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「名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター」立ち上げのご報告

2023-03-08 | 活動報告

これまで中京病院でお世話になってきました、櫻井先生、大橋先生が、名古屋大学病院に移られました。連名でのご寄稿をいただきましたのでご紹介します。

「名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター」立ち上げのご報告

令和5年3月4日
名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター
  心臓外科 病院教授  櫻井 一
  小児科  病院準教授 大橋直樹

 このたび2023年3月1日に、正式に「名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター」が発足いたしましたので、会員の皆様方にその背景と、今後の展望についてのご報告をさせていいただきます。
 立ち上げのきっかけは2016年に遡ります。名古屋大学としての中期目標の1つとして、「小児医療センター」を設立し小児医療に力を入れていくという基本方針が決定され、その一環としての小児循環器センターという位置づけです。以来立ち上げのための検討会議を重ねてまいりましたが、途中コロナ禍で3年ほどのブランクが生じてしまいました。その間にも、新たに名古屋大学で小児の心臓手術が始まることや、私どもが異動するとの情報は拡がり、会員の皆様のなかにも伝え聞かれた方も多いかと存じます。これまで私どもが在籍していた中京病院はどうなっていくのか、などというご不安の声を伺ったこともあります。この場をお借りし、会員の皆様にご不安、ご心配をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
 これまで私どもは、それぞれ中京病院の心臓外科および小児循環器科でともに20年以上、最終的にはそれぞれの診療科の責任者として、この地域の小児循環器医療に携わってまいりました。その間に多くの治療経験を重ね、新生児や重症例を最優先で受け入れ、重症度の割合が高い状況のなかでも、全国で有数の治療成績を収めてまいりました。
 一方で、昨今声高に少子化の影響が危惧されていますが、小児循環器医療も例外ではなく、とくに小児患者様の絶対数の減少(=次世代を担う医師の臨床経験値の減少)、小児循環器医療を目指す医師の絶対数の減少(とくに心臓外科)という状況になってきており、その中でいかに医療レベルを維持、発展させていくかが学会全体の課題になっています。このため当地域でも、次、次々世代を見据えた長期的な発展を考えざるをえず、より良い医療を目指すための異動となります。
 大学病院で先天性心疾患治療を行う利点としては、より多くのマンパワー、多様な専門チーム、胎児から成人期まで対応可能な各科の存在、高度な医療設備の存在などがあり、名古屋大学としては地域的な利便性、移植も可能な施設であることがあげられ、将来的に大きな発展性があると考えています。
 とはいえすぐには現在の中京病院並の医療を提供することはできず、これから少しずつ良いチームを作っていくのが私どもの役目であり、数年かけて中京病院と同等以上のレベルにしていきたいと考えています。このため新生児最重症例の患者様の治療は、新規の心臓カテーテル検査室の稼働開始とともに2年後くらいからの開始を目指しております。また成人先天性心疾患の患者様につきましては、現在でも最重症例の手術治療等を名古屋大学病院でも行ってきておりますので、そこはこれまでどおり行ってまいります。幸い名古屋大学病院と中京病院は地理的に近いため、医療連携がとりやすく、今年から本格的な医療従事者の人事交流が始まります。名古屋大学小児循環器センターの準備期間中も患者様にご迷惑をおかけすることのないよう、私どもや他のスタッフも名古屋大学病院と中京病院を頻繁に行き来しながら、一体になりワンチームとして運営し、最善の医療を継続してまいります。患者様におかれましては、とりあえず最初にどちらの施設を受診されましても両病院の体制に応じて、最善の治療を受けていただけるよう両病院で緊密に連絡を取りながら対応してまいります。
 これまで先天性心疾患治療を受けられ今後も長く経過観察が必要な患者様のため、今後生まれてこられるであろう未来の患者様のため、是非今後とも皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。