あいりのCinema cafe

只今gooブログにお引っ越し(工事中)

折梅

2005-11-01 15:43:34 | 邦画 (69)
oriume_dvd_200x280

製作・監督 松井久子
原作 小菅もと子 (「忘れても、しあわせ」日本評論社刊)
脚本 松井久子・白鳥あかね
出演 原田美枝子(菅野巴) 吉行和子 (政子)
    裕三 (トミーズ雅)田野あさみ (みずほ)
    三宅零治 (俊介)加藤登紀子(中野先生)2001年、日本
公式サイト
若年性アルツハイマーを題材にした『私頭の中の消しゴム』を見たあとに、偶然、この映画を見た。
こちらは原作者自身の体験をもとにして作られた映画で、恋愛のお話でもなく華やかでもないけれど。

映画を見て、短い間だったが、舅を介護した時のことを思い出した。
私はまだ若く幼い子供たちには手がかかり、どうすればいいのか分からず苛立った。
ちょうど、映画の中の巴のように。
今のように様々な制度もなく孤立無援で。
その時、この映画を見ていればと思う。

アルツハイマー型認知症

夫の死後、4人の子供を育て上げた母、正子は公団のアパートで一人暮らし。
母親も3男のところへならと考え、雄二、巴夫婦も正子に来るように勧め、同居が始まる。
巴は自分では気づかずに、心の中では義母を避けていた。

正子に環境の変化と、
巴が一家の主婦であり、正子は何もすることがないという状況の中で、認知症のきざしが見え始める。
巴はパートを辞めて家に閉じこもりたくなくて、忙しい毎日の中で気持ちに余裕がないのだ。

吉行和子・ 原田美枝子さんの演技は私など素人がどうこう言うのもはばかられるほど。
吉行さんは美しい人なのに、お年寄りの役がよくできるものだと感心した。
女性監督の目で老人問題を丁寧に描いている。
老い、それは誰にでもやってくる。

巴は悟っていく。
相手に変わって欲しければ、自分が変わること。

ヘルパーさんが正子にできる範囲内で、家事を手伝わせるのに成るほどと思った。
食事を用意し目の前に並べ、何もかもすることを取り上げてしまうのは本人にはよくないのだ。

デイケアセンターの中野先生の言葉。
物忘れがひどくなってから、ほめてあげたことはありますか?
これにはどっきり!
皆さんは家族の愛情を求めているのです。
私たちは家族にはなれません、それは羨ましいほど。

梅は木に母を書いて母の木。
梅は強く、折ってもなお、花を咲かせる。
正子の母親が活ける梅の花が美しい。

家族の苦労が報われるような素敵なできごとが起きる。

ここから結末に触れています。
****************************************************

正子が混乱して、迷惑になる私を殺して!と息子に迫る。
息子はどんなになっても生きていて欲しいと母と抱き合う。
巴の心が初めて真実を見る。

ホームに入居させようと決心した巴は一晩、正子の部屋で眠る。
正子の淋しい生い立ちや苦労話を聞いて、初めて巴の正子への距離が縮まった。
おかやん・・母親の夢を見て巴に寄り添う正子。
正子の子供のような寝顔が可愛い。

デイケアセンターで、正子は心を開く。
本当は巴に感謝していること、実の娘さえ当てにできない今、巴だけが頼りだということを話す。
二人ともに涙を流し、ハンカチを互いの手元に投げあう姿が微笑ましく、こちらも貰い泣きしてしまう。

何年がたったろう、お世話になったからそろそろお暇すると言う正子に、落ち着いてしっかりと受け答えする巴がいた。
お名前は?お住まいは?
遠いところからおいでになって、今夜は泊まってくださいな。
お茶でも入れますから。

正子のお陰で夫も変わり、家族の絆は深まり、巴は成長したんだと思う。

二人でお茶を飲み、ウフフ、顔を見合わせて微笑む。
やはり、女は女どうし。

この清々しいラストに、私の心も少し優しく素直になれたような気がした。

あるがままでいいと受けとめてもらえなければ
          人はみな生きていけない