名古屋の 商標亭  −あいぎ特許事務所弁理士 ひろたのブログ−
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<平成22年(ワ)第4770号意匠権侵害差止等請求事件>(判決文はこちら

 昨日のおやつの時間、事務所の女子及び昔女子が休憩フロアに一同に会し、ささやかな忘年会が開催されました。
 メインはケーキです。おいしゅうございました。
 
  
 そんなわけで(え?)
、本日は、長柄鋏の意匠を巡る意匠権侵害訴訟を取り上げるとします。
 (商標の新着審決のご紹介の回をすっ飛ばしてすんません、余裕なかった、許して(汗))

 まずは本件登録意匠(下記左)と被告意匠(下記右)を。
 
 うーん、並べ方、うまい…
 ちなみに本件登録意匠(上記左)の類似意匠も登録されています。


■争点
 本件の争点は以下の3つでした。
(1)被告意匠が本件登録意匠と類似するか、
(2)本件意匠登録が意匠登録無効審判により無効とされるべきか、
(3)損害の額

■争点(1)について
 メインの争点は(1)被告意匠と本件登録意匠の類否です。
 
○被告さんは、本件登録意匠はジョイント部が要部であり、被告意匠はジョイント部を含めて相違点が複数あるので非類似だと主張しました(判決文13~15頁)。確かにジョイント部辺りは態様が異なっております。
 ・ジョイント部の態様について『固定連結部,固定柄及び可動柄を連結するジョイント部は,意匠全体の中心部に位置し,長柄鋏を使用する際にも,使用者の目の前に位置する部位であるから,看者の注意を特に惹く要部である。
 ・その他にも柄部の態様、固定刃の態様、刃部の連結部への取付態様につき、相違していると主張しています。

○それでは、裁判所の類否判断です。
・本件登録意匠の要部
 裁判所が示した類否判断の基準は以下のとおりでした(判決文22頁)。
  『登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。したがって,その判断に当たっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹き付ける部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。
 裁判所は、意匠に係る物品(長柄鋏)の性質、用途、使用態様等と、10つの公知意匠を参酌した上で、本件登録意匠の要部を以下のように認定しました(判決文22~25頁)。
 『前記アで検討したとおり,長柄鋏の需要者は,刃部の形状,長柄鋏の長さ,長柄鋏全体に占める固定連結部や柄部の長さの比率及び柄部の形状について注目すると考えられる(もっとも,長柄鋏の長さ自体は本件登録意匠の要素ではない。)。
 また,前記イで指摘した公知意匠によると,刃部,固定連結部及び柄部を有する長柄鋏自体は本件意匠登録出願前に既に公知であったといえるが,刃部の具体的形状については様々なものがあり,少なくとも,本件登録意匠における刃部は固定刃の刃部が大きく湾曲し,これに扇状刃を有する可動刃が連結されているという特徴的な形状を有しているところ,上記形状が本件意匠登録出願前に公知であったと認めることはできない。また,長柄鋏全体に占める固定連結部及び柄部の各長さの比率についても,本件登録意匠と同様のものは見当たらない。
 したがって,
本件登録意匠の刃部の形状及び長柄鋏全体に占める固定連結部及び柄部の各長さの比率については,需要者の注意を惹く部分であると認められる。なお,被告は,本件登録意匠と本件類似意匠とは固定連結部の長さが異なるから,各部の比率は本件登録意匠の要部とならない旨主張する。たしかに,類似意匠が登録されている場合において,登録意匠と類似意匠の共通点は要部を推認させる根拠となり得るが,類似意匠との共通点しか要部たり得ないというものではないというべきである。むしろ,本件の場合,本件類似意匠が登録されたことによって,本件登録意匠において,刃部の形状が最も重要な特徴点であるということができる。』(下線は私が付しました)
 すなわち、刃部の形状&長柄鋏全体に占める固定連結部及び柄部の各長さの比率が、本件登録意匠の要部であると。
 一方、柄部の形状やジョイント部の形状については、需要者の注意を惹く部分でないと判断しています(判決文25~26頁)。
 『柄部の形状については,もともと固定柄と可動柄からなる2本の柄と固定連結部をジョイント部で締結するという本件登録意匠と同様の構成態様が上記先行公知意匠2,同3及び同6において採用されている上,本件登録意匠における柄部の形状はシンプルであり,本件登録意匠において,柄部の形状が需要者の注意を惹くとは認め難い。』 
 『上記に対し,被告は,本件登録意匠において,ジョイント部の形状が要部である旨主張する。しかし,ジョイント部は固定連結部と固定柄及び可動柄を締結する部分にすぎず,この部分に特段の創作があるのであればともかく,長柄鋏を使用する際や購入する際において,刃部や,全体の長さと柄部の長さとのバランスに比べると,需要者がジョイント部に注目する度合いが高いとは考えにくい。
 したがって,ジョイント部の形状が需要者の注意を惹くとは認められない。
』 

・本件登録意匠と被告意匠の類否の検討
(判決文27~30頁)。
 裁判所は、本件登録意匠と被告意匠は類似すると判断しました。
 『上記アのとおり,本件登録意匠と被告意匠とは基本的構成態様が完全に共通する上,要部の1つといえる長柄鋏全体に占める固定連結部及び柄部の各長さの比率において共通している
 また,具体的構成態様のうち刃部の形状は,本件登録意匠における最も重要な特徴点であるといえるところ,上記イで認定したとおり,両意匠は,固定刃及び可動刃の形状において,ほぼ一致している
』(下線は私が付しました)
 なお、本件登録意匠と被告意匠では、可動刃連結部の下端の取り付け態様が異なっていますが、共通点から受ける印象を凌駕するものとはいえないと判断されています。『需要者は,刃部の形状自体については,長柄鋏における最も重要な機能を有する箇所であるため,注目するものの,そのなかでも,刃部の刃体の形状に関心が集まるのであり,その取付部に対する関心の度合いは高いとは考えられない。そして,両意匠とも,固定連結部の上端にある円筒状取付部の側面に垂直方向に取り付けている点で共通しており,被告意匠の方がタグ状の取付部があるため頑丈な印象を与える程度の違いにしか過ぎない。
 また、被告意匠の固定刃には角状の引掛部が形成されているのに対し、本件登録意匠にはそのような部分が形成されていませんが、共通点から受ける印象を凌駕するものとはいえないと判断されています。
 『引掛部は,固定刃に1つの機能を付加するために取り付けられたものであるが,上記引掛部の形状は,刃自体の有する機能とは別の機能を付加したに過ぎず,しかし,刃部全体の大きさに占める割合が小さいことからすると,上記引掛部が加わることによって,元の形状と一体化し,別の美感を生じさせるものではないというべきである。
 
 なお、裁判所はジョイント部を本件登録意匠の要部と認めていませんが、『仮に要部ではない部分に係る差異であっても,被告意匠において特徴的な形態を採用していることにより,全体としての美感を異ならしめるに至ったような場合には,全体として類似しない場合も考えられ得る。』として検討しました。結論としては、被告意匠全体の美感に大きな影響を与えるものとは認められないとしています(判決文28~30頁)。

■争点(3)について
 本侵害訴訟の原告は、原告Pさん(自然人と思われ)と原告会社さんでした。
 原告会社さんは原告Pさんから独占的通常実施権を黙示的に許諾されていたと推認され、その結果、損害賠償が認められました(判決文31頁)。
 
■コメント
 上記のとおり、裁判所は、オーソドックスな判断基準を用いて、意匠に係る物品(長柄鋏)の性質、用途、使用態様等と、10つの公知意匠を参酌し、割と詳細に検討した上で、本件登録意匠の要部を認定しました。

 本日は以上です!

 ちなみに我が事務所は明日まで営業しておりますが…
 皆さまは本日が仕事納めでいらっしゃいますでしょうか。ということは、このブログを見ていただけるのも今年最後ですね(寂)。

 皆さま、今年一年、お世話になりました。
 ブログに直接コメントを寄せていただいた方や、ツィッターで話しかけていただいた方々には大変感謝しております。
 来年もご愛顧の程宜しくお願いいたします <(_ _)>

  それではよいお年を~!
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※追記:「特許ニュース」(
H23.6.30発行)において、本件に関し、類似意匠・関連意匠の参酌について解説されています。
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※名古屋市さんのご好意により画像データを提供していただきました。
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
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コメント ( 2 ) | Trackback ( 1 )


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コメント
 
 
 
chinese Lawyer (mizurju)
2010-12-30 11:07:55
亭主さん
新年おめでとうございます。
今年はさまざまな美味しい料理をご馳走になって、感謝の至りです。
来年も美味しい料理を期待しております。
また、拒絶、異議、無効などおかず以外、意匠および商標侵害による民事訴訟など専門料理も注文できますか。とりあえずここで打診させていただきます。
よかれば、来年は亭主の領地を借りて中国料理も1つ2つ提供させていただきます。

MIZURJU
 
 
 
明けましておめでとうございます (ひろた)
2011-01-04 14:10:11
mizurjuさん

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は商標亭にお立ち寄りいただき誠にありがとうございました。

意匠および商標侵害による民事訴訟など専門料理についても、できる限りご要望にお応えしたいと思いますので、どうぞご注文ください。

また、中国料理は是非ご提供ください!とても楽しみにしています。

今年も宜しくお願いいたします。
 
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【知財(意匠権):意匠権侵害差止等請求事件/大阪地裁/平22・12・16/平22(ワ)4770】原告:P、ニシガキ工業(株)/被告:(株)小林鉄工所 (判例 update)
事案の概要(by Bot): 1前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。) (1)本件意匠権  原告Pは,次の意匠登録に係る意匠権を有している。 登録番号 第955981号 登録日 平成8年3月26日 出願日 平成6年5月12日 意匠に係る物品 長柄鋏 登録意匠 別紙...