名古屋の 商標亭  −あいぎ特許事務所弁理士 ひろたのブログ−
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<平成21年(ワ)第6755号不正競争行為差止等請求事件>(判決文はこちら

 昨年の暮れ、我が事務所はリニューアルオープンしたのですが、その頃来られたお客さんとの会話です。
  お客さん:「立派になりましたねー。エントランスのところ、○○先生の事務所と雰囲気似てるなー。」
 わたし:(…?似てるかな?)「そうですか、似てますかねぇ。ふーん」
 お客さん:「うん、似てます。内線電話の感じ、よく似てる。」
 わたし:(……って、内線電話だけかいー。と小さく突っ込み)

 エントランス全体の雰囲気が似とるわけでないのね…というオチだったですorz
 
 そんなエントランスですが、エントランスの写真ってよく特許事務所や法律事務所のHPに掲載されてたりしますよね。事務所の顔っぽい感じで。
 つことは、もしエントランスのデザインで事務所が認識されるようになったら、そのデザインてトレードドレスにならないですかね?

 そいでは、店舗なんかですと、商品を並べた陳列デザインなんかがお客さんの目に付きやすいわけですが、そのデザインで店舗が認識されるようになったら、トレードドレスにならないですかね?

■そう、今日取り上げる事件は、店舗の商品陳列デザインが、不競法2条1項1号又は2号の「営業表示」に該当するか否かがメイン争点となった事件でございます(←ここまでの繋げ方、我ながら強引(汗))
 
  原告さんは、ベビー・子供用品等の販売等を行っていらっしゃる西松屋さんで、被告さんは、イオンリテールさん。
 原告西松屋さんの商品陳列デザインはこんな感じ(NAVERまとめ検索「【ベビー用品&子供服】西松屋の店内画像集【激安でも可愛い♪】」
 
○メイン争点の「被告の行為が不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか(争点1)」だけ見ますと、
 「①原告商品陳列デザイン1ないし3はそれぞれ独立して周知又は著名な原告の営業表示に該当するか,②原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示に該当するか,③原告商品陳列デザイン1ないし3を組み合わせた商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示に該当するか」
 に項立てされとります。
 
 まずは、商品陳列デザインが営業表示に該当するか否かにつき、大阪地裁の判示を見てみます。ざっくり言えば、本来的には営業表示に当たらないけど、場合によっては営業表示性を取得するかも…?とのこと。
 『…そもそも商品陳列デザインとは,原告も自認するとおり「通常,いかに消費者にとって商品を選択しやすく,かつ手にとりやすい配置を実現するか,そして,如何に多くの種類・数量の商品を効率的に配置するか,などの機能的な観点から選択される」ものであって,営業主体の出所表示を目的とするものではないから,本来的には営業表示には当たらないものである。
 『しかし,商品陳列デザインは,売場という営業そのものが行われる場に置かれて来店した需要者である顧客によって必ず認識されるものであるから,本来的な営業表示ではないとしても,顧客によって当該営業主体との関連性において認識記憶され,やがて営業主体を想起させるようになる可能性があることは一概に否定できないはずである。したがって,商品陳列デザインであるという一事によって営業表示性を取得することがあり得ないと直ちにいうことはできないと考えられる。』(判決文17頁、下線は私が付しました)
 
 ただし、『商品陳列デザインだけで営業表示性を取得するような場合があるとするなら,それは商品陳列デザインそのものが,本来的な営業表示である看板やサインマークと同様,それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なものであることが少なくとも必要であると考えられる。』とハードル高くしています(下線は私が付しました)。
 その理由は以下のとおり。
 『商品購入のため来店する顧客は,売場において,まず目的とする商品を探すために商品群を中心として見ることによって,商品が商品陳列棚に陳列されている状態である商品陳列デザインも見ることになるが,売場に居る以上,それと同時に什器備品類の配置状況や売場に巡らされた通路の設置状況,外部からの採光の有無や照明の明暗及び照明設備の状況,売場そのものを形作る天井,壁面及び床面の材質や色合い,さらには売場の天井の高さや売場の幅や奥行きなど平面的な広がりなど,売場を構成する一般的な要素をすべて見るはずであるから,通常であれば,顧客は,これら見たもの全部を売場を構成する一体のものとして認識し,これによって売場全体の視覚的イメージを記憶するはずである。
 そうすると,商品陳列デザインに少し特徴があるとしても,これを見る顧客が,それを売場における一般的な構成要素である商品陳列棚に商品が陳列されている状態であると認識するのであれば,それは売場全体の視覚的イメージの一要素として認識記憶されるにとどまるのが通常と考えられるから,商品陳列デザインだけが,売場の他の視覚的要素から切り離されて営業表示性を取得するに至るということは考えにくいといわなければならない。
』(判決文17~18頁)

 さて、今回問題となった商品陳列デザイン1ないし3ですが、写真がないのでわからんのですが、上記サイトで見た西松屋さんの商品陳列デザインが参照になりますでしょうか。
 そんな感じの商品陳列デザイン1ないし3が『それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なもの』と言えたのでしょうか。

 裁判所は、競合他店舗の商品陳列デザインと比較した上で判断してますので、見てみましょう。
 『原告商品陳列デザインのうち,原告商品陳列デザイン3は,その全ての構成要素を組み合わせた商品陳列デザインが同種店舗で使用されており,同種店舗と比べて特別な特徴があるとはいえないし,原告商品陳列デザイン1,2についても,その構成要素の大部分(原告商品陳列デザイン1の構成要素aないしe,原告商品陳列デザイン2の構成要素aないしf)を組み合わせた商品陳列デザインが同種店舗で使用されており,商品取り棒を設置する(原告商品陳列デザイン1の構成要素f,同2の構成要素g)という要素を組み合わせた限度において,同種店舗の商品陳列デザインと比較した場合において特徴があるといえるにすぎないものである。
 『その上,原告商品陳列デザインは,後記検討するように機能的要素を組み合わせたものであって,視覚的にもすっきりとした印象を顧客に与えるものであることからすると,むしろそれは,広い通路が設けられて天井も高く視覚的な広がりがあること,その中で稼働する店員は少人数であること,マネキンによる展示やPOPなどの装飾的な要素もないこと,ストックの段ボール箱が陳列棚の上の目に付くところに置かれていることなど,店舗の運営管理コストを低減するため効率を追求した機能的な原告店舗の売場の他の特徴と調和して「味も素っ気もない無骨」(乙39)とも表現され得る原告店舗の売場のイメージを作り出す一要素になっているものというべきである。
 『したがって,原告商品陳列デザイン1ないし3が顧客に認識記憶されるとしても,それは,売場全体に及んでいる原告店舗の特徴に調和し,売場全体のイメージを構成する要素の一つとして認識記憶されるものにとどまると見るのが相当であり,顧客が,これらだけを売場の他の構成要素から切り離して看板ないしサインマークのような本来的な営業表示(原告における「西松屋」の文字看板や,デザインされた兎のマーク)と同様に捉えて認識記憶するとは認め難いから,原告商品陳列デザイン1ないし3が,いずれもそれだけで独立して営業表示性を取得するという原告の主張は採用できないといわなければならない。
 またしたがって,この原告商品陳列デザイン1ないし3を,いくら組み合わせてみたとしても,同様のことがいえるから,原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザイン及び原告商品陳列デザイン1ないし3を全て組み合わせた商品陳列デザインについても,営業表示性を取得することはないというべきである。
』(判決文32~34頁、下線は私が付しました)
 うう、否定されてしまいました。

 ちなみに、本件では、売場の写真を見せてアンケートを取っており、『原告店舗の売場については原告であると回答する率はかなり高率にのぼることはもとより,被告店舗の売場であっても,原告であるとするアンケート回答者が相当数にのぼることが認められるから,この結果は,原告が主張する商品陳列デザインが,それだけをもって営業主体を表示しているかのごとくである。』とのこと。
 しかしながら、
 『
このアンケート結果からは,原告店舗を訪れる顧客が売場の様子から原告を想起することができるようになっていたとしても,それは商品陳列デザインだけではなく売場内の他の構成要素も一体のものと認識して,そこから空間的広がりや色合い明るさなども含めて顧客が原告独自の売場全体のイメージを記憶している結果を示していると見る余地さえあるということができる。
 したがって,このアンケート結果に基づいて,原告商品陳列デザイン1ないし3だけが売場内の他の視覚的要素から切り離され,本来的営業表示である看板やサインマーク同様の営業表示性を取得していると判断することはできないといわなければならない。

 とされました(判決文34~37頁)。
 (そもそもこのアンケートの調査目的が、商品陳列デザインに限っての消費者の認知の程度を特に調査対象としたものでないので、これに基づき分析検討するのは無理がある、ともされています。)

 なお、裁判所は、『仮に,原告商品陳列デザインが,それ自体で売場の他の構成要素から切り離されて認識記憶される対象であると認められる余地があったとしても,原告商品陳列デザインは,以下に述べるような観点に照らし,不正競争防止法による保護が与えられるべきものではないというべきである。』とし、その理由を以下のように述べています。
 『上記(2)エ認定2 の事実によれば,原告において売上増大を目的としてされた商品陳列デザイン変更の到達点として確立した原告商品陳列デザインは,商品の陳列が容易となるとともに,顧客が一度手にとった商品を畳み直す必要がなくなり,見やすさから顧客自らが商品を探し出し,それだけでなく高いところの商品であっても顧客自らが取る作業をするので,そのための店員の対応は不要となり,結果として少人数の店員だけで店舗運営が可能となって,店舗運営管理コストを削減する効果を原告にもたらし,原告事業の著しい成長にも貢献しているものと認められるのであるから,原告商品陳列デザインは,原告独自の営業方法ないしノウハウの一端が具体化したものとして見るべきものである。
 そうすると,上記性質を有する原告商品陳列デザインを不正競争防止法によって保護するということは,その実質において,原告の営業方法ない
しアイデアそのものを原告に独占させる結果を生じさせることになりかねないのであって,そのような結果は,公正な競争を確保するという不正競争防止法の立法目的に照らして相当でないといわなければならない
』(判決文38頁、下線は私が付しました)
 ふむ、これを我が事務所のエントランスデザインに当てはめて考えたら、逆に不競法で保護される余地があるのでせうか?ww

 以上のようにして、原告さんの商品陳列デザインは営業表示に該当しないとされたのでした。


○なお、「被告の行為が不法行為を構成するか(争点4)」についても、裁判所は判断しておりますので、少し触れてみます。

 裁判所は、
 “原告商品陳列デザインが試行錯誤を重ねて投資をしてきた結果得られたもので、店舗運営管理コストの低減や事業の成長に貢献しているので、営業資産であると主張することは十分理解できる”、
 “被告商品陳列デザインが原告商品陳列デザインに類似することはアンケート結果からして否定できない事実で、現に被告自身、原告商品陳列デザインを参考にしたこと自体を否定していない”
 との旨を述べた上で、被告の行為が不法行為を構成するということはできない、と判示しています。
 その理由は以下のとおり。
 『原告商品陳列デザインは,店舗の運営管理コストを低減させるという営業方法ないしノウハウが化体したものと見るべきものであって,そもそも特定の事業者によって独占されるべきものではないのである
 『被告が原告商品陳列デザインと一部類似したような商品陳列を行っている事実は否定できないけれども,証拠(甲1の1ないし5,乙36)及び弁論の全趣旨によれば,被告がそのような商品陳列デザインを採用した目的は,主としてコスト削減という営業方法として採用したものであって,またその限度で原告商品陳列デザインを参考にしたものと認められる。さらに,そもそもその参考の程度は模倣という程度に至っているわけではない。』(判決文39~40頁、下線は私が付しました)

■コメント

 トレードドレスが商標法で保護され得る“新しいタイプの商標”から外されたことは記憶に新しいところ。
 とすると、トレードドレスを保護したいとなると、やはし不競法の出番となりますか。

 場所は変わって、U.S.だと、店舗系の商標事件として、
 『トレードドレスとは「ビジネス全体のイメージ」である。』とし、レストランの外観やイメージをトレードドレスとして保護可能としたTwo Pesos事件やら、
 同じように店舗デザインについてトレードドレスとして保護可能とし、『トレードドレスを構成する各要素は本来的な識別力がなくても、各要素の結合が識別性の問題でフォーカスされるのであり、全体として恣意的、奇抜的、暗示的であれば、識別性を有する』としたBest Cellars事件やらがあります。
 
 ちなみに本事件でも、商品陳列デザインの構成要素の組み合わせ云々が詳細に検討されていましたね…

 本日は以上です!
 明日は久々に商標の新着審決をご紹介する予定。見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
 ↓↓↓
 
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
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