世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●日米中韓の人々のアジア情勢等に関する考え方の違い 前篇

2015年10月21日 | 日記
日本人が70年間一度も考えなかったこと (大澤真幸THINKING「O」)
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●日米中韓の人々のアジア情勢等に関する考え方の違い 前篇

以下の共同通信の記事を読み、チョイと興味があったので、じっくり読んでみた。あくまで、参考と云う範囲で読むべきものだが、特にひどく偏ったレポートではないだろう。筆者の感覚で評価するなら「言論NPO」は、親アメリカ西側勢力圏にあり、且つ、経済界との繋がりが強いNPOである点は、公平であるが留意しておく必要があるだろう。

≪ 米、尖閣軍事介入に6割反対
日本の民間非営利団体「言論NPO」と米中韓のシンクタンクが20日、北東アジア地域の安全保障などをめぐり4カ国で行った世論調査の結果を発表した。日本と中国で沖縄県・尖閣諸島をめぐる軍事衝突が起きた場合、日本で55・7%が米軍派遣に「賛成」と答えたのに対し、米国では64%が派遣を正当だとすることに「反対」と回答し、意見が分かれた。
 10年後のアジアでの中国の影響力が「増大する」との回答は中韓が8割以上、日本は6割、米国は5割に上り、地域の将来は中国を軸に変化するとの認識で一致。10年後の米国の影響力は「変わらない」との回答は4カ国とも半数程度。 ≫(ロイター・共同)

「言論NPO」について(Wikipedia抜粋)
法人として不偏不党を基本としており、特定の政党や宗教団体に偏向しないよう言論活動の自己評価を行い、その結果を公表している。加えて、大学評価・学位授与機構教授の田中弥生ら監事が外部評価を行っている。
運営
非営利団体であるため、その収入のほとんどを寄附金で賄っている。2011年度の収支計算書によれば、会員拠出金収入が23%、フォーラム収入が1.8%、寄付金収入が67.5%であり、収入の7割近くを寄付金が占めている。主な寄付法人としては、アサヒグループホールディングス株式会社、株式会社NTTデータ、オリックス株式会社、キッコーマン株式会社、株式会社損害保険ジャパン、日本空港ビルデング株式会社、松井証券株式会社などがある。以上


言論NPOの考え方を知る意味で、以下の朝日のインタビュー記事も参考になる。正直な感想で言うなら、右翼からも左翼からも、嫌がられるシンクタンクと云うことか(笑)。親米で経済界びいきは酷く気になるが、このスケールで調査した結果には、一定の敬意を払っても、罰は当たらないだろう。


 ≪ 言論NPO・工藤泰志代表に聞く 戦後70年シンポ シンポジウム
「戦後70年―日独がめざす平和と民主主義の新しい展望」(朝日新聞社後援)が今月4日、都内であった。主催団体の一つ、言論NPOの工藤泰志代表に、この企画の意義や討論を通じて浮かび上がった課題などを聞いた。
     ◇
 日本とドイツでは環境が違うので、戦後史を単純に比較できないという指摘は承知している。しかし、シンポジウムを通して強烈に理解したのは、ドイツ国民は戦後、一人ひとりが真剣に過去に向かい合ったということ。ナチスが犯した罪を国民の罪ととらえ、向かい合う中で民主主義を確立させた。そして、ドイツ国民の誇りを取り戻すまでに約60年もの時間がかかったことを知らされた。
 翻って、日本の社会でそこまで過去に向かい合っただろうか。近隣国との和解という以前に、日本として戦争にどう向かい合い、どういう民主主義国家をつくろうとしたのか。そこが、北東アジアの平和構築をめぐり、いまだに近隣国の信頼を得ていない大きな原因になっていると感じた。
 そうした取り組みは、政府だけがやることではない。政府間では「勢力均衡」が大きなテーマだが、日米同盟の強化による勢力均衡だけで平和的秩序ができるわけではない。独仏の和解の背景には数多くの民間の交流があり、未来に向かう基盤を作った。
 言論NPOは民間レベルで韓国、中国と対話をやっており、中国との対話は10年続いている。最初は歴史問題をお互いに批判することがあったが、本気で言い合うことによって課題を共有し、課題を解決する対話に変わっていった。
 安倍首相の戦後70年談話は、一つの転機になると思う。過去の事実から目を背けてはならない。ただ、言葉で発せられたものを具体化する行動が重要だ。民間でできることはかなりある。民間の交流や対話がまた、政府間の動きの環境を作り上げる。戦後70年の今年、一人ひとりがこの一歩を踏み出すべきだ。 ≫(朝日新聞デジタル)

   ーーーーーーーーーーーーーーここからレポートーーーーーーーーーーーーーーーー

 ≪日米中韓4カ国共同世論調査
日中韓米の共同世論調査で浮かび上がった北東アジアの将来に対する民意と平和への課題              言論NPO代表理事  工藤泰志

 北東アジアの変化は中国の台頭を軸に進み、その中で米国はアジア回帰を進めようとしている。この地域で始まっている変化をどのように考えていけばい いのか、不安定なこの北東アジアに平和的な秩序を今後、どのように形成していけばいいのか。それが、今回私たちが行った、日本、中国、韓国、米国の4か国共同世論調査の背景にある問題意識である。
 北東アジアの変化の行方や平和の現状に関して、4か国の国民がどう考えているか、それを明らかにしたいと考えたのは、こうした民意にこそ今、私たちがこれから考えなくてはならない、北東アジアの未来や平和に向けての課題や解決に向けた手掛かりが存在する、と思うからだ。

 ■言論外交と北東アジアの平和に向けた課題解決
 日本と中国は尖閣諸島を巡る対立で政府間の交渉が途絶え、首脳間の対話再開には2年半を有することとなり、日韓の首脳会談も来月初めの開催に向け て、ようやく準備が整い始めたばかりである。言論NPOは、そうした環境下で中国や韓国との対話を進め、尖閣周辺での緊張が高まる中で、一昨年、中国との間で民間レベルだが、「不戦の誓い」を合意し、それを世界に公表し、北東アジアの平和秩序の形成に向けて、作業を開始している。
 ここで、私たちが提唱したのは、課題解決の意思を持つ世論を喚起し、多くの市民の支持を得て、国境を越える課題解決に取り組む新しい民間外交のあ り方、「言論外交」である。私たちが外交において、世論の役割を重要視するのは、こうした民意の存在やその水準が、政府間の外交に大きな影響をもたらしているためである。特に北東アジアでは国民間のナショナリズムの存在が、政府間レベルの課題解決の障害になり、この地域に政府対話の空白を生み出してきた。
 民意に基づき、多くの市民の支持を得て課題の解決に取り組むことは、民主政治の市民参加のアプローチで有り、この地域の平和構築に向けた政府間の 外交の環境づくり、基礎工事だと、私は考えている。そうした強い問題意識から、言論NPOは米国のシカゴグローバル評議会や、長い間、言論NPOの隣国と の対話のパートナーでもあった韓国のEAI、さらに中国の零点研究コンサルティンググループに呼びかけ、今回の共同の世論調査に向けた作業が始まることとなった。
 今回、この事業に参加した4つのシンクタンクは自国や世界で広範な世論調査を実施し、民意の把握を軸に政策提案を行う、世界でも有数のシンクタン クである。私たちは、この3つの有力なシンクタンクと共同で、この北東アジア地域内の現状や将来に対する、客観的で公正な世論の調査を行い、さらにこうした冷静な調査結果を元に、この地域の将来に向けた多国間の対話を行う、ことにも合意したのである。

 ■共同の世論調査では何が明らかになったのか
 この4団体で合意したのは、北東アジアの将来や安全保障に関する9つの設問による世論調査実施であり、この4団体が毎年それぞれの国で実施する世 論調査に、この9設問を入れ込む形で今年10月までに4か国のシンクタンクがそれぞれ調査を実施し、この4ヶ国で7000人を越える人がこの回答に協力している。
 今回公表するのはその9設問の調査結果であるが、言論NPOが中国との間で別途共同の世論調査を9月に実施したこともあり、さらに米国の設問に合 わせる形で新たに4問を日中の国民に聞いている。このため、4か国の調査とは別に、この北東アジアの将来の課題を広範に問うために、この日米中の3か国の4問の結果も合わせてここで紹介する。
 今回の調査では、4か国の国民に、アジア各国の今後10年間の影響力や課題解決力の評価を行ったほか、地域紛争の可能性、2国間関係の重要性、お互いの国に対する信頼の度合い、さらに朝鮮半島の未来などを聞いている。

■調査で明らかになった4か国の民意は、おおよそ以下にまとめることができる。
 まず、今後一〇年間にわたり中国はその影響力を増大させる、と4か国の国民は見ているが、米国のアジアへのリバランスはまだ国民レベルでは十分な理解を得ておらず、米国のこの10年間の影響力は現状維持程度だと見る人がこの4カ国に多い、ことである。
 しかし、こうした中国の影響力と各国の課題解決力、リーダーシップに対する評価は連動しておらず、日本と米国と、中国、そして韓国の国民にかなり 大きな意識の差が見られた。この中で浮かび上がったのは、韓国国民の中国傾斜と、中国の国民にロシアや韓国に対する評価が相対的に高まっていることである。この傾向はこの地域の2国間関係の重要性や、信頼に対する国民の評価でも同様であり、米国から見れば同盟国間の協力連携に懸念を抱きかねない状況になっている。
 この地域の紛争の可能性に関しては、米中の国民が、中国の軍事増強や米国のこの地域での行動に懸念を強めていることが目立つ反面、尖閣諸島、台湾などの紛争の可能性に関して、関係国同士の間で、認識の差が出ている。
 米軍の存在に関しては日米韓の国民に、現状維持を求める声が多いが、紛争への米軍の介入に関しては、米国民の中にかなり消極的な見方が強く、特に 朝鮮半島の平和統一後の米軍駐留に関して、それを必要とするかで米中、日韓の国民間に意識の差がある、ことも浮き彫りになっている。
 この北東アジアでは、中国の発展に伴うアジアの変化について、国民間の認識差が広がっており、政府レベルの同盟国間の協力の問題や紛争の危険性に関して、国民が懸念を強めている、ことも明らかになっている。
 この北東アジアでは、中国の発展に伴うアジアの変化について、国民間の認識差が広がっており、政府レベルの同盟国間の協力の問題や紛争の危険性に関して、国民が懸念を強めている、ことも明らかになっている。
 では、これらを個別に見ていくことにする。  

 ■アジアの変化はこの10年間、中国の影響力増加を軸に展開する
 北東アジアの変化が、中国の影響力の増加を軸に進むことは、当の中国だけではなく、日本、米国、韓国の国民も認めている。特に韓国の国民の中に、中国の影響力の拡大を意識する傾向が高い。
 アジアにおける中国の影響力がこの10年でさらに増加すると見る国民は、当の中国で82.5%、さらに韓国も80%と8割を越え、日本は60.3%、米国でも52%と半数を越えている。
 これに対してアジアへの回帰を進める米国の影響力がアジアで増加する、と見ているのは、米国民でも31%に過ぎず、52%は現状と変わらない、と 答えている。日本、韓国、中国の国民も、米国の影響力が、アジアで今後「増加する」と見ているのは3割に満たず、逆に「現状と変わらない」が半数程度で、 最も多い回答となっている。
 
 

 私たちは、この米国のアジア・リバランスの評価を、日米中の3ヶ国の国民に別の質問で聞いているが、米国でもそれを支持する人と支持しない人はそれぞれ 49%と42%と分かれており、日本でも「分からない」が41.9%と、最も多い回答となっており、充分理解されたものとはなっていない。
 このような状況の中で中国国民は、自国の影響力の拡大に八割以上の人が自信を強めており、中国人の4割を超える人が米国、韓国の影響力は今後10年も現状と変わらない、と見ている。ただ、日本に対しては評価が厳しく、42.7%が「影響力が減少する」と見ており、この回答が最も多い。




 世界の中で責任有る行動が取れる国への評価では、日米と、中韓に温度差が大きい
 ただ、国の影響力の予測と、こうした国が世界の課題に関して責任ある行動を取るのか、への期待は連動しておらず、見方も分かれている。
 今回の調査では、日本、米国、中国、韓国、ロシア、EU,インドの中で、どの国が世界の課題に責任ある行動をとる、と期待できるかを、四ヶ国の国民に聞いているが、日本と米国の国民は米国、EUと日本にそれぞれ半数を越える、強い期待(日本人は自国に78.85、米国に77.3%、EUに 55.3%、米国人は自国に81%、EUに65%、日本に58%)を持っているのに対し、中国と韓国にはそれほど、強い期待を持っていない(米国人は中国に34%、韓国に36%、日本人は中国に14.9%、韓国に25.4%)。


 
 これに対して、中国人は、世界の課題に対して責任ある行動をとる国として、自国の90.1%を除けば、ロシアに七割を越える人が期待を持っているのに対して、米国に対する期待は45.1%に過ぎず、半数に届いていない。韓国人は米国(87.4%)、EU(71.7%)と並ぶように中国(70.6%) にも高い期待がある。
 中国人と韓国人で、日本に責任ある行動を取る国としての期待している人は、韓国人が48.1%、中国人はわずか14%しかない。

 


 さらに私たちは、日本と中国、米国の3国民に、日本、米国、中国、韓国、ロシア、EU、インドの中で、国際的にリーダーシップをとることが望ましい、と思う国を聞いている。
 この回答も先の質問と同様に、日米と、中国の国民間に大きな認識差がある。日本では、自国のほかは米国とEUがリーダシップを取ることが、望ましいと考える人が多く、米国を選んだのは79.7%、日本は69.9%、EUは53.4%、である。 中国、韓国、ロシアを期待する人はそれぞれ1割程度だった。
  米国人が、リーダーシップを取ることが望ましいと期待する国は、自国の92%を別にすれば、EUの80%、日本の73%が最も多い。中国を期待する米国人は51%、韓国は62%、ロシアは43%である。
 これに対して、中国人が期待する国は、自国の中国の85.7%を除けば、ロシアの72.8%が最も多く、米国の64.1%が続いている。韓国を期待する人は53.4%、日本は42.4%だった。



  

 

■米中の国民が、中国の軍事増強や米国のこの地域での行動に懸念を強めている

 次に私たちは、この地域の紛争の原因を4ヶ国の国民がどう認識しているのか、を聞いている。
 全ての設問で共通して言えるのは、日本人の地域紛争に関する認識が相対的に希薄だということである。しかし、それを差し引いても、この4か国の国民間には紛争の原因の可能性をめぐり、注目できるいくつかの傾向が存在する。
 第一は、「中国の軍事的な増強」や、「米国のアジア太平洋における展開」が、今後のアジアの紛争の原因となる可能性がある、という認識が米国と中国の国民に強いことである。
 例えば、「中国の軍事力の増強」が、紛争の可能性の原因だとなる可能性がある、あるいは可能性が高い、と考える米国人は79%と8割近くとなって おり、中国人も58.9%と6割近くはその可能性を認めている。逆に、「米国のアジア太平洋における軍事展開」が紛争の原因になる可能性を中国人は 65.2%、米国人も63%、と6割以上が認識している。


 
 ただ、現実に北東アジアで存在する、二国間の対立に関しては、関係当事国間の国民の意識に非対称性が存在する。例えば、「中国と台湾の関係」に関しては米国の66%が紛争の可能性をある、または紛争の可能性が高い、と考えているが、中国人でその可能性を意識しているのは45.6%に留まった。また、「日本と中国間の紛争」も、中国人の71.4%が、その可能性がある、あるいは、高いと考えているが、日本人でその可能性を指摘しているのは38.9%に過ぎず、39.5%は逆にその可能性はない、と意見が分かれている。「日本と韓国間の紛争」も、韓国人の54%が紛争の可能性を意識しているが、日本人でその可能性を意識しているのは、22.6%に過ぎない。



 
 第三は、4か国の過半数の国民が共通して、紛争の可能性があると認識している課題も北東アジアに存在している、ことである。「エネルギー資源の競争」 (日本人59.1%、米国人75%、韓国人85.3%、中国人82.5%)、「アジアでの新たな核保有国の出現」(日本人50.1%、米国71%、韓国 71.8%、中国65.3%)、「朝鮮半島の状況」(日本人59%、米国78%、韓国65.5%、中国63.3%)である。新たな核保有国の出現と、朝鮮半島の状況を危惧する傾向は特に米国民と韓国民に強い。



 


≫前篇(言論NPOサイトより)

*筆者注:後篇では、アジア地域における米軍の存在意義等々のレポートをお伝えする。


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1 コメント

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中国の形 (金 国鎮)
2015-10-22 10:14:00
私は中国を戦前の明治・大正・昭和のの日本と
比較してもいいのではないかと思う。

一つは西洋・日本から技術を導入して国力を
拡大していく速度は驚くべき勢いだ。
戦前の日本を彷彿させる。
経済力についても同様だ。
その代表的な例が中国の高速鉄道にかける
執念だ。

戦前の日本はアジアの軍事・経済大国だ、なんと今の中国とよく似ている。
戦前の日本は西洋列強の指導のもとに作られた国だ。
日本のネット右翼が賛辞してやまない帝国海軍も同様だ。
中国も今や空母を作る時代に来ている。

中国が戦前の日本と異なる道を取れるかどうかの今分岐点に差しかかっている。
中国の空母など未だアメリカの海軍力の敵ではない。

問題は国内の多くの民族にどう対応するかそしてロシアとの関係ではないかと思う。
戦前の日本はこれについて全く対応できなかったといっても過言ではない。

中国共産党と日本の天皇の比較も面白い。

誰が何を言おうとも中国人は戦前も戦後も
一生懸命働いていた。
西洋列強が中国を侵略してた時期も日本が
満洲国を作り上げて中国人を見下していた
時期もね。
共産党と国民党の争いなど本当は小さな話
なのかもしれない。
ただ我々がそれを知らないだけだろう。
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