール族はヒキガエルが太陽を食べると考えた。マヤ文明では太陽と月の戦いとされたため、妊婦は日食を見てはいけなかった。

■金星は見えるか
 詩歌や古典芸能に通じた天文学者石田五郎の天文随筆集『天文屋渡世』も味わい深い。1958年に八丈島で金環食を見て、暗くなった空を「青色に灰色をまぜた安いサイダー瓶のような色」と形容した。金環食の15分ほど前から、太陽の右下に金星が輝きはじめたそうだ。
 21日の金環食を天文ソフトでシミュレーションすると、マイナス4・4等級で三日月型より細い金星が太陽の左下にある。
 「昼のお星はめにみえぬ。/見えぬけれどもあるんだよ、」と歌ったのは金子みすゞだが、今回は見えるだろうか。
 それにしても研究チームの発表には驚いた。太陽の活動を支配する磁場は普通、北極がマイナス、南極がプラスといった2極構造だ。ところが観測衛星で精査したら、両極がプラス、赤道付近の2極がマイナスという4極構造になりつつあるとわかった。黒点の数の増減周期も延びている。テムズ川が凍り、御神渡(おみわた)りで有名な諏訪湖の凍結が早まった17~18世紀の小氷河期「マウンダー極小期」も同じ状況だったと推定される。
 太陽の活動と地球の気候の関係を詳細に論じるのがH・スベンスマルクらの『“不機嫌な”太陽』(恒星社厚生閣・2940円)だ。太陽の活動が衰えると大気中に飛来する宇宙線の量が増え、地表から高さ3千メートル以下の空に雲ができやすくなり、地球は寒冷化するという。
 フィンランドでの観測では、地球に飛来する宇宙線の量が09年に過去45年間で最多となったので、この学説は気になる。
 
■零エネで宇宙へ
 太陽物理学の本でお薦めは柴田一成『太陽の科学』(NHKブックス・1019円)だ。最新の太陽像をわかりやすく解説し、小さな爆発(ナノフレア)やジェットだらけの太陽の姿こそ、あらゆる天体に共通する宇宙の普遍的な性質ではないかと説く。狭い領域にこもらず、宇宙の進化にまで研究の成果を応用する姿勢には敬服する。
 太陽と人類の新たな関係を示唆するのが、宇宙帆船「イカロス」を開発した森治の『宇宙ヨットで太陽系を旅しよう』(岩波ジュニア新書・861円)だ。14メートル四方の帆で1円玉0・1個の重さに相当する太陽光の圧力を受けて加速し、金星の近くまで飛んだ。50メートル四方の帆で木星圏まで行く計画もある。
 省エネどころか、零エネの発想に胸がおどる。


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